そらいろネット > 家庭の医学 > 外傷・怪我 > 減圧症・潜水病・潜函病
減圧症は、その原因によって急性減圧症候群、潜水病、潜函病などと呼ばれますが、どれも同じ病気を指します。 潜函病はあまり聞きなれない言葉ですが、潜函工法と呼ばれる水底や地下水面下に建設物を構築する場合の工法のひとつです。円筒状、または箱状のケーソン、あるいは地下室全体を地上で築造し、下部を掘り下げて沈設する工法です。この作業中によって発症する人が多発したため、潜函病・潜水病・ケーソン病と呼ばれるようになりました。
減圧症は、潜函作業、スキューバダイビングなどの高気圧環境下にいた人が、地上・水面に上がることによって、急激な圧低下にさらされた時に発症します。 以前はトンネル内作業員、潜水夫、海女などにのいわゆる職業病でしたが、近年はレジャーとして普及しているスキューバダイビングによって、一般の患者さんが増加しています。
急激な減圧によって生体内に生じた窒素気泡により、血管に詰まったり、周囲の組織を圧迫したりして、さまざまな症状が現れます。 T型は、皮膚症状、筋肉痛、関節痛などの症状がみられます。U型は、意識障害、下半身の知覚障害や麻痺、呼吸循環器症状がみられます。
ガスの溶解量はガス分圧に比例するため、高気圧環境下では血液や脂肪などの組織に多量の窒素が溶解します。
浮上すると環境圧が低下するため、組織中の窒素溶解量は過飽和となり、溶解窒素が血液から肺胞(はいほう)へ呼気(こき)として放出されます。 しかし、急浮上すると呼気への放出が間に合わず、組織や血液中で気泡化してしまいます。ガスの気泡が脊髄、脳、骨、関節、肺などの細い血管に詰まり、さまざまな症状が現れます。
T型の減圧症では、皮膚のかゆみ(掻痒感・そうようかん)、むくみ(浮腫・ふしゅ)、紅斑(こうはん)、関節痛、筋肉痛、しびれ感、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)が現れます。
U型の減圧症では、いくつかのタイプに分類されます。 頭痛、痙攣(けいれん)、片麻痺(かたまひ)、意識障害、視力障害、視野障害などを起こす中枢神経型。 四肢麻痺(ししまひ)を起こす脊髄型(せきずいがた)。 めまい、耳鳴り、聴力障害を起こす内耳型。呼吸困難、チアノーゼ、胸痛、重症例ではショックから心停止に至る呼吸循環型などに分類されます。
可能な限りすみやかに、酸素再圧療法・高気圧治療を行う必要があります。 気泡による血管内凝固、血液濃縮、神経系の浮腫など二次的な障害を取り除き、呼吸循環管理を中心とした対症療法を行います。
高気圧治療とは、大気圧より高い環境によって行う治療法で、高気圧酸素治療装置を用います。大きく分けると、高気圧酸素療法と酸素再生療法があります。 酸素再生療法は、気泡の再溶解、窒素の洗い出し、および組織低酸素症の改善が目的です。
高気圧酸素療法は、高い環境気圧下で酸素加を行う治療法で、血液中に溶解する酸素を増加させます。 溶解型酸素増量による酸素加、不活性ガスの洗い出し、体内ガスの圧縮、酸素毒性などの効果を利用して、組み合わせた治療法です。 高気圧酸素治療装置には、1人用の装置と多人数用の装置があり、患者さんにその中に入ってもらい、高濃度の酸素を吸入してもらいます。少しずつ気圧を下げ、普通の気圧に戻していきます。
後遺症を残さないためにも、救急車を要請するなどして可能な限り速やかに、治療を開始する必要があります。自然治癒しないものと考えて対応するようにしましょう。
加圧や水圧によって血液中に窒素が増えると、麻酔作用によって空虚な爽快感を覚える多幸症・加圧症を起こします。 また、酸素の濃度が高まると、手指や足指の灼熱痛、視力障害、幻聴、精神錯乱、痙攣などの酸素中毒の障害が発生します。
減圧症は環境圧の急激な変化で発生するため、少しずつ圧力に身体を慣らす事で防ぐことができます。 特殊な環境でなければ減圧症にならないので、スキューバダイビングなどをする場合にのみ注意すれば大丈夫です。スキューバダイビングを行ってから24時間以内の飛行機に搭乗は避けるべきです。スキューバダイビング直後の飲酒・登山も厳禁です。