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治療の基本は手術療法 |
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乳ガンに対する基本的な治療法は手術ですが、その補助療法として、抗ガン剤による化学療法やホルモン剤による内分泌療法、局所治療の放射線療法などがあります。 |
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乳房切除術 |
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かつては、乳房全部、大胸筋・小胸筋の胸の筋肉、腋の下のリンパ節すべてを切除する胸筋合併乳房切除術(きょうきんがっぺいにゅうぼうせつじょじゅつ)がもっとも多く行われてきました。しかし、術後の胸の変形、腕のむくみ、しびれ、運動機能の低下などが問題となり、1990年(平成2年)前後から胸の筋肉を切除しないか、一部だけを切除する胸筋温存乳房切除術(きょうきんおんぞんにゅうぼうせつじょじゅつ)がもっとも多く行われるようになりました。
現在では、胸筋合併乳房切除術は、進行した乳ガンでない限り行われていません。 |
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部分切除術 |
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早期の乳ガンなら、乳房の一部や4分の1を切り取る円状乳房部分切除(えんじょうにゅうぼうぶぶんせつじょ)、扇状乳房部分切除(せんじょうにゅうぼうぶぶんせつじょ)などの乳房温存手術が行われています。この場合、術後に残った乳腺に対して、放射線治療などの補助療法が追加されます。補助療法により、乳房切除術と比べて遜色ない治療成績が得られるようになりました。
最近は乳ガンの手術の縮小化が進んでいますが、乳房切除と乳房部分切除は、半々くらいの割合です。 |
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リンパ節郭清 |
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以前なら乳がん手術で腋の下のリンパ節のある程度の範囲を取る腋窩リンパ節郭清が標準治療として行われてきましたが、最近では縮小手術としてのセンチネルリンパ節生検法が多くの施設で、早期乳ガンに対して行われるようになってきました。
センチネルリンパ節は、腫瘍からのリンパ流を最初に直接受けるリンパ節です。多くの場合、腋の下のリンパ節の中に存在します。このリンパ節は1個〜数個存在し、これを調べて顕微鏡で転移の有無を調べることで、それ以上の腋窩リンパ節郭清が必要かどうかを判断します。
通常の腋窩リンパ節郭清により起こることがある患部のある側の手のむくみやしびれ感など、縮小手術で軽減すると考えられます。病院によって取り組み方法が異なるので、良く説明を受けておきましょう。 |
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乳房再建術 |
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乳ガンの手術と同時に、切除手術によって欠損した部分に、自分の背中や腹部の脂肪と筋肉を移植し、乳房を復元する同時、または二期的乳房再建術が積極的に行われることもあります。かつてのシリコンなどの人工物と異なり、新たな乳ガン発生の懸念はありません。 |
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手術後の補助療法 |
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乳房温存手術の場合、残った乳腺の中に、手術前の検査ではわからなかった目に見えないわずかなガン細胞が残されていることが考えられます。そのガン細胞を撲滅するために、術後の放射線療法が多く行われています。
閉経の前と後で使用薬剤が異なりますが、ホルモン感受性のある乳ガンを抑えるホルモン剤を使った内分泌療法があります。
ホルモン感受性がない、あるいは進行した乳ガンの場合、抗ガン剤を使った化学療法が行われます。 |
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治療後の妊娠 |
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乳ガンは女性ホルモンとの関係が深く、特にエストロゲンの影響を受けると言われています。妊娠すると、エストロゲンが急激に増加し、ガン再発の危険度が高くなることがあります。そのため再発の危険が高い術後2年〜3年間、補助治療中は、妊娠は避けた方が良いでしょう。
まったく妊娠不可能というわけではないので、担当医に相談してみましょう。 |
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再発 |
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乳ガンは術後5年以上経過してからの再発もめずらしくないため、治療成績は10年生存率で計算します。 |