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向精神薬とは?


向精神薬とは?

中枢神経に作用する薬

 

イメージ画像 向精神薬とは、脳などの中枢神経に作用して、精神の活動に効果をもたらす薬物のことです。
 おもに、精神科、神経科、心療内科などで処方されることがほとんどです。

服用に抵抗のある人が以前として多い

   精神科での薬物療法、すなわち精神的、心理的問題を薬で解決することについては、多くの人に少なからず抵抗があるものです。
 ですが病気によっては、どうしても薬物療法を行わなければ治らないケースもあります。
 また、さまざまな心の原因・心因(しんいん)による病状では、その原因がとれないことには、病状が改善しにくい場合もあります。

適切な服用で改善

 

 向精神薬を適切に服用することで精神的に余裕ができ、原因となる事柄への受け止め方を変えることができたり、問題の解決の糸口が見付かる場合もあります。
 どのような場合であっても、「気力で治せ」といった発言はその人のためにならないばかりか、病状を悪化させる要因になりえます。

抗精神病薬の処方

 

 向精神薬にはいくつかのグループに分類され、大きく抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬、睡眠薬などの分けられます。
 最近では医者からもらった薬を解説した本が多く出回っています。抗精神病薬を飲んでいる人が統合失調症だと思ってショックを受けたりすることがあります。これは精神科の臨床の実際を知らない人による記述が原因で、決してそうではありません。
 たしかに統合失調症の治療の中心は、抗精神病薬になります。しかし、抗精神病薬はうつ病や神経症にも使用します。逆に、統合失調症に他の薬を使う場合もあります。
 こうしたことは、抗うつ薬、抗不安薬などについても言えることです。


抗精神病薬とは?

幻聴・妄想・興奮状態など

 

イメージ画像 抗精神病薬は、幻聴(げんちょう)・妄想(もうそう)といった知覚や思考の異常を抑え、病的な興奮状態を鎮静させる作用があります。
 おもに統合失調症、躁病(そうびょう)、妄想などの精神病症状をともなううつ病、高齢者や手術後に起こる意識混濁(いしきこんだく)をともなったある種の興奮状態・せん妄などにも処方されます。障害の強い不安、焦燥(しょうそう)に用いるケースもあります。
 抗精神病薬は脳内のドーパミンで伝達される神経の働きを遮断することで作用すると考えられています。

抗精神病薬の種類

 

 代表的な製剤には、鎮静作用の弱いブチロフェノン系(ハロペリドール、ブロムペリドールなど)、鎮静作用の比較的強いフェノチアジン系(クロルプロマジン、ペルフェナジンなど)があります。
 他にも、最近では副作用が少なく、引きこもり、意欲低下などの陰性症状の改善に有効な非定型抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピンなど)があります。


抗うつ薬とは?

気分を持ち上げる薬

 

イメージ画像 抗うつ薬は、憂鬱(ゆううつ)で落ち込んだ気分を持ち上げ、意欲ややる気を起こさせる働きがあります。
 おもにうつ病、躁うつ病、気分変調症(きぶんへんちょうしょう)などの感情障害に用いられます。強迫性障害不安障害過食症などにも有効とされています。
 効果が現れるまでに最低でも2週間以上はかかる、じっくり効いてくるタイプの薬です。
 抗うつ薬は、ノルアドレナリンや、セロトニンで伝達される神経の両方、またはいずれか1種類の神経末端での伝達物質の取り込みを阻害することで、効果を持つと考えられています。

抗うつ薬の種類

 

 代表的な製剤には、三環系抗うつ薬(イミプラミン、クロミプラミンなど)、副作用の少ない四環系抗うつ薬(マプロチリン、ミアンセリンなど)、トラゾドン、新世代の抗うつ薬として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬・SSRI(フルボキサミン、パロキセチン水和物、セルトラリン)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬・SNRI(ミルナシプラン)があげられます。


気分安定薬とは?

躁うつ病の薬

 

イメージ画像 いわゆる「安定剤」と間違えやすいのですが、気分安定薬とは、躁とうつの波のある躁うつ病の治療薬です。波の振幅を狭めるような働きがあり、再発予防効果も持ちます。
 おもに炭酸リチウムが使用されますが、本来は抗痙攣薬であるカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムなども使用されます。
 この薬は血液中の薬物濃度を検査しながら服用します。


抗不安薬とは?

不安や緊張を和らげる薬

 

イメージ画像 不安、焦燥を鎮め、緊張を和らげる薬です。
 不安障害や、軽度のパニック症状をはじめ、さまざまな精神疾患に幅広く用いられます。ほとんどが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬です。
 高用量を長期間服用すると、依存を起こすことが知られていますが、専門医の指示のもとで適切な量を期間を守れば、問題はありません。
 抗不安薬は、抑制性神経伝達物質(GABAやグリシンなど)の作用を強め、情動に作用する脳の働きを抑制することで効果を発揮すると考えられています。

抗不安薬の種類

 

 代表的な抗不安薬に、ジアゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラムなどがあります。
 ベンゾジアゼピン系以外では、セロトニンの受容体を刺激することで効果が発揮されるタイプのタンドスピロンもあります。


睡眠薬とは?

不眠症・睡眠障害の薬

 

イメージ画像 不眠症のために使用される薬です。ですが精神疾患の多くに不眠をともなう場合が多いため、広く用いられています。
 ほとんどがベンゾジアゼピン系睡眠薬で、催眠作用の強い薬物を睡眠薬として使用しているだけです。抗不安薬と構造が似ていて、安全性も高いものが主流になっています。

睡眠薬の種類

 

 代表的な睡眠薬に、エスタゾラム、フルニトラゼパム、トリアゾラムなどがあります。


向精神薬の副作用は?

共通の副作用

 

イメージ画像 向精神薬に共通してもっともよくみられる副作用には、眠気、だるさ、便秘、口渇(こうかつ)などがあります。これらの副作用の程度は、薬によって、また量によっても異なります。
 そのため、「薬を飲むと眠くて仕事にならない」、「薬を飲むと便秘をしたり、口が渇く」、「薬を飲み始めてから、尿が出にくくなる」などといった副作用があらわれます。
 また、各薬剤によって特徴的な副作用がそれぞれにあります。
 現在、各領域で少しでも副作用の少ない薬を開発しようと、多くの研究がなされています。

抗精神病薬の副作用

 

 抗精神病薬では、身体の運動のバランスがおかしくなったり、身体が勝手に動いてしまうといった運動系の副作用がみられることがあります。これらは、ジスキネジー、パーキンソン症状などの錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)です。
 場合によって、副作用止めの薬を併用しながら服用します。

抗うつ薬の副作用

 

 抗うつ薬では、口渇、便秘、立ちくらみ、排尿障害の副作用が、他の向精神薬より強く現れます。しかも効果が現れるまでに、時間のかかる薬です。
 副作用は程度の問題で、飲み続けていくうちに軽減してくる場合もあります。どうしてもつらい場合は、医師に相談するようにしましょう。

抗不安薬・睡眠薬の副作用

 

 抗不安薬、睡眠薬のベンゾジアゼピン系の薬物は、他の薬に比べて副作用は少なく、安全性の高い薬といえます。
 しかし、鎮静作用による日中の眠気、集中力の低下、筋弛緩作用(きんしかんさよう)による筋脱力は問題になることがあります。また、作用時間の短いタイプのベンゾジアゼピン系睡眠薬(トリアゾラムなど)で、健忘(けんぼう)が起こることが知られています。


向精神薬に対する不安

悪いイメージがつきまとう向精神薬

 

イメージ画像 以前は睡眠薬といえば、バルビツール系などの依存性や安全性に問題のあるものが多く、良くないイメージが付きまとい、現在でもそのイメージは払拭されていません。
 そのため、「安定剤や睡眠薬を飲むと痴呆になるのでは?」、「睡眠薬は悪い薬」、「精神科の薬は副作用が強い」と考えている人が多く存在します。
 現在でも睡眠薬の服用が問題になることがありますが、多くの場合、過剰に服用したり、アルコールと併用するなど、乱用の結果を薬の副作用と混同されています。
 また、安定剤・睡眠薬を服用すると早くボケるといったことは、風説であって事実ではありません。

服用は専門医の指示通りに

 

 向精神薬の副作用は、薬の用法の変更、減量、中断、副作用止めの併用などの調整を専門医のもとで行いつつ服用すれば、問題にならないことの方が多いです。

精神科医へ

 

 副作用の問題、向精神薬の薬物療法の調整には、ある程度の専門的な知識が必要になります。
 軽い安定剤程度なら、どこの内科医でも処方されますが、なかなか改善しないときは専門医を受診するようにしましょう。
 精神科医による心理的なアドバイスやカウンセリングが必須なことは言うまでもありませんが、適切な薬物療法は精神科医としての腕の見せ所でもあります。


向精神薬の服用期間は?

担当医の指示通りに

 

イメージ画像 「いつまで薬を飲まなければならないのか」、「薬に頼っちゃいけない」と考え、服薬を中断し、病気の再発や悪化を招くケースがあります。
 理想としては、薬は飲まなくてすめば飲まないに越したことはありません。
 しかしあくまでも、本人の精神的な安定が第一なので、服薬を続けることに必要性と意味を担当医から聞いておくことが大切です。できるのであれば、家族も含めて十分に話し合ってください。

自己判断でやめたりしない

 

 症状によっては、月単位、年単位で、飲み続けなければならない病気もあります。
 服薬をやめられるかどうかも担当医と相談し、指示に従って、病状をみながら徐々に減らしていく必要があります。「薬の服用をやめたら少しして急に具合が悪くなった」といったことも、よくあることです。
 自己判断で急に服薬を中断すると、そのために症状が再発するだけでなく、離脱症状(りだつしょうじょう)が出ることもあります。


向精神薬をやめられない

薬がやめられない

 

イメージ画像 向精神薬に対する悪いイメージから薬を飲みたがらない人もいれば、逆に薬をやめられない人もいます。「薬を飲まないと不安でやめられない」といったケースです。
 精神症状はすっかり良くなっているのに薬が話せません。やめてしまうと、不安でつい飲んでしまう。身体的な依存とが異なり、飲めば安心するという精神的な依存になっています。
 また、「苦しくて薬を多く飲んでしまった」、「良くならないのでつらくて全部一度に飲んでしまった」というケースもあります。具合が悪いと、決められた量より多く飲んでしまう人もいます。

医師に相談を

 

 このようなケースの場合、担当医に正直に相談するようにしましょう。
 最近の薬物の安全性は高く、精神科医も危険のない処方を心掛けています。しかし、大量の場合には致命的になる場合もあります。


向精神薬の注意事項

他の診療科を受診する場合

 

イメージ画像 いくつもの診療科を受診している患者さんの場合、他の診療科から同じような向精神薬が処方されていることを知らなかったり、薬の飲み合わせによる薬物相互作用で具合が悪くなるケースもあります。
 最近では同じ病院内なら、他科の処方内容がすぐにわかることが多くなってきました。しかし違う病院の場合、他科で処方されている薬を担当医に見せるようにしましょう。

アルコール

 

 アルコールは一種の向精神作用を持つ薬物であるため、控えるようにしましょう。

仕事・車の運転

 

 向精神薬の服用中は、高所作業や、危険な作業は控えるようにしましょう。
 また、自動車の運転も控えるようにしましょう。

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