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低血圧症は一般的に、収縮期血圧(上の血圧)が100mmHg未満をいうことが多いです。拡張期血圧(下の血圧)は考慮に入れないことが普通です。まったく症状のない人から、立ちくらみ、めまい、失神、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)などの症状をともなう例まで、個人差があります。低血圧症といっても、単一の疾患ではないため患者さんの状態も千差万別です。 このような症状が認められる場合には、低血圧症として治療や管理の対象となることがあります。
低血圧症では、安静時にすでに血圧が低い場合、立位を維持している時や、体位変換時、とくに寝た状態(臥位)や座位から立ち上がった時に血圧が下がる場合があります。 原因疾患と体位との関係は、非常に重要です。
本態性低血圧症 症候性低血圧症・二次性低血圧症 起立性低血圧症
低血圧を起こす原因としては、以下のような原因が考えられます。 全身に循環している血液量(循環血液量)の減少 心臓から送り出される血液量(心拍出量)の低下 末梢血管(細かい血管)の抵抗 血液の粘稠度(ねんちゅうど、粘り気のこと)の減少
一般的に低血圧症では、原因となる疾患は必ずしも認められず、原因疾患が明らかでない場合があります。このような場合は、本態性低血圧症(ほんたいせいていけつあつしょう)と呼ばれます。
原因となる病気が認められる場合には、症候性低血圧症、または二次性低血圧症と呼ばれます。 起立にともなって低血圧が認められる場合には、起立性低血圧症として分類されます。
急性低血圧症 慢性低血圧症
急性低血圧症では、ショックや急性の循環不全を示すような急激な症状があらわれます。慢性低血圧症に比べると重症のことが多く、ほとんどの患者さんで救急処置が必要となります。 急性低血圧症を起こす原因としては、以下のような原因が考えられます。 出血・脱水などの循環血液量の減少や重症感染症にともなう敗血症ショック 心不全などの心機能低下や重症不整脈 過剰な降圧薬の投与や睡眠薬・麻酔薬の投与による薬物中毒
慢性低血圧症では、激しい症状を示すことはなく、症状がゆっくりと現われ持続します。
本態性低血圧症は、慢性低血圧症を示すため、症状は持続的です。 症候性低血圧症は、原因疾患の違いによって急性低血圧症、慢性低血圧症の症状を示します。 起立性低血圧症は、体位の変換にともなって急性低血圧症の症状があらわれます。
血圧が低いため、脳・腎臓・全身の筋肉などに十分に血液が流れません。 低血圧の原因となる病気がない場合がほとんどですが、なかには隠された病気が根底に潜んでいることがあります。まれに脳の変性疾患のシャイ・ドレーガー症候群のように、著しく重症の病気が含まれていることもあります。 また、心理的・精神的な問題や、悪い生活習慣を抱えていることが多いので、その方面の配慮も同時に行い治療をします。 病気としての低血圧症は、低血圧にもどづく自覚症状や身体所見のある人、原因疾患のある人になります。 血圧が低くても、原因疾患がなく、元気で自覚症状のない人であれば、病気としての低血圧症ではありません。
全身の倦怠感、めまい、立ちくらみなどの症状が認められ、常に血圧が低い状態を示し、明らかな原因疾患が認められない場合は、本態性低血圧症と診断されます。
症状の現われ方とは関係なく、原因疾患が明らかになっている場合は、症候性低血圧症・二次性低血圧症と診断されます。
起立時のみ、血圧低下を示し症状が現われる場合は、起立性低血圧症と診断されます。起立性低血圧症は、本態性低血圧症や症候性低血圧症に併発することがしばしばあります。
高血圧ではWHO専門委員会などで国際的な診断基準がありますが、低血圧症の場合には国際的に統一された診断基準はありません。正常血圧との境界も決められていません。
治療には、症候性低血圧症の有無の区別が重要となります。 原因疾患のある症候性低血圧症では、原因疾患の治療を優先して行います。
原因疾患の認められない本態性低血圧症の場合は、愁訴に対して食事療法、運動療法、生活リズムの調整などの生活指導を行います。それでも症状が改善されない場合は、薬物療法を行います。
日常生活に影響を及ぼす症状が認められ、血圧測定が自宅で可能な場合は、自分で低血圧の有無を調べてみましょう。医師が血圧を測るときだけ高値を示す白衣高血圧(はくいこうけつあつ)もあるので、家庭で血圧を測ることが望ましいです。 低血圧症では、分類によって生活指導や治療法が異なります。もし低血圧症が疑われた場合は、診断と原因疾患の検査のために内科の診察を受けるようにしましょう。 また、若い時から血圧の低い人は長寿の傾向がありますが、高齢になって若い頃と比較して血圧が低くなり不快な症状が出てきた場合は、重い病気が原因になっている可能性もあります。その時はかかりつけ医の診察を受けましょう。
医師の前では、精神的緊張のために血圧が上昇しがちです。このように普段は正常血圧なのに診察室では高血圧の基準を満たす状態を、白衣高血圧と呼びます。 家庭用血圧計での測定により、白衣高血圧か、本来の高血圧かが区別できます。
白衣高血圧自体は病気ではなく一種の現象で、脳卒中(のうそっちゅう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)など高血圧性臓器障害にはつながらないとされています。高血圧を指摘されても軽症の場合には、安易に降圧薬の服用を開始せず、別の機会に血圧を測定して正しい血圧を確認する必要があります。 ただし白衣高血圧の人は、本当の高血圧になりやすいという研究もあるので、減塩など生活習慣の見直しはした方が良いでしょう。 また、普段の血圧も高く、診療室ではさらに上昇する「白衣効果」が見られる高血圧の場合は、ストレスで血圧が上がりやすいことを意味しています。心血管病に関係する現象として注意が必要です。