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細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎の概要は?

おもな症状

 

高熱
悪寒(おかん)
頭痛
髄膜刺激症状・ケルニッヒ微候


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎ってどんな病気?

急激に現われる症状

 

イメージ画像 発熱、激しい頭痛、悪寒(おかん)などの症状が現われます。一般的には発症後24時間で、症状はピークに達します。
 早期診断と、早期治療が重要な病気です。予後は不良で死亡例もあり、後遺症を残すことも多い病気です。
 急性化膿性髄膜炎(きゅうせいかのうせいずいまくえん)と、細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)は、呼び方が異なるだけで、同じ病気です。

細菌性と無菌性

 

 髄膜炎には、細菌性髄膜炎と、無菌性髄膜炎とがあります。細菌性髄膜炎には、髄膜炎菌によって起こる髄膜炎菌性髄膜炎と、その他の細菌によって起こる細菌性髄膜炎があります。


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎の原因は?

原因となる細菌

 

イメージ画像 乳幼児に良く起こる病気ですが、年齢によって起因菌が異なります。
 3ヶ月未満の赤ちゃんでは、大腸菌、B群連鎖球菌(びーぐんれんさきゅうきん)が起因菌となります。3ヶ月以降では、インフルエンザ菌(ほとんどがb型:Hib)が起因菌の多くを占めるようになります。成人では、肺炎球菌、髄膜炎菌が起因菌の頻度が高くなります。そのほか、黄色ブドウ球菌、リステリア菌、腸球菌などがあげられます。
 基幹病院では年間200人〜300人の患者数が報告されていますが、全国ではこの何倍もの患者さんが発生していると考えられます。肺炎球菌性髄膜炎はHib髄膜炎より死亡率が高く、予後も不良です。

髄膜炎菌性髄膜炎

 

 アフリカ、ヨーロッパ、アジア、北南米を含む世界各地で流行が見られますが、日本国内の患者さんは年間10人前後です。
 髄膜炎菌には多くの血清型がありますが、A、B、C、Y、W-135が多く、A、B、Cで全体の約90%以上を占めます。アフリカではA型が多く、アフリカ中央部の髄膜炎ベルトと呼ばれる地域ではW-135型が多いです。イスラム教徒のメッカ巡礼で感染発症する人も多いです。

感染経路

 

 感染経路としては、以下のようなものが考えられます。
   菌血症による血行性経路
   中耳炎副鼻腔炎などの隣り合う感染巣からの直接侵入
   心・肺など、他臓器の感染巣からの直接侵入
   脳外科手術後・脳室シャトルなどの院内感染


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎の症状は?

急性発症

 

イメージ画像 症状は急性発症します。
 激しい頭痛、悪寒、嘔吐、38℃〜40℃の発熱。項部(こうぶ)・うなじの硬直、股や膝を直角に曲げた状態から膝を伸ばそうとしてもまっすぐに伸ばせないなど、髄膜刺激症状が現われます。
 発熱では、高熱が持続します。
 錯覚・幻覚をともなう軽度の意識障害のせん妄、脳神経症状もあらわれます。痙攣や運動失調をともなうこともあります。

新生児期の症状

 

 新生児期では、低体温、無呼吸、易刺激性、不機嫌といった非定型的な症状だけの場合もあります。乳児では、大泉門(だいせんもん)が膨隆(ぼうりゅう)します。
 急激に症状が進行し、心肺停止、ショック状態で病院に搬送されることもある重症疾患です。

合併症や後遺症

 

 硬膜下水腫(こうまくかすいしゅ)、硬膜下膿瘍(こうまくかのうよう)、脳膿瘍、脳梗塞を合併することもあります。
 水頭症(すいとうしょう)、てんかん、精神運動発達遅滞、難聴を残すことがあります。


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎の診断は?

血液検査と画像検査

 

イメージ画像 血液検査では、赤沈の亢進、白血球増加を示します。
 腰椎穿刺による髄液検査も行ないます。髄液所見は、圧の上昇、混濁、時に膿性、蛋白の増加、糖の著明な低下(髄液糖/血糖値比が0.3以下)がみられます。急性期の髄液細胞は、桿状(かんじょう)・好中球(こうちゅうきゅう)の多核白血球がみられます。経過とともに、リンパ球、単球に置き換わります。
 CT、MRIでは、脳浮腫・血管炎による脳梗塞(のうこうそく)・膿瘍(のうよう)・水頭症などを起こすこともあります。

髄液検査

 

 髄液から細菌が証明されれば、診断は確定的となります。まず、髄液沈渣(ずいえきちんさ)の塗抹標本(グラム染色)において、起炎菌の迅速な検出が重要となります。
 培養、起炎菌を突き止める同定、抗生剤感受性テストが必要になります。
 迅速診断として、髄液、血清を用いた主要菌の菌体成分に対するラテックス凝集法などが一般化しています。


脳脊髄液・脊髄液の検査法

髄膜炎・脳炎の診断

 

 脳、脊髄になんらかの障害が生じた場合、直接的、あるいは間接的に、髄液所見に反映される可能性が大きくなります。
 髄液の異常は、髄膜炎・脳炎の診断と鑑別・見分けのために行ないます。

腰椎穿刺

 

イメージ画像 一般的に針を刺して行なう腰椎穿刺(ようついせんし)によって行なわれます。
 患者さんは側臥位となり、両手で膝を頭に抱え込むような体位をとります。もし介助するときは、この姿勢をきちんと保つことが重要です。
 穿刺部位は、左右の腸骨綾上縁を結ぶヤコビー線と、脊柱が交差する点を目標にして、第3腰椎〜第4腰椎間か、第4腰椎〜第5腰椎間で行ないます。皮膚消毒と局所麻酔後、棘間靭帯(きょくかんじんたい)、硬膜(こうまく)、くも膜下腔へと針を入れていきます。
 外観の観察、初圧および終圧、細胞数、蛋白、糖、血糖値の測定を行い、疑われる疾患に応じて種々の検査を追加します。

怖かった・・・

 

 僕も何度か脊髄液検査を受けたことがあります。
 背中で行なわれているために、何をやっているのか見えませんが、膝を抱えて横になって寝たまま動いてはいけないという姿勢が、とても不安で心細かったです。
 とても怖い経験でした。


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎の治療法は?

抗生物質と解熱鎮痛剤

 

イメージ画像 急性期には発熱、激しい頭痛に悩まされることが多く、適切な抗菌薬の投与が大切です。
 体温、脈拍、血圧、呼吸などのバイタルサインの監視が行なわれ、鎮痛・解熱薬が投与されます。

抗生物質の選択

 

 起因菌が同定されるまでは、第3世代セフェム剤(セフトリアキソン、セフォタキシム)に、アンピシリンを併用します。投与量は成人では、1日4g〜6gを点滴投与します。
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌などが増えているため、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌にはバンコマイシン、ペニシリン耐性肺炎球菌にはカルベニンなどが用いられます。

そのほかの治療薬

 

 ほかにも、グリセロールやマンニトールなどの脳圧降下薬、抗痙攣薬、鎮痛解熱薬の投与が行なわれます。

予後

 

 予後は一般的に悪く、肺炎球菌では15.3%、Hibでは3.8%、髄膜炎菌性髄膜炎では7.5%が死亡するといわれています。
 発症年齢、抗生物質投与までの時間、細菌の種類、病気の進行速度によって予後は変化しますが、後遺症が約30%の患者さんに残ります。


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎の予防法は?

ワクチン接種

 

イメージ画像 国外では10年前からワクチンが使用されていましたが、日本でも2008年末から「Hib(ヒブ)(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)」に対するワクチンが発売されました。
 通称は「ビブワクチン」と呼ばれ、生後2ヶ月〜5歳未満が対象になります。任意接種のため有料となります。重症化するまでの時間が早いため、ワクチンでの予防が推奨されます。しかし2009年現在では、ワクチン不足により接種が困難な状態が続いています。
 肺炎球菌に対しては、2歳未満にも接種可能なワクチン(小児用7価ワクチン)は、治験が終了し承認申請されていますが、2009年現在ではまだ承認されていません。


細菌性髄膜炎・急性化膿性髄膜炎かなと思ったら?

すぐに診察を

 

イメージ画像 急性発症で、高い発熱、激しい頭痛、悪寒などがみられる場合には、細菌性髄膜炎が疑われます。
 緊急に、入院施設のある神経内科、内科、小児科を受診しましょう。
 基本的に入院治療になるので、入院も考慮に入れておきましょう。

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