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急性心膜炎


急性心膜炎の概要は?

急性心膜炎のおもな症状

 

発熱
発汗
倦怠感
体重減少
胸痛
息切れ

しゃっくり
しわがれ声

症状が似ている病気

 

胸膜炎
自然気胸
肺塞栓
狭心症
急性心筋梗塞
解離性大動脈瘤

起こりやすい合併症

 

胸膜炎
慢性化


急性心膜炎ってどんな病気?

心膜の炎症

 

心膜炎 心膜は心臓を覆っている膜のことで、心膜に起こる炎症です。
 細菌やウイルスによる感染症、膠原病、リウマチ熱、川崎病、心臓手術後などが原因になります。
 心膜液が増加して貯留することが多く、心膜液が明らかな滲出性心膜炎と、心膜液の溜まらない乾性心膜炎があります。
 急速に、心タンポナーデという症状が進行し、生命に危険が及ぶことがあります。迅速な診断が必要な病気です。


心タンポナーデとは?

2つの膜からなる心膜

 

心臓 心臓は、心臓表面を直接覆う臓側心膜(ぞうそくしんまく)と、心臓を縦隔(じゅうかく)や胸腔(きょうくう)から隔てる壁側胸膜(へきそくきょうまく)によって構成されています。
 臓側心膜と壁側胸膜はの間の心膜腔(心嚢)があり、生理的に15ml〜20mlの心膜液・心嚢液(しんのうえき)が存在します。心嚢液は、心臓の動きを円滑にする潤滑油の働きをしています。

心膜液が溜まる

 

 心タンポナーデとは、過剰に液体が貯まることによって、心臓の拡張が極度に制限され、心拍出量が減少し、血圧低下やショックを引き起こす病態のことを言います。
 心膜液が溜まる速さによって、数百ml程度でも心タンポナーデに陥ることがあります。緩やかに溜まる場合は、1リットル以上貯まっても、心タンポナーデを起こさないこともあります。

すぐにドレナージする

 

 心タンポナーデを起こしている場合、すぐに、チューブを挿入して貯留液を排液するドレナージを行う必要があります。


急性心膜炎の原因は?

多様な原因

 

 心膜炎を起こす原因は、多様でさまざまです。

 急性心膜炎・心膜液貯留の原因 
特発性 原因不明
感染性 ウイルス性、結核性、細菌性など
膠原病 全身性エリテマトーデス、リウマチ熱など
悪性腫瘍 肺ガン卵巣ガンなど
甲状腺機能低下症(粘膜腫)
尿毒症 腎不全、慢性透析
心筋梗塞後 ドレスラー症候群、急性心筋梗塞後心破裂
解離性大動脈瘤の心嚢内破裂
心不全
外傷性
放射線照射後、放射線治療後
心臓手術後、薬剤
その他

 

おもな原因

 

原因 原因のわからない特発性も、しばしば存在します。
 ウイルスなどの感染による原因が、多くを占めます。炎症は心膜だけにとどまらず、心筋炎を併発することもしばしばみられます。
 特発性やウイルス性心膜炎は、風邪様症状で、胸部症状が先行することがあります。
 ウイルスでは、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、インフルエンザウイルス。細菌では、肺炎球菌、ブドウ球菌、結核菌などが原因となります。
 結核や肺ガンなどの悪性腫瘍、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患が、原因となることもあります。

急性心膜炎の症状は?

胸の痛み

 

症状 前胸部から肩や首にかけて、走るような、刺すような痛みを感じます。
 この場合、狭心症、解離性大動脈瘤などの鑑別が必要になります。
 心膜炎の場合、体位によって症状が変化し、仰向けで寝た時、呼吸や咳が強くなります。上半身を起こして座っている時や、前かがみになると、軽くなる特徴があります。赤ちゃんの場合、横にすると機嫌が悪くなります。

発熱や呼吸困難

 

 発熱、呼吸が浅くなり呼吸困難が現れることもあります。
 咳、痰、筋肉痛、体重減少、全身倦怠感などがみられる場合もあります。

心タンポナーデ

 

 心膜腔に貯留液が大量に貯まると、心臓が外から圧迫されるため、血圧低下などの重い状態になります。
 心タンポナーデになっていると、血圧低下、意識レベルの低下など、ショック症状が現れます。
 生命にかかわる病態なので、早急に貯留液を取り除く必要があります。

心筋炎・心膜心筋炎

 

 心筋にまで炎症が波及すると、心膜心筋炎と呼ばれます。

その他の症状

 

 心臓が硬く厚くなって心臓の拡張が妨げられる収縮性心膜炎、肝臓が張れたり、腹水が溜まったり、浮腫・むくみが起きたりすることもあります。


急性心膜炎の診断は?

聴診器

 

診断 胸部を聴診すると、独特な心膜の擦れる心膜摩擦音(しんまくまさつおん)を聴取できることがあります。
 心臓摩擦音は一時的に表れることも多く、心膜液の増加にともなって、消失する場合もあります。

心電図

 

 心電図検査では、広範な誘導でST部分の上昇がみられます。
 心嚢液(しんのうえき)が溜まっていると、低電位を示すことがあります。

エックス線検査

 

 胸部エックス線検査では、心拡大がみられます。

血液検査

 

 風邪・感冒様症状に続発する場合、心筋炎の検査と同様に、血液検査を行います。
 白血球の増加、CRPの上昇、赤沈の亢進などの炎症所見がみられます。
 ウイルス検索を行うと、炎症所見が認められることがあります。

既往歴

 

 悪性腫瘍の病歴、結核の既往歴などが、原因を特定する上で重要になります。
 ツベルクリン反応も、原因特定の参考になります。

心エコー検査

 

 心嚢液貯留の程度は、心エコー検査(超音波検査)で、もっとも重要な検査です。心膜腔という心臓を覆っているスペースに貯留液が溜まっていることで、容易に検査することができます。
 心膜液貯留が少量であったり、ほとんど認められない場合、心エコー検査だけでは診断ができません。
 心膜液を穿刺(せんし)し、性状、悪性細胞の有無などを検査し、原因特定に活用します。塗抹培養による、細胞の同定も行います。
 アデノシンデアミナーゼ活性は、結核の補助的診断にはとても有効です。


急性心膜炎の治療法は?

おもな治療法は3つ

 

治療 症状が軽度であっても、入院して安静を保ち、原因を探る検査を行います。
 炎症に対する治療、原因疾患に対する治療、心タンポナーデに対する治療の、3つの治療を行います。原因によって、治療法は異なります。
 収縮性心膜炎では、硬く厚くなった心膜を剥がす心膜切除術と呼ばれる手術が必要になることもあります。

心タンポナーデ

 

 細菌性心膜炎は、一般的に重症化し、心タンポナーデになることがしばしばあります。
 心タンポナーデを起こしている重症の患者さんには、治療と原因特定のため、チューブを挿入して心嚢液を廃液するドレナージが必要になります。心膜切開術を行うこともあります。
 排出した貯留液から、ウイルス性、細菌性、結核性、悪性腫瘍などの原因診断も併せて行います。
 再貯留を防ぐため、抗ガン剤、抗生物質を注入し、心膜を癒着させることもあります。

薬物療法

 

 治療は、抗炎症薬などを使った、対症療法を行います。
 ウイルス性では、非ステロイド系消炎鎮痛薬が治療のメインとなります。細菌性では、強力な抗生物質の使用が必要になります。
 細胞診で悪性細胞が見付かった場合、抗ガン薬を心嚢内に投与し、心膜の癒着を図ることがあります。
 結核が原因の場合、肺結核に準じた抗結核薬を6ヶ月間、内服します。
 収縮性心膜炎への移行を予防するため、短期的にステロイド薬を併用することもあります。自己免疫疾患に由来する場合も、ステロイド薬を使用することがあります。

収縮性心膜炎

 

 収縮性心膜炎は、自然治癒することはなく、軽度の場合は運動制限や塩分制限、生活指導、利尿薬の投与による対症療法を行います。しかし、治療の基本は外科的治療になります。早期診断と、早期治療が重要になります。
 硬く厚くなった心膜を剥がす心膜切除術・心膜剥離術と呼ばれる手術が必要になることもあります。
 十分な剥離ができれば、血行の改善、症状の改善がみられます。心不全、腎不全、高度石灰化、不完全な剥離では、手術後の改善に悪影響を与えます。

予後

 

 原因疾患によって、予後は異なります。
 ほとんどは、完全治癒しますが、再発、長引き、収縮性心膜炎になることもあるので、注意が必要です。
 特発性心膜炎の予後は良好で、多くは約1ヶ月で完治します。しかし、時に再発することがあります。
 結核性心膜炎では、収縮性心膜炎への移行に注意する必要があります。


急性心膜炎かなと思ったら?

循環器科へ

 

専門医 胸の痛みがある場合、循環器専門医に相談するようにしてください。
 肺ガン、結核、膠原病など、全身疾患に合併して起こる場合、他の科の医師と連係をとりながら治療を行います。

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