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 小児急性白血病

小児急性白血病ってどんな病気?
血液のガン
  イメージ画像 白血病は血液のガンです。
 小児の白血病は、小児期悪性腫瘍の3分の1を占める、小児ガンの代表的な病気です。そのうちの95%が急性白血病です。
 慢性白血病と、骨髄異形性症候群(こつずいいけいせいしょうこうぐん)は、合わせても5%にしかすぎません。
急性リンパ性白血病と急性骨髄性白血病
   急性白血病のうち、4分の3が急性リンパ性白血病(ALL)です。4分の1が急性骨髄性白血病(AML)です。
 どちらにも分類できない混合型や、分類不能型の白血病も数%あります。
病気と年齢の関係
   急性リンパ性白血病は2歳〜6歳に好発します。急性骨髄性白血病では、年齢による偏りはありません。

小児急性白血病の原因は?
原因不明が多い
  イメージ画像 大量の放射線被爆や、ごく一部にウイルス感染が原因となりますが、多くの場合、原因の特定はできません。
 2007年、ドイツ連邦放射線保護庁の発表によれば、原子力発電所の近くに住む子供ほど白血病を発病する危険が高いことが分かりました。しかし、原子力発電所と発病の因果関係については、まださらに詳しく調査する必要があるとのことです。
急性リンパ性白血病の原因
   白血病も他のガンと同様に、遺伝子の傷が重なって発症することがわかっています。
 乳幼児期の急性リンパ性白血病の多くは、白血病の発症に関わる遺伝子異常が胎児期に起こることがわかっています。乳児期の急性リンパ性白血病は胎児期に白血病化しますが、幼児期の急性リンパ性白血病は、さらに生後に第二の遺伝子異常が加わって白血病になると考えられています。

小児急性白血病の症状は?
出血傾向がみられる
   発熱、顔色不良、紫斑(しはん)・鼻出血(びしゅっけつ)などの出血傾向などがみられます。正常の造血能力が損なわれているために起こる症状がメインです。
 そのほかには、骨痛、関節痛、リンパ節腫大など、白血病細胞の増殖による症状もしばしばみられます。

小児急性白血病の診断は?
白血病細胞の系統を調べる
  イメージ画像 血液検査、穿刺(せんし)か生検による骨髄検査を行います。
 また、白血病細胞の系統を明らかにするため、血液塗抹標本を特殊染色したり、細胞の免疫学的マーカー検査、染色体検査、遺伝子検査を行うなどして分類します。
急性リンパ性白血病の型
   免疫学的分類は、おもに急性リンパ性白血病にもちいられます。T細胞型、成熟B細胞型、B前駆細胞型、混合型、分類不能型に分けられます。
 染色体や遺伝子の異常による分類では、フィラデルフィア染色体陽性白血病や、MLL遺伝子再構成陽性白血病などがあります。
急性骨髄性白血病の型
   急性骨髄性白血病では、細胞系統・形態による分類であるFAB分類が用いられます。M0からM7まで、8型あります。

小児急性白血病の治療法は?
まずは化学療法
  イメージ画像 抗がん薬による化学療法が第一選択となります。
 急性リンパ性白血病と、急性骨髄性白血病とでは、有効な薬剤の組み合わせが異なるので、治療戦略も変わってきます。
難治例には骨髄移植も
   難治例や、再発例では、骨髄移植などの造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく・SCT)が治療の選択肢となります。

急性リンパ性白血病(ALL)の治療法は?
90%は治療可能
   小児の急性リンパ性白血病は、現在では約90%が治療可能になっています。そのうち70%以上は、化学療法のみで治ります。残りの20%弱は、骨髄移植をはじめとする造血幹細胞移植を併用して治療します。
リスク分類
   造血幹細胞移植は、化学療法よりも晩期障害が高頻度で起こるため、化学療法では治りにくい患者さんに限られます。このため、初めて発症した時に、病気の治りやすさを的確に予測して、長期生存予測率と、治療毒性のバランスを考えた治療法を選択します。
 このような治療の選択には、主要な予後因子を組み合わせたリスク分類が用いられています。
小児急性リンパ性白血病のリスク分類
項目 リスク因子 リスク群
細胞系統 B前駆細胞型
T細胞型
混合型
分類不能型
年齢と白血球数でことなる
高危険群
超高危険群
長高危険群
年齢 1歳未満
10歳以上
超高危険群(特殊型として治療)
高危険群(B前駆細胞型の場合)
初診時白血球数(/μl) 1万以上(2万または5万以上) 高危険群(B前駆細胞型の場合)
染色体異常 t(9;22)=Ph1
t(4;11)
11q23異常
t(1;19)
低2倍体
超高危険群(特殊型として治療)
超高危険群
高危険群
高危険群
超高危険群
髄外浸潤 中枢神経系など 高危険群
治療反応性 初期プレドニゾロン反応不良
14日目骨髄で芽球>25%
33日目骨髄で非寛解
超高危険群
リスクを上げる
超高危険群
微小残存病変(MRD) 33日目骨髄で1%以上残存
90日目骨髄で0.01%以上残存
超高危険群
超高危険群
以上のリスク因子を持たない場合 標準危険群
予後因子
   急性リンパ性白血病では、初診時の年齢、白血球数、白血病細胞の染色体や遺伝子異常による細胞遺伝学的特徴、治療反応性、微小残存病変(MRD)が重要な予後因子となります。
リスク群の分類
   標準的治療で治癒が期待できるタイプの標準危険群、標準的治療では治りにくく強化した治療が必要なタイプの高危険群に区別して、治療強度を変えていきます。
 さらに、強化した化学療法でも治りにくいタイプは超高危険群として、造血幹細胞移植を併用した治療法が適用されます。乳児白血病の70%を占めるMLL遺伝子再構成陽性の急性リンパ性白血病、フィラデルフィア染色体陽性白血病、治療を始めて1ヶ月たっても寛解に到達しない例などが超高危険群に該当します。
4つの治療法
   急性リンパ性白血病の治療は、寛解導入療法、中枢神経系予防療法、強化療法、維持療法で構成されます。
  寛解導入療法
     寛解とは、正常に血液が造られていて、骨髄中の白血病細胞が5%未満の状態をいいます。寛解導入療法を行うと、1ヵ月後には95%以上の患者さんが寛解に到達します。
 おもに使用する薬剤は、ビンクリスチン(オンコビン)、ステロイドホルモン(プレドニン)、アントラサイクリン(ダウノマイシン、アドリアマイシン、テラルビシン)、L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)です。
  中枢神経系予防療法
     中枢神経の脳と脊髄(せきずい)は、白血病が浸潤(しんじゅん)しやすい場所になります。これに対して、特別に予防療法を行うことが、白血病を治すのに重要であることがわかっています。
 その方法は、脳脊髄腔内メトトレキサート(メソトレキセート)注入(髄注)、メトトレキサート大量療法、頭蓋放射線照射などがあります。頭蓋放射線照射はもっとも確実な方法ですが、成長障害、神経内分泌障害、二次性ガンなど、晩期障害の原因となるため、最近では中枢神経系で再発しやすい一部の症例を除いて、行われなくなりました。
  強化療法
     強化療法には、地固め療法と、再寛解導入療法とがあります。強化療法はいずれのリスク群においても有効ですが、その強度と期間はリスクによって異なります。
 地固め療法は、シクロホスファミド(エンドキサン)、シタラビン(キロサイド)などの薬剤によって、寛解導入療法後に残った白血病細胞を根絶することを目的としています。
 再寛解導入療法は、寛解導入療法の終了から3ヶ月以降に、寛解導入療法と同じ薬剤を用いて行います。
  維持療法
     メトトレキサートと6-メルカプトプリン(ロイケリン)の内服が基本形です。
 おもに通院で治療が行われますが、高リスク群では強化された維持療法も試されています。これらの化学療法の治療期間は通常は2年間〜3年間です。
 ただし、造血幹細胞移植が初回寛解期に適用される場合は、強化療法に移行し、移植で治療終了となります。

急性骨髄性白血病(AML)の治療法は?
化学療法
   小児の急性骨髄性白血病も、シタラビン、アントラサイクリン(ノバントロン、イダマイシン)、エトポシド(ベプシド、ラステット)の3種類を基本薬とした強力な化学療法を行います。
 その結果、90%以上の寛解導入率と、50%以上の長期生存率が期待できるようになりました。
リスク分類
   治療技術の進歩により、急性リンパ性白血病と同様に、予後因子が明らかになってきました。
 とくに、寛解到達の有無と、急性骨髄性白血病に特異な染色体異常が、予後因子として重要視されています。
小児急性骨髄性白血病のリスク分類
項目 リスク因子 リスク群
FAB分類 M3 低危険群(特殊型として治療)
基礎疾患 ダウン症 低危険群(特殊型として治療)
染色体異常 t(15;17)=M3
t(8;21)<M2
inv(16), t(16;16)=M4Eo
t(9;11)<M4,M5
-5
-7
t(9;22)=Ph1
t(16;21)
低危険群(特殊型として治療)
低危険群
低危険群
低危険群
高危険群
高危険群
高危険群
高危険群
治療反応性 2コース後の非寛解 高危険群
以上のリスク因子を持たない場合 中間危険群
一般的治療法
   70%以上の長期生存率が期待できる低危険群は化学療法で治療を行います。40%以下の高危険群は積極的に造血幹細胞移植を併用して治療するのが一般的です。
急性前骨髄球性白血病とダウン症
   1990年代に、急性前骨髄球性白血病(きゅうせいぜんこつずいきゅうせいはっけつびょう・M3)にオール・トランス・レチノイン酸(ATRA)が有効だることや、ダウン症児の急性骨髄性白血病はM7が多く、比較的弱い治療が有効であることから、これらの病型は独自の治療戦略が立てられています。
治療期間は6ヶ月〜10ヶ月
   急性骨髄性白血病の治療は、寛解導入療法と強化療法からなり、維持療法の有用性は明らかではありません。また、中枢神経予防療法として、強化療法時に髄注が行われます。
 治療期間は6ヶ月〜10ヶ月になります。
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