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注意欠陥・多動性障害(ADHD)


注意欠陥・多動性障害(ADHD)の概要は?

おもな症状

 

注意の欠如
多動性
衝動性

似ている病気

 

学習障害
広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい)

起こりやすい合併症

 

反抗的・反社会的行動
学習障害
不安
抑うつ


注意欠陥・多動性障害(ADHD)ってどんな病気?

行動障害

 

 注意欠陥・多動性障害(AD/HD)は、多動性・衝動性と、注意力の障害を特徴とする行動の障害です。不注意と、多動性・衝動性のうちどちらか一方か、あるいは両方が認められるものを指します。
 知能は正常範囲であることが一般的です。

世界基準では

 

 米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-4)』によって採用された障害名です。
 世界保健機関(WHO)の『国際疾病分類第10版(ICD-10)』によれば、「多動性障害」という名称が用いられています。

世界基準では

 

 微細脳機能障害(びさいのうきのうしょうがい)という呼び方が一時期、広く使われましたが、病気の原因を想定した呼び方です。
 同様に、学習障害という呼び方は、教育の分野から提唱されたもので、全体の知能は正常範囲にあります。読む、書く、計算するなど特定の能力だけに問題があることが多く、それぞれ読字障害(どくじしょうがい)、書字表出障害(しょじひょうしゅつしょうがい)、算数障害(さんすうしょうがい)と呼ばれています。

男児に多い

 

 学童期では、出現率が3%〜5%です。男児に多く、男女比は3〜5:1の割り合いです。


注意欠陥・多動性障害(ADHD)の原因は?

神経生物学的な障害

 

 多動と衝動性を特徴とする行動の障害に関しては、「脳障害説」と「環境因子説」との間で議論が繰り返されてきました。
 しかし現在では、画像研究と遺伝学的研究から、神経生物学的な障害として広く認められるようになりました。

世界基準では

 

 画像の研究からは、前頭前部(ぜんとうぜんぶ)、尾状核(びじょうかく)、淡蒼球(たんそうきゅう)、小脳虫部(しょうのうちゅうぶ)が、健常児に比べて小さいとの報告があります。
 家族集積性が高いこと、養子研究・双生児研究から遺伝要因の関与が高いことが示されました。神経シナプスの刺激の伝達の働きに関与する、いくつかの遺伝子に関心が集まっています。
 一部には、脳の感染・外傷など、後天的原因によるものがあります。


注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状は?

基本症状は3つ

 

 基本症状は、不注意、多動性、衝動性です。

 

不注意

   

 不注意は、細かいことに注意を払えないという注意力の欠如、注意を維持できない、転動性が高く周囲の刺激に気が散るなどです。
 日常生活では具体的に、不注意な間違い、始めたことを最後までやりとげない、言われている事を聞いていない、忘れ物・落し物が目立つなどがあります。

 

多動性

   

 多動性は、「活動の過剰」です。
 絶えずせわしなく動き回る、体の一部をクネクネモジモジと動かす、多弁などがあります。

 

衝動性

   

 衝動性は、結果を考えずに判断・行動することです。その結果、自分や他人が危険にさらされたり、物を破壊するなどがあります。
 順番を待てない、人の妨害や邪魔になる、質問を聞き終えないで出し抜けに答えるなどとしてあらわれます。

症状によって分類

 

 普通は、症状は幼児期から認められます。しかし、集団生活の場で支障をきたして初めて気が付くことが多いです。
 どの症状が現れるのかによって、「多動性・衝動性優勢型」、「不注意優勢型」、「混合型」に分類されます。

小学校低学年〜中学年

 

 症状は幼児期から認められますが、小学校低学年〜小学校中学年にかけてが、もっとも激しくあらわれます。
 その後、中学生の年齢になると落ち着いていきます。しかし症状は大人になるまで、多少なりとも続くことが多いです。

他の症状と合併することが多い

 

 反抗的・反社会的行動、学習障害、不安・抑うつ、その他の精神医学的障害を合併していることが少なくありません。


注意欠陥・多動性障害(ADHD)の診断は?

まず知能検査と脳波測定

 

 知能検査と、脳波測定を行います。
 知能検査では、全体のIQは正常範囲でも、内容を見ると能力にばらつきがあることが多いという特徴があります。
 脳波測定では、特徴的な所見はないといわれています。

アメリカの診断基準によると

 

 米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-4)』では、不注意、および多動性・衝動性を表す行動を、9つからなるリストで示しています。
 どちらも6項目以上に該当する場合、その症状があるとして、さらに以下の条件を満たす場合、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断します。

 

年齢に不相応で、適応的でない。

 

6ヶ月以上続く。

 

7歳以前に始まる。

 

2つ以上の場面であらわれる。

 

社会的、学業的機能に障害となる。

 

広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい)、その他の精神病の経過中に起こるものではない。

生育歴や客観的指標が重要

 

 診断は、面接、診察室と検査場面での観察所見、標準化された評価尺度などを総合しておこなわれます。
 その中でも、生育歴、家庭や学校など複数の場面からの情報が重要となります。
 多動性、衝動性、不注意などの症状を直接測定する検査が、客観的指標として役立ち、治療効果の指標としても利用されます。


注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療法は?

自尊心を培う

 

 児童期の注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療目標は、この障害を持つことによる有害な影響を最小限にして、子供が本来持っている能力を発揮させ、自己評価を高め、自尊心を培うことです。自尊心を培うことにより、後天的に生じる情緒障害の予防をします。
 そのために、多面的な治療が必要とされます。

おもな治療法

 

 具体的な治療法としては、薬物療法、ペアレント・トレーニング(親の訓練)、ソーシャル・スキル・トレーニング(生活技能訓練)、教育的介入(学習能力にばらつきがあることが多いため、不得意科目に対する特別な配慮)などがあります。
 薬物療法では、中枢神経刺激薬であるメチルフェニデート(リタリン)が第一選択薬となります。

成長と共に軽減しますが・・・

 

 一般的には、成長と共に患者さんの症状は軽減していきます。しかし、基本的特徴は持ち続けることが多いようです。
 適切な治療や対応によって、生活の支障とならないような工夫が求められます。
 注意欠陥・多動性障害(ADHD)に気付かずに、放置されたままでいると、反抗的になったり、不安・抑うつなど二次的な問題を抱えるリスクが高まってしまいます。


注意欠陥・多動性障害(ADHD)かなと思ったら?

自尊心を損なうことが問題

 

 「しつけの問題」として、親が学校から責められることも多くあります。
 両親、教師など、本人に関わる大人たちが障害について十分に理解することが大切です。
 また、新しい刺激や、複数の刺激に対する処理が困難な事から、学習する場所をいつも一定にする、机の上や周囲に余計な物を置かない、などの生活環境の整備も心がけましょう。

自尊心を損なうことが問題

 

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、しばしば周囲の大人や子供にとって迷惑ごととしてとらえられてしまいます。
 ですが、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持つ子供が、これらの症状のために否定的な注目を浴び、自己評価を損なうことが、もっとも有害な影響と考えられます。
 あくまでも、子供の利益のために病気を理解し、適切な治療を受けられるように考えるべきです。

専門医

 

 日本では、児童精神科、小児神経科などがおもな診療の窓口となります。
 しかし日本では、注意欠陥・多動性障害(ADHD)には保険の適用が認められていません。

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