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床ずれ・褥瘡


床ずれ・褥瘡の概要は?

おもな症状

 

臀部、腰部などにみられる皮膚の発赤、びらん、潰瘍

似ている病気

 

臀部のおむつ皮膚炎
糖尿病による潰瘍

起こりやすい合併症

 

褥瘡感染による蜂窩織炎(ほうかしきえん)
骨髄炎
敗血症
低蛋白血症
貧血


床ずれ・褥瘡ってどんな病気?

圧迫による血流低下による壊死

 

イメージ画像 持続的な圧迫によって、組織の血流が減少したり、消失し、虚血状態や低酸素状態になってしまいます。その結果、組織の壊死が起こった状態を床ずれといいます。
 医学の分野では、床ずれのことを「褥瘡」(じょくそう)と呼びます。

圧迫を受ける部位

 

 自力で体を動かせない寝たきり状態の患者さんや高齢者などに多く発生します。
 骨が突出している部位、臀部中央、大腿外側、腰骨側面、足の踵(かかと)、肩など、圧迫を受ける部位にできます。
 栄養不良状態があると傷(創)が治癒しにくく、慢性化しやすくなります。
 助長・悪化因子として、寝たきり、栄養状態や全身状態の低下、関節を動かさないでいる関節拘縮、失禁などが挙げられます。


床ずれ・褥瘡の原因は?

多くは血流障害

 

イメージ画像 もっとも重要な原因は長時間の圧迫による局所の血流障害です。寝たきりの人や、麻痺のある人は、身体の向きや姿勢を変えることが簡単にできないため、寝具や車椅子などに接触している皮膚には、体重による圧迫が持続して加わり、血流障害が起こります。また、ベッドや車椅子上で長時間座っていると、徐々に体がずり落ちて皮膚がよれ、床ずれの原因になります。
 骨の突出した部位などでは、皮下脂肪や筋肉が少ないために血流が悪く、圧迫力が加わるとすぐに血流障害を起こします。特に、後頭部、肩甲骨部、仙骨部、坐骨部、大転子部、踵などには圧力が集中します。
 そのほかの局所的な因子としては、尿失禁、便失禁などによる湿った状態、組織のずれ、摩擦、尿・便の成分による化学的刺激などがあります。
 全身的な誘因としては、寝たきりの状態、意識障害、貧血、低タンパク血症などがあります。血中のアルブミンの量の低下が、床ずれの発症・増悪に関与しています。


床ずれ・褥瘡の症状は?

患部の黒ずみ

 

イメージ画像 初めは圧迫を受けた部分が赤くなり、水疱(すいほう)や紫斑(しはん)が現れます。
 浅い床ずれでは、浅いびらんが見られる程度にとどまります。ところが深い床ずれになると、急性期を過ぎた頃に床ずれが次第に黒ずんで、壊死組織が明らかになっていきます。

黒色期〜白色期

 

 床ずれの症状は、おもに4段階に分類することができます。
 黒ずんだ壊死が見られる黒色期。
 黒ずんだ組織が取り除かれると、壊死した皮下脂肪や筋肉が汚い黄色になる黄色期。
 治療機転が働いて肉芽組織(にくげそしき)が再生し、滲出液も無色透明になり、患部が赤くなる赤色期。
 患部の周囲から上皮が形成され、皮膚が覆われてくる白色期。

感染に注意

 

 慢性の床ずれでは、傷が洞穴状に皮下に拡大するポケットを形成する場合もあります。
 感染があると、悪臭をともなうことがあります。38℃〜39℃の発熱をともない、壊死組織を切開すると、黄褐色の膿汁が出ます。体力が衰えていると、床ずれの感染が全身的な感染を引き起こすこともあるため、注意が必要です。


床ずれ・褥瘡の診断は?

初期症状では

 

イメージ画像 皮膚に加わる圧迫を取り除いても、その部分の発赤が続くようなら床ずれの初期段階です。この時点で対策をとらないと、水ぶくれやただれを生じることになります。

細菌培養

 

 局所管理として、病変部に湿潤や悪臭などがあり、細菌感染が合併した疑いがある場合は、どのような細菌に感染しているか検査する細菌培養検査を行います。
 原因不明の発熱がある場合、病変部の特に黒色壊死の皮下も膿が貯まっていないかを確認する必要があります。
 骨に達する深い床ずれでは、骨髄炎の有無を調べるために画像検査を行うこともあります。

全身の検査

 

 全身の管理では、血清アルブミン値、貧血の有無、血糖値、血清鉄などを検査し、栄養や全身状態改善の指標にします。

床ずれ・褥瘡の治療法は?

全身管理

 

イメージ画像 床ずれの治療には、全身管理、局所のケア、感染対策、適切な局所外用薬の選択などがあります。外用薬の選択は、床ずれの深さ、感染の有無、病期などによってそれぞれ適切な治療薬が異なるため、専門医に診てもらうようにしましょう。
 全身管理では、十分な栄養補給がもっとも大切です。高タンパク、高カロリーの食事を原則として、調理も刻むなどして食べやすく工夫する必要があります。
 車椅子に乗せる、ベッドアップをするなど、寝たきりにさせない工夫も大切です。

治療薬

 

 処置は1日1回〜2回行います。発赤のみの軽症の場合、亜鉛華軟膏の塗布とガーゼ保護だけでも良いでしょう。発赤部分のマッサージは、患部を傷めるおそれがあるのでお勧めできません。
 びらん、潰瘍がある場合は、消毒もしくは生理食塩水や減菌精製水による洗浄をした後、市販の抗生剤含有軟膏、病院で処方される潰瘍治療薬などを塗ってガーゼで保護します。
 深い床ずれでは、二次的な細菌感染がほぼ必発で、壊死組織の除去や洗浄を行い、時期に応じた外用薬の処置を行います。発熱時の抗生剤の全身投与など、専門医による治療が必要です。場合によっては、大量の体液が滲み出て、生命の危険を招くこともあります。
 ポケットを形成する床ずれでは、切開して露出させる必要があります。

外科的治療

 

 高齢者の床ずれは、一般的に薬剤やドレッシング材(創傷被覆材)を用いて保存的に治療することがほとんどです。しかし場合によっては、皮弁形成術や、筋皮弁形成術を行い、外科的に治療することもあります。


床ずれ・褥瘡かなと思ったら?

必ず医師の診察を

 

イメージ画像 すぐに医師に相談するようにしましょう。重症や難治性の場合、医師による定期的な経過観察が必要になります。脳血管障害などが基礎にあり、寝たきりの人や意識障害をともなう人は、床ずれを起こしやすくなっています。
 病巣部に圧迫をかけないように体位交換をたびたび行うなどの注意だけでなく、栄養をつけることも重要です。


床ずれ・褥瘡の予防法は?

体位の変換

 

イメージ画像 いったん床ずれができると、治るまでに長い時間がかかってしまいます。床ずれを作らないことが、もっとも大切です。そのため、発生原因をできるだけ取り除くことです。
 可能な範囲で体位の変換を行います。2時間〜3時間ごとに体の向きを変え、圧迫が体の一部に集中しないようにします。ウレタンやエアマットレスなど、体圧分散寝具を活用しましょう。これらの介護用品は自治体によっては、貸与や供与が受けられることがあります。
 車椅子は体に合ったものを使うようにし、正しい姿勢と体圧の分散に心がけます。
 失禁パッドの使用や、床ずれ周囲へのワセリンなどを塗布するなど、局所を清潔にし、湿潤の防止につとめましょう。失禁がありおむつを使用している場合、吸水性の良い物をこまねに交換し、皮膚が濡れたままにならないようにします。
 栄養バランス、食事摂取をチェックすることも大切です。
 発熱がなければ、入浴やシャワーは可能です。局所の防水フィルムカバーは必須ではありません。

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