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住血吸虫症のおもな病原体は、日本住血吸虫、マンソン住血吸虫、メコン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫です。 日本住血吸虫、マンソン住血吸虫、メコン住血吸虫は肝臓の病気を引き起こします。ビルハルツ住血吸虫は膀胱の病気を引き起こします。
日本住血吸虫症の感染源は、川や田んぼに生息する小さな巻き貝のミヤイリガイです。 ミヤイリガイから幼虫が水中に泳ぎ出し、人と水とが接触すると、感染期幼虫(セルカリア)が皮膚から人の体内へと侵入します。 身近な生き物図鑑:身近な貝類図鑑
日本国内では、甲府盆地、利根川流域、広島県片山地方、九州筑後地方などにミヤイリガイが生息していたため、これらの地域では昔から日本住血吸虫症が流行していました。 しかし、住血吸虫症対策、有病地域の都市化などにより、ミヤイリガイの生息域が減少していき、それにともなって患者数も減少していきました。1976年の新規感染患者を最後にして、現在まで新たな感染者は出ていません。
1996年、日本住血吸虫症の撲滅宣言がなされました。 甲府盆地の一部には、現在もミヤイリガイが生息していますが、日本住血吸虫の感染報告はありません。
感染期幼虫(セルカリア)は皮膚から侵入するので、侵入を受けた部分はかゆくなり、赤く腫れてきます。 感染後1ヶ月〜2ヶ月経過すると、発熱、腹痛、血便(血の混じった便)などの症状があらわれます。これは住血吸虫の成虫が、腸や肝臓の血管の中で産卵を始めるためです。
成虫には雌雄(しゆう・オスとメス)の別があり、オスがメスを抱きかかえたような状態で産卵をします。なお、一般的な吸虫類はほとんど雌雄同体です。 虫卵は肝臓の血管(門脈・もんみゃく)や、腸の血管に詰まり、激しい免疫反応を引き起こします。腸では虫卵の周辺組織が破壊され、腸に出血するようになります。
肝臓では、肝細胞が免疫細胞に圧迫されて破壊されてしまい、肝臓の機能が失われていきます。 数年たつと、肝硬変になり、腹水がたまると同時に脾臓が腫れていきます。放置しておくと死に至ります。
アフリカに分布するビルハルツ住血吸虫は、成虫が膀胱の血管に寄生するので、血尿が出るのが特徴です。
便の中から虫卵を検出します。ビルハルツ住血吸虫では、尿から虫卵を検出します。血清検査も有効です。 海外の流行地では、こられの方法に合わせて、肝臓の病変、脾臓の腫れを超音波検査によって診断しています。
過去に流行地に住んでいたことのある人では、直腸健診で死んだ虫卵が見付かることがあります。血清検査で陰性ならば、治療の必要はありません。
抗寄生虫薬のプラジカンテル(ビルトリシド)が有効です。 肝硬変にまで進行してしまった場合は、肝硬変に対する治療を行いますが、予後は不良です。 感染期幼虫(セルカリア)による湿疹には、症状を和らげる治療を行います。
住血吸虫症は症状からの診断が難しいため、予防に努めることがもっとも大切です。
住血吸虫症は、中国、フィリピン、メコン川流域、アフリカ全域、南米、中近東などで広く流行しています。 日本住血吸虫以外の住血吸虫でも、感染源となるのは淡水に生息する巻き貝の一種です。流行地域では川や湖で泳いだり、水浴びをしたりしないように注意しましょう。