そらいろネット > 家庭の医学 > 感染症による病気 > 風疹・三日ばしか
軽度の発熱 顔面から始まる発疹 耳後部・頸部・後頭部のリンパ節腫脹
麻疹(ましん)・はしか 猩紅熱(しょうこうねつ) 伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)・りんご病 突発性発疹 伝染性単核球症・キッス病
関節炎 紫斑病 脳炎
トガウイルス科に属する風疹ウイルスによる急性感染症です。発疹、リンパ節腫脹、発熱の3つが主要な徴候です。普通は軽症ですが、まれに血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)や、脳炎を合併することがあります。 妊娠初期の女性に発症すると、奇形児の先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんが生まれる可能性が高いと言われています。
3年〜15年の間隔で流行し、春〜初夏にかけてよくみられます。 感染しても発病しない不顕性感染の割合が高く、25%〜50%程度と言われています。 一度、自然に感染すれば、一生免疫が続くと考えられています。
発疹が現れる前後の約1週間の患者さんの飛沫(ひまつ)を介して感染します。伝染力は、麻疹(ましん)、水痘(すいとう)より弱いと言われています。
風疹ウイルスに感染後、14日〜21日の潜伏期間の後に、発熱と共に全身に淡い発疹が現れます。多くは潜伏期は16日〜18日間です。 初発症状は発疹で、桃紅色の小斑状丘疹(しょうはんじょうきゅうしん)のものが多く、融合することは少ないです。まず顔面に現れ、すぐに全身へと広がります。 普通は3日程度で消失し、麻疹(ましん)・はしかのように発疹の跡が長く残ることはありません。 一般的にその症状から、「三日ばしか」とも呼ばれています。
発熱は麻疹のように高熱が続くことは少なく、微熱程度で終わることも多くあります。発疹と共に現れて、2日〜3日で解熱します。 耳後部、頸部(けいぶ)、後頭下部のリンパ節が腫れることも特徴です。発疹が消えてからも数週間にわたって続くことがあります。
好発年齢は5歳〜15歳ですが、成人になってから発症することもあります。 普通は数日で治癒する病気です。3,000人〜5,000人に1人の割合で血小板減少性紫斑病、4,000人〜6,000人に1人の割合で急性脳炎といった合併症を併発することがあります。 感染しても症状の現れない人が、約15%存在します。発熱、発疹、リンパ節腫脹がすべて揃わない場合もあります。 成人では5%〜30%の患者さんに関節炎をともなうことがありますが、ほとんどが一過性です。発疹が消えてから発症し、女性に多い傾向があります。
妊娠初期の女性が風疹にかかると、出産児が先天性風疹症候群(CRS)になることがあります。 妊娠2ヶ月以内の女性が風疹にかかると、白内障、難聴、先天性の心臓病である動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)、肺動脈狭窄(はいどうみゃくきょうさく)、心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)、心房中隔欠損(しんぼうちゅうかくけっそん)などを2つ以上持って産まれてくることが多いとされています。
妊娠3ヶ月〜5ヶ月に感染した場合でも、難聴が多くみられます。 そのほかにも、子宮内での発育が遅い、網膜の病気、緑内障、小頭症(しょうとうしょう)、髄膜炎、精神運動発達に遅れがある、肝臓や脾臓(ひぞう)が腫れる、血小板減少性紫斑病などの症状が赤ちゃんにみられる場合があります。
溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)による発疹、典型的でない場合の伝染性紅斑などとの区別が必要になります。 確定診断には、検査室診断が必要になることも少なくありません。ウイルスの分離が基本ですが、通常は行われず、血清診断が中心になります。麻疹や水痘と違い、症状や所見だけで診断することの難しい病気のひとつです。 急性期と回復期の抗体価で4倍以上の上昇がみられる場合、または急性期に風疹に特異的なIgM抗体を検出する方法がよく用いられます。
風疹ウイルスに効く特異的な治療法はないため、対症療法になります。 発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛薬を用います。 予防として弱毒生ワクチンが実用化され広く使用されていますが、先進国ではMMR(麻疹、おたふく風邪、風疹)混合ワクチンとして使用している国がほとんどです。
先天性風疹症候群(CRS)に対するウイルス特異的な治療法はないので、女性は妊娠する前にワクチンによって風疹に対する免疫を獲得すること、社会全体で風疹ワクチンの接種率を上げることで風疹の流行そのものを抑制し、妊婦が風疹ウイルスに曝露されないようにすることが重要です。 風疹が流行すると人工妊娠中絶が増加することもすでに報告されているため、ワクチン接種率を上げることが急務です。 風疹ワクチンは風疹の罹患や流行を防止する目的で行われますが、最大の目標は妊婦が先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんを産まないようにすることにあります。成人女性が風疹ワクチンの接種を受ける場合、接種後2ヶ月は確実に避妊することが大切です。
子供の場合は、かかりつけの小児科を受診しましょう。成人の場合は、内科、あるいは皮膚科を受診しましょう。 学校保健法では第二種伝染病に定められているため、紅斑性の発疹が消えるまでは出席停止となります。幼稚園や学校はお休みです。 妊娠している女性を先天性風疹症候群(CRS)から守るためにも、可能な限り接触しないように努力することが必要です。