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40度近い特有の発作熱 貧血 脾腫(ひしゅ)
インフルエンザ 腸チフス
脳性マラリア 急性腎不全 肺水腫
熱帯地方・亜熱帯地方に広く蔓延していて、患者数の多い病気です。年間3億人〜5億人もの人が感染し、毎年、150万人〜300万人もの人が死亡しているといわれています。その多くは5歳以下の小児です。 かつて、日本でも瘧(おこり)と呼ばれるマラリアの流行がありました。現在では日本やアメリカなどの先進国での流行はありません。
近年、熱帯諸国との交流が盛んになるにつれて、現地で罹患して苦しむ人が増えてきています。 また、国内に持ち込まれる輸入マラリアが増加しています。
熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫の4種類が病原体です。いずれも単細胞の寄生虫であるマラリア原虫による赤血球の感染症です。 この原虫は、ハマダラカという蚊に刺されることによって媒介され感染します。まれにですが、輸血による感染や、感染者の使った注射器の再利用による感染、胎盤を通しての先天感染もみられます。
熱帯熱マラリア以外の3種類の経過は良好で、死亡することは滅多にありません。 熱帯熱マラリアの経過は悪性で、日本でも時々、死亡例が発生します。
マラリア原虫に感染した蚊に刺されると、原虫は肝臓へ行って増殖をし、1週間〜数週間後で成熟して赤血球に侵入し、赤血球の中でさらに増殖し、やがて感染した細胞を破裂して原虫が放出されると激しい発熱があります。四日熱マラリア原虫の成熟体は、血流に数ヶ月〜数年にわたってとどまってから症状を起こすことがあります。 良性マラリアでは、悪寒戦慄。 熱帯熱マラリアでは悪寒、カゼのような前駆症状とともに高熱を発し、頭痛、四股通、口渇感をともなって、1時間〜数時間続きます。しかし、大量の発汗とともに、解熱します。
発熱発作は、発病当初は定型的ではありません。 発病数日後からは、三日熱と卵形マラリアでは48時間ごとに発熱します。四日熱では72時間ごとに発熱します。熱帯熱マラリアでは、不規則に発熱するか、高熱が持続されます。
発熱発作が反復するたびに、赤血球が破壊されて、貧血が起こるようになります。脾腫もみられるようになることが、マラリアの特徴です。 悪性の熱帯熱マラリアでは症状が重く、嘔吐、吐血、黄疸がしばしばみられます。すみやかに適切な治療を施さないと、脳性マラリア、急性腎不全、肺水腫などの致命的な合併症を併発する危険性があります。 中でも脳性マラリアは非常に危険な合併症で、高熱、頭痛、眠気、せん妄、錯乱、けいれん発作、昏睡を起こします。乳児や幼い小児、妊婦に多く起こります。
マラリアの疑いがあれば、血液検査を行います。数回の検査が必要になることもあります。 血液サンプル中に原虫が確認されれば診断は確定します。マラリア原虫の種類によって治療法、合併症、経過の見通しなどが異なるのため、マラリア原虫の種類も調べます。 熱帯熱マラリア原虫による感染症は緊急事態であり、ただちに診察と治療を開始する必要があります。
早期の適切な治療により、必ず治り、再発も防ぐことができる病気です。 クロロキン、ファンシダール、キニーネ、メフロキン、ハロファントリンなどで発熱発作を解消させます。 三日熱マラリアと卵形マラリアは、肝臓内で休眠状態となり成熟した原虫を周期的に血流に放出するため、周期的に再発します。プリマキンで再発を防止する根治療法を行います。 熱帯熱マラリアと、四日熱マラリアには、再発の原因となるヒプノゾイトと呼ばれる虫体が肝細胞内に形成されないので、根治療法の必要はありません。
最近では、クロロキンや、ファンシダールが効かない薬剤耐性を持った熱帯熱マラリアが熱帯地方各地に拡がっています。この場合、キニーネとテトラサイクリンの併用療法や、メフロキン、ハロファントリンによる治療が有効です。
もし少しでも、マラリアの可能性があるようでしたら、必ず病院に行き、診察を受けてください。素人療法は非常に危険です。
媒介蚊のハマダラカは、昼間は休止し、夕方から朝方にかけて吸血する習性を持っています。 そのため、夜間の外出をできるだけ避け、蚊帳や虫除け剤を用いるなどの工夫が必要となります。日本人は蚊に刺されることに慣れているため鈍感になってしまいますが、熱帯地方では注意が必要です。
やむを得ず、感染の危険性の高い地域に行く時は、一定量の抗マラリア薬を定期的に服用して発症しないようにする予防内服もあります。 この場合、医師と相談をして、薬剤の選択を適正にし、過不足のない正しい予防内服を行う必要があります。
マラリア用のワクチンは、まだ実験段階にあります。