そらいろネット > 家庭の医学 > 膠原病・原因不明の全身疾患 > 成人スティル病
小児期に発症した関節リウマチのうち、関節の症状だけでなく高熱や発疹を起こす病型を「スティル病」、または「スチル病」と呼びます。 長い間、このスティル病は子供にしかかからない病気だと考えられていました。しかし、1971年イギリスのバイウォータースは大人(16歳以上)になっても発病する患者さんがいることを発見しました。そこで、「成人発症スティル病」として報告されました。
バイウォータースの報告以後、同様の患者さんが世界中で報告されるようになりました。 現在では大人になってから発症したスティル病を「成人発症スティル病」。子供の時に発病し、その後、大人になって再発した場合を「小児発症スティル病の再発」としています。小児発症スティル病の再発は女性に多く、35歳以下の成人に発症します。 成人発症スティル病と、小児発症スティル病の再発とを併せて、「成人スティル病」と総称しています。
成人スティル病が発病する決定的な原因は、まだ良くわかっていません。 近年では、成人スティル病の患者さんでインターロイキン6、あるいはインターロイキン18など、「炎症を引き起こす液性因子」(サイトカイン)が著しく高くなっていることが知られています。 また、遺伝子レベルでの研究が進んでいます。
関節リウマチで用いられる抗サイトカイン療法(生物学的製剤)が成人スティル病に対して有効とされ、新しい治療法として期待されています。
38℃以上の原因不明の高熱が数週間続く「不明熱」の場合、成人スティル病は考えなければいけない病気のひとつとなります。寒気、震え、悪寒戦慄などをともなわず、発熱のわりには元気です。 成人スティル病のもっとも特徴的な症状は皮膚の発疹です。うすいピンク色で、少し盛り上がり、熱のある時に前胸部や腕に出やすく、通常かゆみはありません。リウマイド疹と呼ばれます。 喉の痛みや、関節の痛み、リンパ節の腫れもよくみれる症状です。
手首などの大きな関節に痛みをともないますが、関節が赤く腫れるようなことは少ないです。長期に経過すると、約3分の1の患者さんに、手首などの関節に変形がみられます。発熱時には、筋肉痛がみられます。 首のリンパ節が腫れたり、肝臓、脾臓が腫れたりすることもあります。 胸膜炎、肋膜炎、心膜炎、腎障害、しびれなどの末梢神経障害がみられることもあります。
全身の炎症を反映して赤沈(せきちん)の亢進、CRP値の上昇、白血球(とくに好中球)の増加などがみられます。 白血球増加は著明で、2万個〜3万個/μlに達することもあり、白血病が疑われることもあります。
中等度の貧血、軽い肝機能異常、高ガンマグロブリン血症、血清補体価(けっせいほたいか)の増加などがみられます。特徴的な検査異常としては、血清フェリチンの著しい増加があります。 関節のエックス線検査では異常がみられないか、関節周囲の腫脹のみです。
不明熱、弛張熱とともに上述の症状があり、検査結果に異常があれば、診断は比較的容易です。
成人スティル病の治療の中心は、抗炎症療法です。非ステロイド性抗炎症薬が第一選択となります。 肝障害のある患者さんや、成人スティル病の患者さんで多いといわれるアレルギーのある患者さんでは、継続が困難となります。 また、十分に解熱しないことも多く、中等量のプレドニンなどのステロイド薬が使われるケースも多くあります。
ステロイド薬が十分に効果が出なかった患者さんに対しては、抗リウマチ薬のメトトレキサート、リウマトレックスが併用されることもあります。 難治性では、インフリキシマブ、トシリズマブなどの生物学的製剤を使用します。
ステロイド薬による治療が開始されたら、自己調節することなく、根気良く治療を続けることが大切です。 また、ステロイド薬を中止できない場合には、骨粗鬆症などの副作用にも注意するべきでしょう。