性機能不全(せいきのうふぜん)はいくつかの原因に分類されます。性交疼痛障害(せいこうとうつうしょうがい)も、性機能不全のなかに含まれます。 性交疼痛障害はさらに、性交疼痛症と、膣痙攣に分類されます。
膣痙攣は「膣の外3分の1の部分の筋層に、反復性または持続性の不随意性攣縮が起こり性交を障害するもの」と定義されています。 しかし実際には、「挿入恐怖」が原因となっているケースが多いようです。
膣痙攣は、性経験のない人に起こる原発性膣痙攣と、性経験のある人に起こる続発性膣痙攣とに分類されます。 膣痙攣の頻度は正確にはわかっていません。不妊症や性交障害で病院を訪れる人の5%〜17%にみられる病気です。
原発性膣痙攣の原因の多くは、幼少期の性的障害、性への消極的思考の教育、宗教的な罪悪感、望まない結婚などが関係するといわれています。
続発性膣痙攣の原因は、原発性膣痙攣の原因に加えて、パートナーとの関係の難しさが関係してくることがあります。結婚後、何年もしてから症状があらわれる場合もあります。 性交疼痛症をともなうことも多く、膣痙攣との区別を困難にしています。
指の挿入はできるのに、陰茎を挿入しようとすると「はね返される」、「ポンと出てしまう」という状態です。膣入口部の攣縮が認められることもあります。 性交疼痛症を合併していることが多いですが、性交に対して不安や恐怖を自覚していないにもかかわらず、条件反射的に膣口を閉じてしまう場合もあります。
原発性膣痙攣では、性交を試みようとすると、外陰部の疼痛を訴えるために性交が不能となります。
続発性膣痙攣では、男性器挿入時に疼痛を訴えます。 挿入後に膣が痙攣を起こして陰茎が抜けなくなるということは、ほとんどありません。
問診、病歴によって、膣痙攣を疑いますが、確定診断は膣の検査を行なうことになります。 症状のあらわれる部位が性器という場所ゆえに、なかなか検査が行いにくいというのが現状です。
膣痙攣は、無意識の心理的葛藤が身体的症状としてあらわれる心身症としてとらえることができます。 このような場合には、精神医学的療法が効果的です。心理的外傷の受容と軽減のための精神療法、性教育を行ないます。 同時にパートナーとの関係の見直し、家庭環境の改善も必要になってきます。
物理的な治療法としては、器具の挿入による膣の段階的拡張を行なう方法があります。抵抗のないものから始めて、徐々に太さを増して、最後はノン・エレクト法(非勃起状態のペニスの挿入)で性器の接触と、浅い挿入練習に移ります。 また、指を挿入して咳をして膣口が締まり、そしてゆるむときのタイミングを体得する挿入訓練も併用します。 そのほか、局所への麻酔薬入りゼリーの塗布、向精神薬の内服などの治療法があります。
膣痙攣は診断の難しい病気です。また、治療には時間がかかることがあるので、まずは産婦人科に相談に行くのが良いでしょう。 その後、必要に応じて専門医の治療を受けることになります。