そらいろネット > 家庭の医学 > 感染症による病気 > 蟯虫症・ぎょう虫症
肛門周囲の痒み 神経症
肛囲皮膚炎・肛囲湿疹
小児に多くみられる寄生虫症ですが、大人にも感染します。大人では母親に多くみられます。 衛生状態が良くなったため、線虫感染症は減少しましたが、国内でも珍しくない病気です。寄生虫症の中では、もっとも頻度の高い病気です。 ヒトからヒトへの感染も起こるため、家族内や保育所内などで、集団感染していることもあります。
蟯虫は盲腸やその周辺に、頭部を粘膜に付着させて寄生します。 オスは体長約2.5cm、メスは体長約1cmになります。 オスの寿命は約2週間、メスの寿命は約2ヶ月と考えられています。 体色は白色で、体の前端と後端は鋭く尖っています。
交尾をしたメスの体内で卵が十分に成長すると、メスは住み家としている盲腸から離れてます。 夜中に肛門から外に這い出してきて、肛門の周囲に卵を生み付け、体内に戻ることなく、そのまま死んでしまいます。約1万個の卵を1時間ほどかけて産卵します。 卵は1ヶ所にまとまって産み付けるのではなく、何ヶ所にも分散して産み付けます。卵を産み尽すまで、産んでは移動し、産んでは移動を繰り返します。
ヒトの体内に飲み込まれた卵は、小腸で幼虫になり、成長しながら盲腸へ下りてきて、成虫になります。 卵を飲み込んでから、約3週間で成虫になり、約50日で産卵できるまでに成長します。
蟯虫は、深夜になると肛門付近に産卵します。 蟯虫の卵は、産卵後数時間以内には感染可能な幼虫包蔵卵に成長します。 そのため、指、衣類、寝具などに付着して、感染源となります。痒みを伴うため、掻いた手に卵が付着し、周囲の物に触ることで、他物にも付着し、そこから他人の口へ入って感染します。 同じ布団で寝起きしたり、密接な接触のある集団内では、感染が広がります。
小児の場合、お尻を掻いた指をそのまましゃぶると、指に蟯虫の卵が付着し、感染がひどくなります。
感染源の多くは、保育園や幼稚園などの集団生活をしている場所です。 感染した子供が家庭に持ち帰り、家庭内で感染が広がる傾向があります。
寄生している蟯虫の数が少ない場合、無症状のことが多いです。 メスが産卵のために這い回り、ピン状の尾を支えにして動き回るため、肛門周囲に強い痒みを感じます。 特に小児では、痒みのためにお尻を激しく掻いて細菌感染の原因になったり、肛門周囲の皮疹、粘膜のただれ、女の子では膣炎が起こることもあります。 寝不足から、睡眠障害、注意力散漫、学力低下、夜泣き、指しゃぶり、喧嘩しやすいなど、神経症につながることもあります。
消化器症状はほとんどありませんが、蟯虫は盲腸に寄生しているため、虫垂炎の原因になることもあります。 この他にも、腸壁の肉芽腫形成(にくげしゅけいせい)、腹膜炎などを起こします。
蟯虫は腸の中では卵を産まないため、便を検査しても卵は発見できません。 肛門周囲に産み付けられた卵を検出するためには、セロハンテープ法という検査を行います。
セロハンテープ法の検査は、朝起きてすぐに、布団を出る前に、肛門に粘着性のあるセロハンテープを貼り付けて卵を付着させます。それを顕微鏡を使って、卵を見付けます。 蟯虫の産卵は毎日あるわけではないので、日を変えて2回に分けて行うか、3日連続して検査を行います。
コンバントリン(パモ酸ピランテル)という駆虫薬(くちゅうやく)を内服すれば、治癒します。
蟯虫は病原性の低い寄生虫ですが、発見されたら家族内で一斉に治療することが基本となります。 環境を介して経口感染するため、家族も蟯虫症の可能性があり、家族全員で治療を行わないと、再発することがあります。 保育園、幼稚園での集団感染もみられるため、集団駆虫が必要です。
普段から爪を短く切っておく、手洗いを良くする、寝具や室内を清潔に保つようにしましょう。下着やシーツからも感染するので、こまめに洗濯して清潔を心掛けてください。床、畳、トイレなども掃除しましょう。 特に、食事の前には手洗いを敢行しましょう。