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メタンや二酸化炭素などのガスを作る細菌であるガス産生菌の感染によって、筋肉に壊死(えし)を起こす病気です。 皮膚、皮下組織、筋肉などに感染を起こす病気をまとめて、「軟部組織感染症(なんぶそしきかんせんしょう)」といいますが、その中でもガス壊疽(がすえそ)は、筋肉を中心にガスと作りながら、感染が広がることが特徴です。
特徴
クロストリジウム属の菌に感染が原因で起こるガス壊疽を、クロストリジウム性ガス壊疽と呼びます。 戦争、各種災害などによって、外傷後に土壌の中にいる細菌に感染することで、クロストリジウム性ガス壊疽が多くみられます。 近年では、2008年に起こった中国の四川地震で、クロストリジウム性ガス壊疽が問題になりました。怪我をしながら救助活動を行っている人がいるため、小さな傷口から汚染した土壌に接触し、感染したものと考えられます。
連鎖球菌(れんさきゅうきん)、大腸菌など、ほかの細菌に感染することが原因で起こるガス壊疽を、非クロストリジウム性ガス壊疽と呼びます。 糖尿病、肝硬変(かんこうへん)など、免疫力低下によって感染しやすい易感染宿主(いかんせんしゅくしゅ)の外傷を契機に感染する、非クロストリジウム性ガス壊疽が増加しています。
外傷創、熱傷創、熱傷創、褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)、糖尿病性壊疽などの傷口から、ガス産生菌が組織へ侵入します。壊死に到った組織内で菌が増殖し、毒素を作って全身に影響を及ぼします。
外傷後、傷口から菌が侵入すると、早い場合は数時間で傷の痛みが強くなり、痛みの範囲が広がります。 最初は赤くはれ、次に壊死によって傷は褐色から黒色に変化します。傷の周囲では、患部を触ると雪を握り締めるような感触の握雪感(あくせつかん)などの症状があらわれます。患部からはガスが発生して、腐敗臭や、ドブ臭が発生します。 進行すると、多量の毒素や壊死物質が血中に流入することで、貧血、血尿、黄疸(おうだん)などの症状があらわれ、敗血症、多臓器不全症になります。こうなると、救命はきわめて難しくなります。
傷周囲のはれ、壊死などの症状がみられた場合、ガス壊疽の可能性があります。患部のX線撮影や、膿の細菌検査を行います。 X線撮影で筋層内に多数のガス像を確認することで、診断できます。 また、細菌検査によって、原因菌を特定し、治療方針を決定します。しかし、細菌を検出できないこともあります。
病変部はガスのために腫れあがっているので血液の循環が悪くなっています。血液の循環を良くするために、傷を切開して、膿を排出させます。腫れを回避するための減張切開(げんちょうせっかい)といいます。傷口は開放状態で処置をします。 また、同時に壊死組織の切除をするデブリードマンと呼ばれる外科処置も、必要に応じて行われます。 薬浴とともに、原因となる菌の種類に合わせた抗菌薬を患部に塗ります。ペニシリンなどの抗菌薬の点滴も行います。
クロストリジウム性ガス壊疽では、高圧酸素療法が効果があります。 患部の切除を免れることもありますが、手足の末端の炎症が、膝や肘以上に進行し、重い全身症状をともなう場合では、救命のために患肢の切断が必要となってしまいます。
糖尿病、肝硬変(かんこうへん)などの基礎疾患がある場合は、基礎疾患の治療も同時に行います。
病院の救急部門のある外科、もしくは整形外科が専門となります。 症状が急速に進行する場合、全身症状が認められた場合には、すぐに受診をするか、救急車を呼びましょう。