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一般的に「ひきこもり」、もしくは「社会的ひきこもり」と呼ばれますが、病名や診断名ではありません。 不登校や、就労の失敗をきっかけとして、何年もの間にわたって自宅に閉じこもり続ける青少年の状態を指す言葉です。
平成12年に設置された厚生労働省の「地域精神保護活動のあり方に関する研究班」による調査研究によると、「社会的ひきこもり」は以下のように定義されました。
6ヶ月以上自宅にひきこもって社会参加しない状態が持続している。
分裂病などの精神病ではないと考えられるもの。ただし、社会参加しない状態とは、学校や仕事に行かない、または就いていないことを表す。
事例の多くは、ほとんど外出もせずに、何年にもわたって自室に閉じこもり続け、しばしば昼夜逆転した不規則な生活を送ります。 長期化にともない、さまざまな精神症状が二次的に生じてくることがあります。対人恐怖症、およびその関連症状として自己臭症(じこしゅうしょう)、視線恐怖、醜形恐怖(しゅうけいきょうふ)。対人恐怖がこじれて起こる被害関係念慮(ひがいかんけいねんりょ)、強迫行為、心気症状、不眠、家庭内暴力、抑うつ気分、希死念慮(きしねんりょ)、自殺企図(じさつきと)などがあらわれることもあります。
ひきこもりのきっかけとしては、成績の低下、受験の失敗、友人の裏切り、いじめなど、ある種の挫折体験がみられる場合が多いです。 ですが、「きっかけがよくわからない」と述べる人が多いです。
もともとの性格傾向としては、内向性、非社交性で、いわゆる「手のかからない良い子」に多い傾向がみられます。 しかし、必ずしも決定的なものではありません。どのような家庭環境にあっても、「ひきこもり」になることはあります。
不登校とは、文部科学省の定義によると、年間30日以上の長期欠席者の中で、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により登校しない、あるいはしたくてもできない状況にある状態」とされています。
主として、小学生・中学生に対して用いられる言葉です。同様の状態は、高校生、大学生でもめずらしくありません。 かつては、「学校恐怖症」、あるいは「登校拒否」などと呼ばれていました。ですが病気や個人の問題といったニュアンスを排除するため、現在では「不登校」という言葉が使われています。
不登校、学校恐怖症、登校拒否は、病名ではなく状態を示す言葉です。実際にはその多くは治療を必要とはせず、家族や学校関係者の適切な対応によって、適切な進路選択に至ります。
一部の事例では、学校をめぐる心理的葛藤から、対人恐怖、強迫症状、抑うつ気分、家庭内暴力、自殺企図などの症状がともなう場合があります。長期化して、ひきこもりに至ることもあります。 こうした傾向が顕著な場合には、専門家による治療や支援が必要となります。
日本では1970年代から、ひきこもりが徐々に増加してきています。複数の調査によって、現在では数十万人〜百万人程度、ひきこもりが存在すると推定されています。 また、ひきこもりは日本に突出して多いと考えられており、増加の背景には社会文化的な要因も関与していると考えられます。
厚生労働省の2003年度の調査報告によれば、性別では男性が76.4%と多く、平均年齢では26.7歳となっています。前回の調査報告に比べて、高年齢化の傾向がみられています。 この調査結果に基づき、厚生労働省は引きこもり事例への対応ガイドラインを全国の保健所や、精神保健福祉センターなどに配布しています。
ひきこもり対策は、まだその端緒についたばかりです。しかし、何らかの支援や治療による対応が問題解決の上で有効だと考えられています。 統合失調症(とうごうしっちょうしょう)、うつ病、発達障害などの可能性も疑われる場合や、精神症状が顕著な場合では、医療機関への受診が必要となります。
ひきこもりの当事者は、初めのうちは必ずしも何らかの支援や治療による対応などの介入を望まないことが多いものです。このため、ひきこもりの治療・支援活動は、必然的に家族相談の比重が大きくなります。 これに加え、家族会、訪問支援活動、デイケア、たまり場などのグループ活動、希望者への就労支援など、複数の立場や部門が柔軟な支援ネットワークとして構築されることが理想的です。