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長期的な治療計画 |
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関節リウマチは、関節局所の治療や、痛み止めなどの一時的な対症療法ではなく、全身的な、長期的に計画さえた治療が必要になります。
治療の原則は、薬物療法、リハビリテーション、手術療法、ケアの四本柱になります。患者さんの病気の重症度、日常生活での不自由度などを相互的に判断して行います。
治療の中心は薬物療法で、関節の炎症を抑え、関節の破壊の進行を防ぐことが目的です。炎症を抑える抗炎症薬、リンパ球の活性化を抑える抗リウマチ薬の2種類の薬が、おもに用いられます。 |
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抗炎症薬 |
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抗炎症薬は、疼痛や腫脹の緩和を目的とした、補助療法として用いられます。
シクロオキシゲナーゼU選択性があり、消化管、腎障害が比較的少ないセレコックスというセレキコシブや、モービックというメロキシカムが用いられます。 |
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ステロイド薬の使用条件 |
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最強の抗炎症薬はプレドニンなどの副腎皮質ステロイド薬です。しかし、骨粗鬆症など多くの副作用があるため、使用は控えます。
全身症状をともなう激しい関節炎で抗リウマチ薬の効果が発揮されるまでの間、抗リウマチ薬の効果が無効の症例、社会的背景のために鎮痛を必要とする場合のみ、副腎皮質ステロイド薬が短期間使用されます。 |
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抗リウマチ薬 |
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抗リウマチ薬は、免疫異常の改善、関節炎、関節破壊の進行抑制を目的とした、関節リウマチの根本治療で、治療の中心となる薬です。
治療は発症から3ヶ月以内の早期に開始することが推奨されています。
治療効果が明確な標準的治療薬は、リウマトレックスやメトレートなどのメトトレキサートです。
アラバのレフルノミド、アザルフィジンENのサラゾスルファピリジン、プログラフのタクロリムスも、国内外で用いられています。
人によって効果も異なり、いろいろな副作用もあるため、その人にあった薬を選ぶ必要があります。服用している薬の効果、副作用については、十分に説明を受け、自分でも注意するようにしましょう。 |
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発症早期に治療を受けることが大切 |
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関節の破壊は、発症から2年以内に急速に進行します。
アメリカリウマチ学会の治療方針では、発症から3ヶ月以内に抗リウマチ薬を開始し、3ヶ月の使用で効果がなければ変更するか、他の薬を併用します。
発症早期からの的確な治療を行うことで、苦痛から解放される患者さんは増えています。 |
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抗サイトカイン療法 |
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標準的治療法のリウマトレックスでは、週3カプセルを3ヶ月以上服用します。効果が不十分な場合、生物学的製剤が用いられます。
生物学的製剤とは、ヒトの体の中にある蛋白質を使って作る、バイオ医薬品のことです。
比較的安全性が高く、病気の原因をピンポイントで攻撃してくれる薬です。
病気の原因となっているサイトカインであるTNF-α、IL-6を標的として作られた生物学的製剤は、画期的な効果をもたらしてくれます。
抗サイトカイン療法は、体内で活性化したリンパ球などを直接抑え込みます。 |
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生物学的製剤 |
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関節リウマチに使用されるバイオ医薬品は、TNF-αを標的とするレミケードというインフリキシマブ、エンブレルというエタネルセプト、ヒュミラというアダリムマブがあります。IL-6を標的とするものには、アクテムラというトシリズマブがあります。
サイトカイン阻害薬はサイトカインの働きを抑える薬で、皮下注射や点滴注射で使用します。
この他にも、多くの薬剤が治療効果を調べる治験段階にあります。 |
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抗サイトカイン療法の効果 |
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抗サイトカイン療法では、抗リウマチ薬のメトトレキサートと併用することで、70%〜80%の患者さんは痛みや腫れがなくなり、炎症反応などの検査成績も正常化し、臨床的寛解を得ます。
関節破壊の進行はほぼ完全に抑えることが可能です。早期に使用すれば身体機能は回復し、以前と同様の日常生活が送れるまでに回復します。
アメリカでは抗サイトカイン療法によって、脳卒中や心筋梗塞の発症率が下がり、寿命が延びたという報告もあります。 |
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抗サイトカイン療法の効果 |
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サイトカイン阻害薬は免疫機能を抑えるため、感染症やその他の副作用に対する注意が必要なこと、値段が高いことなどの問題があります。
これまで膨大な報告に基づいて作成された治療指針に沿って適正に使用すれば、深刻な問題はほとんど起こりません。
副作用を的確に管理することができる医師や施設で、治療を受けることが大切になります。 |
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リハビリテーション |
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関節の動く範囲と筋力を保つため、リハビリテーションも必要です。そのためのリウマチ体操というプログラムもあります。
変形の予防、関節保護のため、装具が必要です。頸椎(けいつい)のソフトカラー、足底板、その他にも多くの自助具があります。 |
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手術 |
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薬物療法やリハビリテーションによる治療にも関わらず、関節の障害が残り、手術によって関節の機能や日常生活の改善が期待できる場合、手術が検討されます。
人工関節置換術、滑膜切除術、手指の腱断裂の手術、足趾(そくし)の手術、頸椎の固定術などが行われます。
特に人工関節の場合、痛みのために歩行できなかった患者さんでも、ほとんど普通に歩行できるようになります。
リウマチの患者さんはたくさんの関節に障害があり、内臓の病気を合併している場合もあるため、手術する時には慎重に決定します。 |