そらいろネット > 家庭の医学 > 血液・造血器の病気 > 貧血の食事療法
血液中にあるヘモグロビンの量が少ない状態を「貧血」と言います。 ヘモグロビンは、体中に酸素を運ぶ働きをするため、貧血になると全身が酸素不足の状態になります。このため、頭痛、めまい、疲労、肩凝り、消化不良が起きます。また、顔色が悪くなり、イライラするなどの症状が現れます。 貧血の患者さんの大部分は、ヘモグロビンの材料である鉄分が不足する鉄欠乏性貧血です。
顔面不良 息切れ めまい 耳鳴り 動悸
倦怠感 舌の痛み 嚥下障害 爪の変形(さじ状爪・スプーン状爪) 異嗜症(いししょう)
鉄欠乏性貧血は、鉄の摂取量が少ないか、需要が増えた時に起こります。極端な偏食やダイエットをしたり、成長期、妊娠・出産期、月経過多、潰瘍からの出血なども原因となります。 ダイエット、妊娠、出産、月経など、現代女性は鉄分不足になりがちです。
明らかな鉄欠乏性貧血の場合、食事の改善だけでは治療は不十分になります。 鉄剤を服用すると共に、食事療法を行うことになります。鉄鍋や鉄のフライパンなど、鉄で作られた調理器具を使うのも効果があります。
貧血には、鉄欠乏性貧血のほかにも、以下のような原因があります。これらの貧血では、薬物による治療が中心となります。 胃切除によるビタミンB12欠乏 再生不良性貧血 肝硬変や腎不全などの病気にともなう貧血
鉄分には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。肉や魚に含まれる鉄分が、ヘム鉄です。野菜や穀物に含まれる鉄分が、非ヘム鉄です。 ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて、何倍も腸で吸収されやすい成分です。貧血対策には、ヘム鉄が多く含まれる食事を心がけましょう。
血液は鉄分だけではなく、タンパク質、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、銅などから作られます。これらを十分に摂取するためには、さまざまな食べ物を偏りなく食べることが必要です。
野菜や穀物に含まれる「非ヘム鉄」は、吸収の良くない鉄分です。ただし、動物性タンパク質と一緒に食べることで、吸収が良くなります。
ビタミンCには、鉄を吸収しやすい形に変えてくれる作用があるため、貧血解消の強い味方になります。ヘム鉄も、非ヘム鉄も、ビタミンCと一緒に食べるようにしましょう。
酢、香辛料、梅干しなどを使った料理は、胃粘膜を刺激し、胃酸の分泌を高め、鉄分の吸収を良くしてくれます。 また、良く噛んで食べることも、胃酸の分泌を促進します。
食前・食後の緑茶、コーヒー、紅茶は、貧血の大敵です。これらの飲料に含まれるタンニンは、鉄の吸収を悪くしてしまいます。どうしてもお茶を飲みたい時は、ほうじ茶やウーロン茶を飲むようにしましょう。 鉄剤を飲む場合、鉄の量も多く、吸収率も高まっているので、お茶を控える必要はありません。
鉄分の不足は、年齢ごとに気を付けたいポイントがあります。 特に女性では、生理の開始、妊娠など、鉄不足になりやすい時期があるので注意が必要です。
母乳には鉄分がほとんど含まれていないため、貧血になることがあります。 生後5ヶ月頃から開始する離乳食には、鉄分補給の意味もあります。この時期までに必要な鉄分は、お母さんの体内にいる間に、胎児の身体に蓄えられています。
女性の場合、思春期は成長と生理の開始によって鉄分の需要が増えます。女子高校生の約10%が鉄欠乏性貧血で、約60%が鉄欠乏状態です。正常な人は約30%しかいないと言われています。
妊娠中は母体の血液量が増加し、ヘモグロビンが薄くなり、見かけ上は貧血になります。重い貧血では、母体にも胎児にも影響があります。 鉄欠乏性貧血の場合は、鉄剤を服用し、食事療法を行います。
高齢者では、調理や買い物が十分にできなかったり、食事がきちんと食べられないため、貧血になっていることがあります。 買い物が大変な時は、食材料の宅配などを頼むのも良い方法です。