そらいろネット > 家庭の医学 > 感染症による病気 > アニサキス症
刺身を食べた後の激しい腹痛
虫垂炎 腸閉塞 胆嚢炎 胃・十二指腸潰瘍
病名を間違えられることが多い病気ですが、「アニキサス症」ではありません。正しくは、「アニサキス症」です。
アニサキス症は、イヌ糸状虫症(いぬしじょうちゅうしょう)、イヌ回虫症(いぬかいちゅうしょう)、顎口虫症(がくこうちゅうしょう)と同様、幼虫移行症のひとつです。 身近な生き物図鑑:身近な犬図鑑
アニサキスは回虫の仲間で、成虫はクジラやイルカなどの海棲哺乳類(かいせいほにゅうるい)の消化管に寄生しています。海水中に放出された虫卵はオキアミの体内で感染幼虫にまで発育し、これが海中の食物連鎖によってさまざまな種類の魚を経て人に感染します。 身近な動物図鑑:イルカ アニサキス幼虫とテラノバ幼虫は、イカ類、サバ、アジ、イワシ、ニシン、タラ、カンパチなどの内臓表面や筋肉内に寄生しています。市販のサバなどでも、高頻度で内臓(肝臓)の表面に幼虫がとぐろを巻いているのが見えることがあります。 身近な貝殻図鑑:貝を持たない軟体動物 身近な魚類図鑑:マアジ 身近な魚類図鑑:カタクチイワシ
感染経路は、ヒトはこれらを生食して感染します。長さ2cm〜3cmの幼虫がヒトの胃壁や腸壁に潜り込んで症状を引き起こします。 感染する場所によって、胃アニサキス症と腸アニサキス症に分類できます。 国内でも毎年多くの感染発生が報告されています。
人に寄生しても成虫まで発育することはありません。 幼虫は胃や腸管の粘膜に潜り込み、急性腹症やイレウスの原因となります。 まれに消化管から逸脱して、腹腔内に好酸球性肉芽腫(こうさんきゅうせいにくげしゅ)を作ることもあります。
新鮮な海産魚類を食べて3時間〜4時間後、突然、激しい腹痛、吐き気、嘔吐に襲われます。悪心、嘔吐を伴う腹痛で、周期的に起こります。蕁麻疹が起こることもあります。 半日以上から、長い時は1週間くらいたって腹痛に見舞われることもあり、この時は胃ではなく腸に虫が浸入していると考えられます。
一部の人には、蕁麻疹のような発疹や痒みが現れることがあります。このような症状は、アニサキスに対するアレルギー反応だと考えられています。 いわゆるサバアレルギーの人を調査してみたところ、原因はサバではなくアニサキスだったという報告があります。
胃アニサキス症であれば、内視鏡で虫を確認してつまみ出すことができます。 しかし腸アニサキス症では虫を見付けるのは困難なため、エックス線検査や超音波検査で小腸を調べます。診断が困難なため、場合によっては開腹手術を受けることもあります。
まれに、虫が腹腔や胸腔、さらには他の臓器にまで入り込んで、イヌ回虫症と同じような症状を起こすことがあります。 このような場合は、抗体検査が有効です。
消化管粘膜を貫通して腹腔内に逸脱したり、肝臓などの臓器に侵入したりして肉芽腫を作ると、ガンと誤診されてしまうことがあります。 まったく症状がなく、内視鏡検査で幼虫が偶然に発見される人もいます。
胃アニサキス症の場合、内視鏡で虫をつまみ出した瞬間、嘘のように痛みが解消されます。複数の幼虫が同時に寄生していることもあります。 アニサキスは人体中では約1週間で死んでしまうため、虫を摘出できなくても対症療法だけで治癒します。
虫が腸管から外に出て症状を起こしている場合は、メベンダゾールという駆虫薬を内服します。
腸に寄生した場合、腸壁が厚くなり、腸管の通過障害を起こします。この場合には、手術で病変部位を摘除します。
アニサキス症の発症は、たいていは夜中です。 新鮮な海産魚類を食べて3時間〜4時間後に、急におなかが痛くなったら、消化器内科専門の医院か、消化器内科の当直医師のいるような総合病院を受診するようにしましょう。
重症になると緊急を要する他の病気と区別できなくなるため、内視鏡専門医と消化器外科医のいる総合病院に行くのが理想的です。
アニサキス幼虫は酢漬けでは死なないので、注意が必要です。 冷凍にも比較的強く、マイナス20℃以下で24時間以上保存しなければ死にません。
幼虫は熱に弱く、70℃の熱湯中では、数秒で死滅してしまいます。