そらいろネット > 家庭の医学 > 感染症による病気 > トキソプラズマ症

トキソプラズマ症


トキソプラズマ症の概要は?

おもな症状

 

先天性感染では中枢神経系障害
後天性感染ではほとんどが無症状

起こりやすい合併症

 

 エイズや、免疫不全患者の日和見感染では、トキソプラズマ脳炎や、脳膿瘍(のうのうよう)を起こすことがあります。


トキソプラズマ症ってどんな病気?

原虫感染症です

 

イメージ画像 世界中の自然界に広く分布する人畜共通の原虫感染症です。大部分が不顕性感染です。
 日本では、成人で20%〜30%の人が感染していて、加齢とともに感染率が高くなる傾向があります。フランスでは生肉を食べる食習慣があるため、85%近くの人が感染しています。
 発症者は10%程度です。


人獣共通感染症・人畜共通感染症とは?

ヒトと動物とに感染する病気

 

イメージ画像 自然な状況下で、ヒトと脊椎動物のと間で伝播する病気、あるいは感染症のことです。
 人獣共通感染症、人畜共通感染症、動物由来感染症などと呼ばれています。

200種以上

 

 病気の種類は、全世界で200種以上、日本国内でも60種以上あるとされています。
 ヒトに感染する病原体は1415種あると報告されています。そのうち61%にあたる868種が、ヒトだけではなく他の動物にも感染することが知られています。
 人獣共通感染症の33%は、ヒトとヒトとの間で伝播することが知られています。多くの人獣共通感染症は、ヒトに感染したあと、ヒトの間で流行するようなことはありません。

感染経路

 

 動物に咬まれたり、動物の排泄物や体液に触れる・吸い込むなどして感染します。汚染された肉や乳製品、水や土壌を介して経口的に感染することもあります。
 蚊、ダニ、ノミなど、節足動物に刺されて感染する場合もあります。

新興感染症

 

 これまでに知られていなかった感染症は、新興感染症と呼ばれます。そのうちの75%は、人獣共通感染症だといわれています。
 新興感染症の多くは、ごく限られた地域で、病原体とその自然宿主の動物との間で感染のサイクルが形成されていたものです。それが、森林伐採などによる土地利用の変化、発展途上国の都市化、人口急増、航空輸送の発展、食料流通の変化、気候変動などが絡み合い、新興感染症が突然出現します。場合によっては、全世界へと拡大することもあります。

今後も警戒が必要

 

 新たに出現した感染症が、ヒトとヒトとの間で大きな流行を起こすことが警戒されています。有名なものでは、種の壁を超えてヒトに感染するようになった感染症はエイズです。エイズの病原体は、現在では自然条件下では動物に伝播しなくなっています。
 食品を介する人獣共通感染症は、被害規模が大きくなるので対策が必要です。
 重症化することもなく、ヒトからヒトへと伝播することのない人獣共通感染症では、個人レベルでの常識的な衛生管理を行えば問題になることはありません。


トキソプラズマ症の原因は?

さまざまなところから感染します

 

イメージ画像 トキソプラズマ・ゴンディという原虫が病原体で、ネコ科の動物が終宿主となります。人間を含む多くの動物が中間宿主となります。
 人間には初感染妊婦から胎児への先天性感染、食肉中の嚢子やネコの糞便中に排出されるオーシストの経口摂取による後天性感染など、ざまざまな形で新入します。
 ネコにとっても不顕性感染で、ほとんどの場合、発症しません。ネコ免疫不全ウイルスによるネコのAIDS(後天性免疫不全症候群)などのために免疫機能が低下し中枢神経系、眼、消化器等の異常や流産・死産がネコのトキソプラズマ症として出現することがあります。
身近な生き物図鑑:身近な猫図鑑


トキソプラズマ症の症状は?

先天性感染

 

イメージ画像 妊娠の数ヶ月前、あるいは妊娠中に初めてトキソプラズマに母親が感染する結果、先天性感染が起こります。娠前の6ヶ月以上前では,母親がトキソプラズマに感染しても,胎児への影響ありません。
 先天性感染の場合は、流産、早産、または感染児を分娩することがあります。
 感染児のおもな症状は、中枢神経系の障害に基づく、網脈絡膜炎(もうみゃくらくまくえん)、脳水腫(のうすいしゅ)、脳内石灰化(のうないせっかいか)と、精神運動機能の発達遅延です。発熱、貧血、肝腫、脾腫、リンパ節肥大などが現れることもあります。
 母親を治療することによって、先天性のトキソプラズマ症の発生を減らせるので、正確で迅速な診断がとても重要です。
 赤ちゃんに感染する確率は60%程度で、発症する確率は1%未満だそうです。

後天性感染

   健康な人の後天性感染の場合は、ほとんどが感染しても無症状のまま経過します。発症率は10%程度です。
 大量感染や、免疫能力が低下している時の感染では、髄膜脳炎(ずいまくのうえん)、心筋炎肺炎、リンパ節炎、網脈絡膜炎(もうみゃくらくまくえん)を起こすことがあります。通常は、リンパ節が腫れたり、インフルエンザに似た症状が出る程度です。
 最近は、エイズや免疫不全患者の日和見感染では、壊死性脳炎(えしせいのうえん)、脳膿瘍(のうのうよう)に進展する場合もあります。

日和見感染とは?

日和見感染

 

イメージ画像 感染は、原因となる病原体がヒトの体内に侵入し、増殖することで起こります。しかし私たちの周囲の環境には多くの微生物が生息し、腸管内を始めとして体内にも多くの常在菌を保有しています。
 ヒトの体内では、感染を防衛する仕組みが上手く働いているため、感染を防いでいます。この仕組みを一般的に免疫と呼びます。免疫が上手く働いている状態では、体内の微生物は抑え込まれ、大人しくしています。しかし免疫機能が衰えてくると、毒の弱い病原体でも、体内で増殖し感染を起こすことがあります。
 免疫機能の低下した状態で、弱毒の病原体によって起こる感染症を日和見感染と呼びます。

免疫と病原体

 

 免疫はさまざまな仕組みによって成り立っています。大別すれば自然免疫と、獲得免疫の2つがあります。
 自然免疫は好中球(こうちゅうきゅう)、マクロファージ、補体(ほたい)などが働き、病原体が体内に入ってきてもすぐに対応でき、どんな種類の病原体にも広く対応しています。
 獲得免疫はリンパ球がおもに働き、特定の病原体に効率よく対応しますが、初感染の場合は早い対応は難しいという側面を持っています。獲得免疫は、抗体を利用する液性免疫と、感染している細胞を攻撃する細胞性免疫に分類されます。
 免疫機能が低下すると、免疫の中のどの部分が障害を受けるかにより、感染を起こしやすい病原体の種類も異なります。
 肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などに対しては、好中球、マクロファージなどによる自然免疫と抗体による液性免疫が重要です。
 ウイルス、真菌、結核菌などに対しては細胞性免疫が重要で、HIV感染症や臓器移植後は、細胞性免疫の低下により、サイトメガロウイルス感染、カリニ肺炎、消化管カンジダ症、肺結核などの感染を起こす確率が高くなります。
 先天性の免疫不全によって免疫機能が低下している場合、小児期から何度も感染を繰り返したり、重症の感染に陥ったりします。

治療法

 

 抗菌薬を使って感染している病原体を抑え込むことが重要になります。しかし日和見感染は免疫不全状態の上に成り立つ感染症のため、免疫グロブリンという抗体を投与したり、G-CSFという白血球を増加させる薬を使用するなど、免疫機能を高める工夫も必要になります。
 免疫不全を起こす元となる病気を改善しなければ、感染症を起こす確率は高くなってしまい、治療も困難な場合が多いのが現状です。


トキソプラズマ症の治療法は?

さまざまなところから感染します

 

イメージ画像 治療には、ピリメサミンと、サルファ剤、またはアセチルスピラマイシンとの併用療法が効果的です。
 トキソプラズマ症を予防するためのワクチンはありません。


トキソプラズマ症の予防法は?

先天性感染を防止

 

 重要なのは、母子感染による先天性感染を防止することです。
 トキソプラズマ非感染妊婦と、ネコとの接触は避け、十分に加熱されていない肉は食べないことです。
 また、胎児や新生児に影響を及ぼす主な感染症には、風疹伝染性紅斑・りんご病、サイトメガロウイルス感染症、トキソプラズマ症があります。

すでに感染している人は?

 

 すでに感染している女性が妊娠した場合、抗体が産生されているので、胎児に先天性感染を起こす危険はほとんどありません。
 ほとんど症状が見られないか見られても軽微なことから、通常では免疫の働きが体の中に残ったトキソプラズマを抑え込んでしまうので、それほど心配する必要はありません。

ネコの感染予防法は?

 

 完全に室内で飼い、外に出さないこと。フードは市販のキャットフードを与えること。


言葉の意味

不顕性感染

 

 『ふけんせいかんせん』と読みます。
 病原菌などに感染したにもかかわらず症状が現れないことをいいます。抗原抗体反応で抗体ができていることから感染したことがわかります。無症状感染、潜在感染、サイレント・インフェクションなんて言ったりもします。

メインコンテンツ
 家庭の医学
 ・身近な植物図鑑
 ・身近な昆虫図鑑
 ・身近な野鳥図鑑
 ・身近な貝殻図鑑
 ・身近な生き物図鑑
 ・ベランダ園芸
 ・三浦半島観光地図
 ・無料で塗り絵
 ・ゲーム情報局
 ・日記
 ・コミュニティー
スポンサードリンク

日本におけるトキソプラズマ症
感染症対策 花粉対策 N95マスク
寄生虫のひみつ ムズムズするけど見てみたい「はらのむし」たちの世界 (サイエンス・アイ新書)
寄生虫のひみつ ムズムズするけど見てみたい
本・ノンフィクション・教養・サブカルチャー

  感染症による病気  
レジオネラ症・在郷軍人病 そらいろネットホーム マラリア
Copyright そらいろネット(ちーず。) All right reserved