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 過敏性肺炎

過敏性肺炎の概要は?
おもな症状
  セキ
呼吸困難
発熱
喀痰(かくたん)
チアノーゼ
倦怠感(けんたいかん)
体重減少
似ている病気
  特発性間質性肺炎(とくはつせいかんしつせいはいえん)
PIE症候群
ウイルス性肺炎
起こりやすい合併症
  呼吸不全

過敏性肺炎ってどんな病気?
アレルギー性肺炎
  イメージ画像 抗原はさまざまですが、真菌(カビ)、有機粉塵(ゆうきふんじん)、鳥の糞などの抗原を、反復吸入によって起こるアレルギー性の肺疾患です。
 肺の間質(かんしつ)に広く炎症がみられ、肺炎と同様の症状を起こしますが、感染症ではありません。肺の間質に炎症を起こすことから、外因性アレルギー性胞隔炎(がいいんせいあれるぎーせいほうかくえん)とも呼ばれます。
 男女問わず、あらゆる年齢層にみられる疾患です。
急性と慢性
   急性のものと、慢性のものとに分類できます。
 急性の過敏性肺炎では、原因抗原から離れることで回復します。
 慢性の過敏性肺炎では、病変と症状が継続し、進行することがあります。

過敏性肺炎の原因は?
夏型過敏性肺炎タイプ
  イメージ画像 日本では、家の中の環境に存在するトリコスポロンという真菌の一種が、抗原となる過敏性肺炎がもっとも多いです。患者さんの約70%を占めています。
 過敏性肺炎は、春〜秋にかけ、特に夏を中心とした季節に多いため、夏型過敏性肺炎とも呼ばれています。北海道では、比較的少ないタイプです。
吸入後8時間〜13時間
   抗原を吸入してから8時間〜13時間で症状があらわれます。
 肺の病理組織では、一般的に好酸球が少なく、肉芽腫(にくげしゅ)、リンパ球の浸潤(しんじゅん)がみられます。
過敏性肺炎の主な抗原
   気候、職業、地域差などによって病態が違います。
 原因となる他の抗原としては、好熱性放線菌があります。おもに、酪農家に発生し、農夫肺(のうふはい)と呼ばれています。
 鳥の糞、尿、唾液などの排泄物などが関係し、鳥の飼育、羽毛を取り扱う職業の人に発生する、鳥飼育病(とりしいくびょう)があります。サトウキビ肺症は南日本に多く、干し草を原因とするものは北海道や東北地方に多いとされています。
 その他にも、サトウキビ肺、養蚕者肺(養蚕従事者肺)、ナメコ栽培者肺、シイタケ栽培者肺、小麦粉取り扱い者肺、塗装工(イソシアネート)、貝細工製造業者肺、豚飼育者肺などでも、それぞれの抗原が原因となる過敏性肺炎が存在します。
病名 過敏性肺炎の原因・抗原
夏型過敏性肺炎 トリコスポロン・アサヒ
トリコスポロン・ムコイデス
農夫肺 好熱性放線菌
Micropolyspora faeni
Thermoactionomyces vulgaris
換気装置肺炎
空調病
加湿器肺炎
好熱性放線菌
ペニシリウム
その他
鳥飼育病 糞・尿・唾液など鳥の排泄物
イソシアネートによる過敏性肺炎 トリエンジイソシアネート(TDI)
メチレンジイソシアネート(MDI)
ヘキサチレンジイソシアネート(HDI)

過敏性肺炎の症状は?
急性の過敏性肺炎
  イメージ画像 急性のものの多くは、大量の抗原を吸入したあと、4時間〜8時間で症状があらわれます。
 悪寒(おかん)、発熱、倦怠感などの全身症状とともに、乾性の咳、呼吸困難などの呼吸器症状があらわれます。重症の場合、チアノーゼ、血痰、胸痛、動悸(どうき)、胸が締め付けられるような感じもあします。
 症状は数時間〜十数時間続きますが、原因となる抗原から離れると、数時間〜数日以内に回復します。
 急性の発作を繰り返していると、食欲不振、体重の減少が目立つようになり、慢性型へと移行することもあります。農夫肺、鶏飼病では、急性型、慢性型の両方がみられます。
亜急性の過敏性肺炎
   亜急性型では、比較的少量の抗原に長期間さらされた結果、症状が潜在的で慢性の咳、除々に強まる呼吸困難などによって発病していきます。 
慢性の過敏性肺炎
   慢性型は、数ヶ月〜数年かけて病変が形成されます。抗原を少しずつ、長期間吸入することで発病します。軽い咳、運動時の息切れ、疲れやすさ、体重減少などが徐々に進行していきます。
 抗原と症状の関係はなくなります。抗原から離れても、病変は回復しなくなります。繊維化などがみられるようになり、症状が残ったり、進行するようになります。
 夏型過敏性肺炎、空調肺炎、インコ飼育病に多いタイプです。

過敏性肺炎の診断は?
血液検査と胸部X線検査から
  イメージ画像 一般血液検査では、末梢白血球数の上昇、CRPの上昇などの炎症反応が認められます。低酸素症を示し、胸部X線像では、びまん性すりガラス状陰影が認められます。
 このような検査データでは、他の疾患の可能性もあるため、確定診断のためには、抗原を吸入することにより発症するかどうか経過、病歴、原因抗原の吸入による誘発試験で疾患が発症する再現性を確認することで、確定診断することができます。
誘発試験は行わないことも
   誘発試験は、抗原の吸入によって肺疾患が発症し、場合によっては呼吸困難になることもあるので、安易には行いません。
 家の中に存在する真菌(カビの一種)などが原因であれば、帰宅すると抗原を吸入することになるので、診断できることがあります。
経気管支肺生検
   気管支鏡を使って肺内の組織を採取する、経気管支生検が行われることがあります。
 経気管支生検は、他の類似した疾患を否定する意味があります。過敏性肺炎の特徴的な病理組織像は、器質化肺炎、リンパ球性胞隔炎(りんぱきゅうせいほうかくえん)、肉芽腫などです。
気管支肺胞洗浄(BAL)
   気管支鏡を使って肺内に生理食塩水を注入し、肺を洗う検査があります。気管支肺胞洗浄(BAL)と呼びます。
 この液の中には、リンパ球が多くみられ、リンパ球のCD4とCD8の比率が低下する特徴があります。
抗原抗体検査
   血清中に原因となる抗原に対する抗体の存在を検索する検査を行います。
 病気を起こしていない健常者でも陽性になることがあるので、この検査だけで確定診断とはなりませんが、重要な検査です。
その他の検査
   感染症、他の間質性肺炎との疑いがないか検査を行います。
 慢性過敏性肺炎の場合、特発性間質性肺炎との区別が非常に困難となることがあります。

過敏性肺炎の治療法は?
住環境の見直し
   抗原の吸入を避けるようにすることが大切です。
 住宅などの環境が原因の場合は、室内の掃除、消毒、腐った木の部分の除去、台所・洗面所・風呂場のカビの除去、風通しをよくするなどの工夫が重要です。
 防御マスクの装着が、効果を示す場合もあります。
薬物療法では
  イメージ画像 軽度の症状で日常生活に影響しない場合、治療をせずに経過をみます。
 中等症、重症では、発熱、呼吸困難、低酸素血症などの症状がみられるため、ステロイド薬の経口、または点滴による投与を行います。重症例では、酸素吸入を行ったり、鎮咳薬(ちんがいやく)などが併用されますが、鎮咳薬はあまり効果は期待できません。
 ただし、薬物療法は対処療法になるので、根本的な治療にはなりません。
慢性過敏性肺炎について
   急性過敏性肺炎では、入院するなど、原因から離れることで回復する場合がほとんどです。
 慢性過敏性肺炎では、進行することがあります。また、慢性症例の頻度、正確な予後については、現在でも研究中です。

過敏性肺炎かなと思ったら?
まずは受診を
  イメージ画像 内科へ受診をします。
 できれば、呼吸器を専門とする内科医への受診が理想です。
環境整備を
   住宅などの環境が原因の場合は、住宅内の環境整備を行う必要があります。こうすることで、症状があらわれるのを予防することが可能です。
 職場などが原因の場合は、原因から離れる工夫が必要となります。
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