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90%は治療可能 |
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小児の急性リンパ性白血病は、現在では約90%が治療可能になっています。そのうち70%以上は、化学療法のみで治ります。残りの20%弱は、骨髄移植をはじめとする造血幹細胞移植を併用して治療します。 |
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リスク分類 |
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造血幹細胞移植は、化学療法よりも晩期障害が高頻度で起こるため、化学療法では治りにくい患者さんに限られます。このため、初めて発症した時に、病気の治りやすさを的確に予測して、長期生存予測率と、治療毒性のバランスを考えた治療法を選択します。
このような治療の選択には、主要な予後因子を組み合わせたリスク分類が用いられています。
小児急性リンパ性白血病のリスク分類 |
項目 |
リスク因子 |
リスク群 |
細胞系統 |
B前駆細胞型
T細胞型
混合型
分類不能型 |
年齢と白血球数でことなる
高危険群
超高危険群
長高危険群 |
年齢 |
1歳未満
10歳以上 |
超高危険群(特殊型として治療)
高危険群(B前駆細胞型の場合) |
初診時白血球数(/μl) |
1万以上(2万または5万以上) |
高危険群(B前駆細胞型の場合) |
染色体異常 |
t(9;22)=Ph1
t(4;11)
11q23異常
t(1;19)
低2倍体 |
超高危険群(特殊型として治療)
超高危険群
高危険群
高危険群
超高危険群 |
髄外浸潤 |
中枢神経系など |
高危険群 |
治療反応性 |
初期プレドニゾロン反応不良
14日目骨髄で芽球>25%
33日目骨髄で非寛解 |
超高危険群
リスクを上げる
超高危険群 |
微小残存病変(MRD) |
33日目骨髄で1%以上残存
90日目骨髄で0.01%以上残存 |
超高危険群
超高危険群 |
以上のリスク因子を持たない場合 |
標準危険群 |
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予後因子 |
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急性リンパ性白血病では、初診時の年齢、白血球数、白血病細胞の染色体や遺伝子異常による細胞遺伝学的特徴、治療反応性、微小残存病変(MRD)が重要な予後因子となります。 |
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リスク群の分類 |
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標準的治療で治癒が期待できるタイプの標準危険群、標準的治療では治りにくく強化した治療が必要なタイプの高危険群に区別して、治療強度を変えていきます。
さらに、強化した化学療法でも治りにくいタイプは超高危険群として、造血幹細胞移植を併用した治療法が適用されます。乳児白血病の70%を占めるMLL遺伝子再構成陽性の急性リンパ性白血病、フィラデルフィア染色体陽性白血病、治療を始めて1ヶ月たっても寛解に到達しない例などが超高危険群に該当します。 |
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4つの治療法 |
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急性リンパ性白血病の治療は、寛解導入療法、中枢神経系予防療法、強化療法、維持療法で構成されます。 |
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寛解導入療法 |
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寛解とは、正常に血液が造られていて、骨髄中の白血病細胞が5%未満の状態をいいます。寛解導入療法を行うと、1ヵ月後には95%以上の患者さんが寛解に到達します。
おもに使用する薬剤は、ビンクリスチン(オンコビン)、ステロイドホルモン(プレドニン)、アントラサイクリン(ダウノマイシン、アドリアマイシン、テラルビシン)、L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)です。 |
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中枢神経系予防療法 |
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中枢神経の脳と脊髄(せきずい)は、白血病が浸潤(しんじゅん)しやすい場所になります。これに対して、特別に予防療法を行うことが、白血病を治すのに重要であることがわかっています。
その方法は、脳脊髄腔内メトトレキサート(メソトレキセート)注入(髄注)、メトトレキサート大量療法、頭蓋放射線照射などがあります。頭蓋放射線照射はもっとも確実な方法ですが、成長障害、神経内分泌障害、二次性ガンなど、晩期障害の原因となるため、最近では中枢神経系で再発しやすい一部の症例を除いて、行われなくなりました。 |
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強化療法 |
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強化療法には、地固め療法と、再寛解導入療法とがあります。強化療法はいずれのリスク群においても有効ですが、その強度と期間はリスクによって異なります。
地固め療法は、シクロホスファミド(エンドキサン)、シタラビン(キロサイド)などの薬剤によって、寛解導入療法後に残った白血病細胞を根絶することを目的としています。
再寛解導入療法は、寛解導入療法の終了から3ヶ月以降に、寛解導入療法と同じ薬剤を用いて行います。 |
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維持療法 |
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メトトレキサートと6-メルカプトプリン(ロイケリン)の内服が基本形です。
おもに通院で治療が行われますが、高リスク群では強化された維持療法も試されています。これらの化学療法の治療期間は通常は2年間〜3年間です。
ただし、造血幹細胞移植が初回寛解期に適用される場合は、強化療法に移行し、移植で治療終了となります。 |