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 腸閉塞・イレウス

腸閉塞・イレウスの概要は?
おもな症状
  疝痛発作(平滑筋の痙攣によるもので、間欠的に起こり休止期がある事が多い)
腹部膨満感
嘔吐
排便、おなら(ガス)が出ない
似ている病気
  急性腹膜炎
急性胃腸炎
急性虫垂炎・盲腸
急性膵炎
胆道感染症・急性胆嚢炎・胆管炎
尿路結石
卵巣嚢腫・嚢胞性腫瘍
茎捻転
子宮外妊娠
モルヒネ中毒
解離性障害・ヒステリー
回虫症
起こりやすい合併症
  腸管壊死
穿孔
細菌性ショック
末梢循環不全

腸閉塞・イレウスってどんな病気?
食べ物は便になって排泄
  イメージ画像 口から摂取した飲食物は、胃→小腸→大腸を通って消化吸収され、便となって肛門から排泄されます。
 唾液や胃液をはじめとする消化液が、1日数リットルも胃腸の中に分泌されますが、これも小腸や大腸で吸収されて、残りは便とともに排泄されます。
吐き気・嘔吐・腹痛
   なんらかの理由により食べ物や消化液の流れが小腸や大腸で滞った状態、つまり内容物が腸に詰まった状態が腸閉塞です。
 腸が拡張して張ってくるため、お腹が張って痛くなり、肛門の方向へ進めなくなった腸の内容物が口の方向に逆流して吐き気をもよおし、嘔吐したりします。
 腸閉塞は、吐き気、嘔吐をともなう腹痛があらわれるもっとも代表的で一般的な病気です。
血液成分の漏出
   腸管が拡張し腸内圧が亢進すると、腸管壁の静脈が圧迫されて静脈圧が上がります。
 さらに毛細血管圧も上昇し、血管壁の透過性が亢進して、腸内・腹腔内に血液成分が漏出し、腹腔内に腹水が溜まったり、腸内容が増加します。
腸麻痺
   腸管内圧の著しい亢進によって、壁血管が強く圧迫され、壁の血流不足が生じます。そのため組織が酸素欠乏の状態となり、腸麻痺となります。
 血行障害は粘膜面に出血を起こしてびらんを作り、潰瘍を形成して穿孔を起こすことにもなります。
水分・電解質の喪失
   嘔吐によって水分・電解質が失われ、血液は濃縮されます。
 全血比重、血液粘度が増加した結果、末梢循環不全が起こって、血圧が下降します。加えて鼓腸が著しく横隔膜を挙上するので、呼吸運動の障害が現れ、一般状態が悪くなります。
中毒
   腸管内で毒素が生成され、毒素が血液中に吸収されて全身障害を引き起こします。
腸閉塞と腸狭窄
   腸の内容物の通過が完全に阻止された状態を、腸閉塞、またはイレウスと呼びます。
 対して、内容物の一部が通過している状態を、腸狭窄と呼びます。
機械的腸閉塞と機能的腸閉塞
   腸閉塞は原因によって、機械的腸閉塞と機能的腸閉塞に分類されます。
 機械的腸閉塞は、腸管自身の病変が原因で起こります。機械的腸閉塞はさらに、血行障害をともなわない単純性腸閉塞と、血行障害をともなう絞扼性腸閉塞に分類できます。
 機能的腸閉塞は、病変は認められず、腸管を支配する血管神経の障害で、腸の運動が障害されて起こります。機能的腸閉塞は、手術直後や腹膜炎の直後に見られる腸管運動麻痺による麻痺性腸閉塞と、腸管が部分的に痙攣することによって通過が阻害される痙攣性腸閉塞に分類できます。
 日常、しばしばみられ、治療方針を早急に決定し、治療を必要とするのは機械的腸閉塞になります。

腸閉塞・イレウスの原因は?
原因は2つ
  イメージ画像 原因が腸の外側にある場合と、内側にある場合があります。
外側の原因
   腸の外側に原因がある場合は、腸が外側から圧迫されたり、ねじれたりする場合です。
 腹部を切る回復手術を受けたことのある患者さんでは、腸と腹壁、腸同士の癒着が必ず起こります。癒着の部分を中心に腸が折れ曲がったり、ねじれたり、癒着部分で他の腸が圧迫されるなどして腸が詰まる場合が、もっとも一般的です。
他の病気が原因
   高齢者の女性では、大腿ヘルニアと呼ばれる脱腸の一種でも、腸閉塞が起こります。
 内ヘルニアと呼ばれるお腹の中のさまざまなくぼみに腸がはまり込む病気でも、腸が詰まることがあります。
 まれに、腸自体が自然にねじれて詰まる腸捻転(ちょうねんてん)もあります。
絞扼性腸閉塞
   腸自体が圧迫されたり、ねじれたりするだけでなく、腸に酸素や栄養分を送る血管が入った腸間膜(ちょうかんまく)も圧迫されたり、ねじれたりして血流障害をおこしたものは「絞扼性腸閉塞」(こうやくせいちょうへいそく)と呼びます。
 絞扼性腸閉塞は早期に手術を行わないと、死に至ります。
内側の原因
   腸の内側に原因がある場合は、大腸ガンによる閉塞があります。
 高齢者で便秘傾向の人では、硬くなった便が腸閉塞の原因になります。

腸閉塞・イレウスの症状は?
突然の腹痛・吐き気・嘔吐
  イメージ画像 突然、激しい腹痛、吐き気、嘔吐が起こります。
 閉塞した部位より上位の腸管に液・ガスが蓄積し、膨満感(ぼうまんかん)・膨隆感(ぼうりゅうかん)がありお腹が張ります。痩せた人では、腸がむくむくと動くのが、お腹の外から見えることもあります。
 多くの場合、腸が詰まった瞬間に突然発症します。
キリキリと強い腹痛
   腹痛はキリキリと強い痛みが起こり、しばらくすると少し和らぎ、これを繰り返します。「疝痛発作」(せんつうほっさ)と呼ばれる特徴的な症状です。
嘔吐の内容物
   嘔吐の吐物は、最初は白色〜透明で酸味のある胃液で始まります。そして、黄色く苦味のある胆汁になります。進行すると小腸や大腸など腸の奥から逆流してきた腸の内容物となります。最終的には、下痢便のような色合いで、便臭をともなう吐糞症(とふんしょう)になります。
 嘔吐の直後は、いったん腹痛や吐き気が軽くなることが多いです。
腸雑音
   腸管内で液状内容とガスが混和するため、拡張した腸管壁に響いて、金属製有響音性の雑音として聞くことができます。
絞扼性腸閉塞の症状
   腸間膜も圧迫されたり、ねじれたりする絞扼性腸閉塞では、激しい腹痛は休まることなく続きます。時間の経過とともに、顔面蒼白となり、冷汗、冷感もみられ、脈拍や呼吸が弱くて速くなり、ショック状態になります。

腸閉塞・イレウスの診断は?
手術が必要か検査
  イメージ画像 エックス線検査、超音波検査、CT検査を行います。
 検査では腸だけでなく、腸間膜も圧迫されたり、ねじれたりする絞扼性腸閉塞と区別することが大切ですが、この区別は難しいこともあります。
 絞扼性腸閉塞が疑われ、その疑いが晴れなければ、手術に踏み切ります。
年齢的素因
   乳児では、先天性閉塞症、腸重積症、ヘルニアの嵌頓が多く、加齢とともに炎症性腸疾患、開腹手術に起因する癒着によるものが多くなります。
 高齢者では、原発性悪性腫瘍、転移性悪性腫瘍、S状結腸捻転、腸間膜血栓症によるものがみられます。
 手術歴の有無など、既往歴の問診も行います。
視診・触診
   ヘルニア嵌頓がないか、とくに高齢の女性では股ヘルニアに注意し、大腿の付け根を観察します。直腸指診も行います。糞便の有無、直腸ガンによる腸狭窄は、これによって確実に診断できます。
 聴診も重要になります。腸雑音は正常では規則正しい等しい間隔の音ですが、腸狭窄の時は狭い場所を内容が通過するときの噴出音が聞こえ、この音と同時に強い腹痛があらわれます。
エックス線検査
   腹部単純撮影、立位(不可能なら座位)で腸管内ガスの様子をみます。発症後3時間〜4時間で現れるので、確実に診断できます。
 正常では、成人は空腹時には胃と結腸にガスが認められますが、小腸内には認められません。腸閉塞の場合、小腸にガスによって充満した腸管像と鏡面像が認められます。また、小腸ではケルクリングしゅうへき像、大腸ではハウストラ(嚢状膨起)が認められます。
 麻痺性腸閉塞による小腸ガス像は、腸内に液状の貯留がないので、鏡面形成がありません。エックス線だけでは単純性か絞扼性かの診断は難しく、総合的に早く診断することが大切です。

腸閉塞・イレウスの治療法は?
通常は保存的治療
  イメージ画像 絞扼性腸閉塞でなければ、ほとんどの場合は手術以外の保存的治療で治癒します。
 食事や飲水を中止し、胃腸を休め、十分な補液を行います。
胃腸の内容物を取り除く
   症状が進行して、腸の張りが強くなった場合、鼻から胃や腸まで管を入れ、嘔吐の原因となる胃腸の内容物を外に汲み上げます。
 腸の張りが少なくなれば、腸から吸収され快方に向かいます。
再発の可能性
   おならや便が出れば、腸の通過障害は一時的にではありますが治ったことになります。しかし腸が詰まった原因である、癒着であったり、腸がはまり込んだお腹のくぼみは治らないため、再発の危険は残ります。
手術
   手術的治療では、お腹を切ることで新しい癒着を作ることになり、よりいっそう腸閉塞になりやすくなってしまいます。そのため、手術は避けるのが一般的です。
 手術が必要な場合は、腸の血管が圧迫されたりねじれたりする絞扼性腸閉塞、保存的治療を1週間以上続けても快方に向かわない場合、腸閉塞を何度も繰り返す場合などに限られます。

腸閉塞・イレウスかなと思ったら?
外科へ
  イメージ画像 腸閉塞は自然に治ることはないので、早めに診察を受ける必要があります。診察の際は、病院の外科が良いでしょう。
 我慢して様子をみて、夜間や休日になってから病院を受診しても、適切な治療が受けられない場合があります。
 症状が激しければ、救急車を要請しましょう。
 かつては死亡率が高かった病気ですが、最近の治療成績は良好です。
予防法
   腹部の手術後の癒着による腸閉塞では、体調がすぐれない時には食事内容を軟らかく消化の良い物にするなど、工夫が必要です。普段から規則正しい生活を送り、便通を整え、食事は良く噛み、ゆっくり時間をかけて食べるようにしましょう。
 完全に予防する方法や、注意点はありません。
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