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巨大結腸症・ヒルシュスプルング病



巨大結腸症・ヒルシュスプルング病の概要は?
おもな症状
  頑固な便秘と著しい腹部膨満
似ている病気
  胎便性イレウス
先天性腸管閉鎖
腸管回転異常症
起こりやすい合併症
  S状結腸の捻転
腸閉塞
腸管壊死

巨大結腸症・ヒルシュスプルング病ってどんな病気?
腸の運動
  イメージ画像 腸は、食べ物、便、胃腸の中に分泌された消化液を、肛門の方向へ運ぶ蠕動運動(ぜんどううんどう)を行っています。
 この運動は、脳の神経からの指令と、腸の壁にある腸自体の神経によってバランス良く調節されています。
先天性と後天性
   巨大結腸症では、腸の壁にある神経節細胞が機能せず、腸がうまく動くことができず、ギュッとしぼんだままの状態になり、その口側の腸が張ってしまう病気です。
 腸閉塞(ちょうへいそく)の一種でもあります。先天性巨大結腸症(ヒルシュスプルング病・腸管無神経節症)と、習慣性、心因性、症候性便秘、炎症、腫瘍、癒着による二次的な後天性巨大結腸症とに分類できます。
先天性巨大結腸症・ヒルシュスプルング病
   先天性巨大結腸症・ヒルシュスプルング病は、約5,000回に1回の分娩で発生します。男児が女児の3倍、多いとされています。
 先天性巨大結腸症の約80%は、S状結腸より肛門側で神経の欠損がみられます。まれに全部の大腸に及ぶこともあります。
後天性巨大結腸症
   後天性巨大結腸症の場合、治療方針を決めるために、便秘に起因するのか、炎症、腫瘍、癒着による狭窄に起因するのかの鑑別が必要になります。

巨大結腸症・ヒルシュスプルング病の原因は?
遺伝的要因か?
  イメージ画像 先天性巨大結腸症・ヒルシュスプルング病の原因として、いくつかの遺伝子情報の異常が深く関わっていることが明らかにされつつありますが、十分に解明できたわけではありません。
成長過程が途中で止まる
   消化管の神経節細胞は、胎生5週に食道の壁内から下方へ伸びていきます。仙尾部(せんびぶ)からは直腸部に神経節細胞が移動します。この過程が途中で止まるため、神経節細胞の存在しない部分が腸にでき、蠕動運動が起こりません。
 直腸下部〜S状結腸にかけて起こることが多いですが、下行結腸(かこうけっちょう)や、まれに結腸全体、さらには小腸全域にわたって起こることもあります。
後天性巨大結腸症では
   機能的巨大結腸症と、器質的巨大結腸症とに分類されます。
 大腸壁内の神経束は正常なのですが、習慣性、心因性、症候性便秘が原因で二次的に巨大結腸を示すものを、後天性機能的巨大結腸症といいます。炎症、腫瘍、癒着による狭窄によって起こるものを後天性器質的巨大結腸症といいます。

巨大結腸症・ヒルシュスプルング病の症状は?
新生児期に発症
  イメージ画像 多くは先天性巨大結腸症で、新生児期に発症します。
 出産後24時間たっても胎便(たいべん)の排出がありません。おなかが張り、嘔吐を繰り返し、哺乳能力が弱い状態になります。浣腸をすると、爆発的な排便が起こります。排出される便は宿便で、悪臭がします。
 こうした症状から、多くは生後1週間以内に気付かれます。
死亡することも
   気が付かずに放置されてしまうと、口から栄養を補給することができず栄養障害を起こし、嘔吐によって塩分が失われるために体内の塩分バランスも崩れてしまいます。
 吐物を肺に吸い込んでしまうと、重い肺炎になります。
 腸管の拡張のため隣接臓器が圧迫され、食欲不振、咳、チアノーゼ、浮腫、排尿障害を起こします。貧血なども起こり、全身障害を合併します。おなかが張るために呼吸がうまくできなくなり、死に至ることもあります。
後天性巨大結腸症は軽症
   後天性巨大結腸症で器質的な疾患を除けば、乳児期以降に発症する場合、症状は軽度です。頑固な便秘、おなかの張りにとどまることがほとんどです。

巨大結腸症・ヒルシュスプルング病の診断は?
臨床症状から
  イメージ画像 頑固な便秘と、著しい腹部膨満が特徴です。先天性で小児期、思春期以降に発症することもあります。
直腸指診
   先天性では、直腸内は空虚で、その口側に糞便が貯留します。
 後天性機能的では、直腸に便を触れます。
エックス線検査
   腹部単純エックス線検査では、腸閉塞の像がみられます。結腸内に多量のガス像が見られ、横隔膜が挙上されています。
 精密検査としては、肛門から腸の中に造影剤を入れてエックス線撮影をする注腸造影検査や、直腸の内圧を測定する検査を行います。直腸肛門内圧測定をすると、内肛門括約筋が緩む直腸肛門反応がみられません。
直腸生検
   確定診断には、直腸の組織を一部とって顕微鏡による生検を行い、神経節細胞がないことを証明する必要があります。
 直腸粘膜生検を行いアセチルコリンエステラーゼ染色をすると、活性を示す神経線維束の異常増殖がみられます。
区別の必要な病気
   巨大結腸症と区別する病気には、生まれながら肛門や腸が閉塞している鎖肛(さこう)、先天性腸管閉鎖症、腸が腸の中にはまり込んでしまう腸重積などがあります。
巨大結腸症・ヒルシュスプルング病の治療法は?
先天性巨大結腸症では手術が必要
  イメージ画像 治療には専門的な手術が必要となります。
 人工肛門を増設して、そこから排便させます。人工肛門を作った3ヶ月〜6ヶ月後に、神経節細胞のない部分を摘出して、正常部分の腸管を肛門部と繋ぐ手術を行います。神経のない腸の部分が短い場合、人工肛門を作らずに摘出手術をすることもあります。
 最近は腹腔鏡手術による根治手術が行われるようになってきました。
 根治手術後の予後は良好ですが、将来的に肛門が機能しなくなって人工肛門になることもあります。
手術を行うまでの間
   根治手術は、ある程度の発育を待ってから行われます。
 それまでは、点滴栄養、肛門拡張、坐薬、浣腸などで状態を保つことになります。
機能的巨大結腸症は内科的治療
   まず便通を整えることです。症状の軽い時は、食事は必ずしも制限する必要はなく、食物繊維の多いものをとるようにします。便秘の食事療法を参考。
 排便の習慣をつけるために腹部のマッサージをします。規則的な浣腸や洗腸も効果があります。副交感神経刺激剤を投与することもあります。

巨大結腸症・ヒルシュスプルング病かなと思ったら?
小児科を受診
  イメージ画像 小児科を受診するようにしましょう。小児科領域では有名な病気です。手術は小児外科という特殊な診療科で行われます。
 経過とともに一般状態が悪化していきます。特に新生児では外科的治療を行わないと、不幸な転帰をとることになってしまいます。保存的な治療を行っている場合、腸内容物の排泄が十分でないと、急性腸炎イレウスを合併するので注意が必要です。
後天性巨大結腸症では
   浣腸によって症状が改善されるため、まず浣腸を試してみるのも良いでしょう。
 しかし、一時的に改善されたからといって、放置しておいてはいけません。必ず十分な検査を受けるようにしましょう。
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