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強迫性障害・OCD


強迫性障害(OCD)の概要は?

おもな症状

 

ガスの元栓は締めたか?
戸締まりはきちんとしたか?
手はきれいに洗えたか?

名前の由来

 

 英語では『Obsessive Compulsive Disorder』というため、頭文字をとって『OCD』といわれたりします。
 以前は『強迫神経症』といわれてきました。

過度なこだわりが不安に

 

 つい不安になって確認してしまうことは、誰にでも経験があると思います。
 しかし、何度確認しても不安がおさまらない状態にまでエスカレートしてしまうことがあります。このような強いこだわりが習慣的になり、日常生活や社会生活に支障をきたしてしまう心の病気が『強迫性障害』といいます。
 最近では強迫性障害に有効な薬が開発されるようになり、適切な治療を続ければ症状は改善されるようになってきました。


強迫性障害(OCD)ってどんな病気?

『強迫観念』と『強迫行為』

 

 強迫性障害の症状は、『強迫観念』と、『強迫行為』からなります。
 『強迫観念』とは、頭にこびりついて離れない考えやイメージで、不安・恐怖・不快感を引き起こすものです。振り払おうとしても、繰り返して生じてきます。
 『強迫行為』とは、『強迫観念』から生まれる不安・恐怖・不快感をやわらげたり打ち消すために行われる行為のことです。
 『強迫行為』によって抑えられた不安は一時的なものでしかなく、すぐに不安がぶり返して、再び『強迫行為』を行います。この悪循環のパターンが永遠に繰り返されてしまいます。

わかっていてもやめられない

 

イメージ画像 強迫性障害には、自分自身が抱く不快なイメージや、それを打ち消すための行為が『不合理である』とわかっているという特徴があります。『考えすぎだ』、『心配しすぎだ』、『バカバカしいことだ』と感じているにも関わらず、100%の安心を求めて、強迫行為をやめることができないのです。

外出時に戸締まりしたか気になって何度も家に戻って確認してしまう
なにかい汚染されたと不安になり手が擦り切れるまで何度も手を洗ってしまう
自分がなにか悪いことや不正なことをやりはしないかと不安になり外出できなくなる

 などの例があげられます。
 『わかっているけどやめられない』というところに、この病気の苦しさがあります。

強迫性障害(OCD)のおもな症状は?

人によってさまざまです

 

 強迫性障害の症状は人によって多種多様です。その中でも良く見られる代表的な症状をピックアップしました。

 

汚染に対する恐怖

   

 他人や周囲のものからの汚染を恐れ、洗浄行為(手洗い、シャワーなど)を繰り返します。
トイレに行った後、手にばい菌がついたと感じ、1時間以上手を洗ってしまう。
外出先でホコリや細菌がついたと思い、帰宅するとすぐに風呂場に直行してしまう。

 

何度も確認してしまう

   

 不安や恐怖から過剰な確認行為を繰り返します。
泥棒に入られないかと、戸締まりを何度も確認する。
火事が起きるのではと、火の元を何度も確認する。
本を読んでいる時、すべての行を読んでいるのか不安になり、何度も戻って確認する。

 

加害への不安

   

 自分の不注意で、他人を傷つけるのではないかと不安になります。
車の運転中の振動を『誰かを轢いてしまったのでは』と思い何度も確認をする。
お年寄りとすれ違った時、『あやまって転ばせてしまわなかっただろうか』と不安になる。

 

順序や左右対称

   

 『正しい順序』や、『左右対称』など、一定のルールを完全に守らなければならないという考えに固執してしまう。
服の着脱の順序が決まっていて、いつもと間違えると不安になったり、最初からやりなおしたりする。
常に自分なりの特別なやり方で整理整頓されていないと気がすまない。

 

その他の症状

   

 4(死をイメージする)、9(苦をイメージする)、13(13階段、13日の金曜日など)の数字を不吉に感じ、どんな行為もその数字の回数になることを避ける。
 大切な物もいっしょに捨ててしまうのではとおそれ、不要なはずのゴミを捨てることができず、部屋中がゴミだらけになってしまう。
 その他にも、色々な症状があります。


強迫性障害(OCD)の詳細は?

症状が進行すると

 

 症状が進んでくると、強いこだわりからおこる行為によって、スムーズに行動や作業ができなくなったり、不安や不快感が起こりそうな状況を避けるようになったり、生活全般にわたって消極的になっていきます。
 その結果、仕事や学校に行けない、家事ができない、電車や車に乗れない、家から外に出られない、などの日常生活や社会生活に影響が出てきます。

外に出るだけで汚染されてしまうと感じて出ることができなくなってしまう。
人を傷つけてしまうかもしれないという思いから、人間関係を遠ざけてひきこもりのような状態になってしまう。

 などといった例があげられます。

どのくらいの人がかかるのか?

 

 強迫性障害というあまり聞き慣れない名称のせいか、非常にまれな病気というイメージを持つかたが多いのではないでしょうか。しかし、実際にはそれほど特別な病気ではありません。
 アメリカ国立精神衛生研究所の調査によれば、障害有病率は1.9%〜3.0%だそうです。
 もし世界が100人の村だったら、2〜3人の強迫性障害の患者さんがいることになります。通勤電車の1両の定員は150人前後なので3〜4人、ラッシュ時には7人前後。日本全体でみたら300万人前後。
 また、発送年齢は男女ともに約20歳で、全体の65%が25歳までに発症しているそうです。

原因は?

 

 強迫性障害の原因は、いまだ解明されていません。数々の仮説はありますが、証明されたものはありません。
 強迫性障害の発症や増悪のプロセスには、複数の要因が関与していると考えられています。単純に『性格の問題』、『習慣』、『環境のせい』だけでは説明できるような病気ではありません。発症のしやすさや、増悪を促進させるような脳の機能的な問題が、強迫性障害の背景に存在している可能性があり、現在も研究が進められています。

一人で苦しまないで

 

イメージ画像 強迫性障害の人は、自分の強迫観念や強迫行為に対して不合理なものだとわかっているので、家族や周囲の人に知られ、『頭がおかしいんじゃないの?』と言われるのではないかと不安で、症状を知られないように隠そうとすることが多いようです。自分から人に相談することもできず、医療機関に行くこともできず、一人で苦しんでいることが多いようです。
 強迫性障害の治療において大切なことは、病気について正しい知識を得ることです。
 強いこだわりにとらわれてしまっている病気で、決して『頭がおかしい』わけではありません。適切な治療により治るものであると理解してください。


強迫性障害(OCD)の診察は?

早めの受診を

 

イメージ画像 強迫性障害による強迫観念や強迫行為は自分自身の性格だから仕方がないというものではありません。早期に適切な治療を行えば治る病気です。
 ただし、症状の程度や、現れ方が人によって多様で見分けにくい病気です。専門医での正しい診断を受けることをおすすめします。専門は、『精神科』、『精神神経科』になります。『心療内科』でも受診は可能です。

 

受診の目安

   

 自分自身の行為に対して「少しやりすぎかも」と思っているにもかかわらず、どんどんエスカレートしてしまうようなときは、一度専門医に受診して相談をしてみましょう。
 また、繰り返し行う行為により、1日に1時間以上費やしてしまっている場合も、強迫性障害を疑ってみる必要があります。
 家族の症状に気付く場合もあるかもしれません。そんなときは、強迫性障害かもしれないということを理解して、受診をすすめてみてください。

何度も手洗い、掃除、シャワーをしませんか?
何度も確認していますか?
追い払いたいのに追い払えなくて悩ませ続けている考えがありませんか?
毎日の活動をやり終えるのに長い時間がかかりますか?
順序正しいことや、左右対称でとらわれていませんか?

 自分や家族の行動に該当する項目があれば、一度専門医の受診をおすすめします。


強迫性障害(OCD)に似ている病気は?

混同されやすい心の病気

 

 強迫性障害に類似した精神症状は、統合失調症統合失調症、うつ病、不安障害(不安神経症)、強迫性人格障害、摂食障害広汎性発達障害など、他のさまざまな心の病気にもみられます。これらの病気と、強迫性障害の治療には共通点もありますが、異なる点も多く、専門医で早期に正しい診断を受けることが大切です。
 また、他の精神疾患と強迫性障害が合併して、複雑な症状になることもあります。

 

うつ病うつ病

   

 強迫性障害はうつ病を高い確率で合併するといわれています。その割合は、約3割にものぼります。
 抑うつ症状があるかないかがポイントになりますが、両者を関連ある病気として診断することもあります。

 

パニック障害パニック障害

   

 突然、不安発作(心臓がドキドキする、呼吸が苦しくなるなど)が起こる病気です。「また発作が起こるのではないか」というおそれが予期不安のために発作の引き金になると思われる状況や場所を避けるようになります。
 パニック障害と強迫性障害は合併しやすい病気です。

 

恐怖症

   

 恐怖症と、強迫性障害は混同されやすい病気です。
 恐怖症の人が恐れるのは、高いところや狭い場所など、特定の場所や物であるのに対して、強迫性障害の人が恐れるのは抽象的で完全に避けることが困難なことです。

 

強迫性人格障害

   

 完全主義や、極端に秩序正しさを好み、本人や周囲の人が悩まされるのが強迫性人格障害です。
 強迫性障害の患者さんが「わかっているけどやめられない」のに対して、強迫性人格障害の患者さんは「自分にとって望ましい」と感じています。両者が合併するのはまれなケースです。

 

身体疾患による症状

   

 脳炎や、脳腫瘍などの身体疾患から、強迫症状があらわれることもあります。


強迫性障害(OCD)の治療のポイントは?

焦らないこと

 

 治療を行う上で最も重要なことは、「焦らずにじっくりと」取り組むことです。
 強迫性障害は回復に向かって直線的に良くなるわけではなく、症状には波があり、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、徐々に良い方向に向かっていきます。強迫観念や不安の変化に一喜一憂しすぎないことです。
 症状が少し悪くなったからといって、あせって病院を変えたりすることは、かえって逆効果となってしまいます。根気よく治療に取り組みましょう。

用法、用量は先生の指示どおりに

 

イメージ画像 強迫性障害の薬の効果があらわれるまでには、早い人で2〜3週間、遅い場合には3ヶ月くらいかかります。だからといって服薬を自己判断で急に中断すると、症状を悪化させたり、治療を長引かせる原因になります。
 また、SSRIは副作用の少ない薬ですが、それでも悪心や嘔吐などの症状が出ることがあります。副作用があったときは、医師に相談して対策をとってもらいましょう。


強迫性障害(OCD)を支える家族のかたへ

強迫性障害を支える家族のかたへ

 

イメージ画像 強迫性障害の症状にいち早く気付き、その後の治療を支えることのできるのは家族です。そこで、家族が強迫性障害の患者さんを支えるためのポイントを紹介します。
 強迫性障害を治すためには、一緒に病気と向き合い、一緒に乗り越えていくことが大切です。

強迫性障害を理解する

 

 強迫性障害という病気についての認識を深め、強い不快感や不安にとらわれてしまった苦しみを理解することが大切です。それにより、患者さんが家族に安心して相談しやすくなるのです。

受診のすすめ方

 

 強迫性障害に気付き、受診を薦めるとき、症状を批判して説得しても、『頭がおかしくなっちゃった』と不安になって受診できなくなる場合が多いようです。
 このような場合、「疲れているみたいで心配だから、一度、病院で相談してみたら?」と、患者さんが安心できるような言い回しを工夫してください。

患者さんを責めない

 

 なぜ病気になったのか原因を追求するのは無意味なことです。患者さん自身が一番病気に困っていて、治そうと頑張っていることを理解し、ねぎらってあげましょう。

強迫行為に手を貸しすぎない

 

 患者さんの強迫行為に安易に手を貸すと、家族中を巻き込んだ複雑な強迫症状にエスカレートすることもあります。
 思いやりのある言葉で手伝えないことを説明したり、先生を交えてルールを作るなどしてみるといいでしょう。

焦らず治療をバックアップ

 

 治療には時間がかかります。患者さんが治療に焦らず取り組めるような環境作りを工夫しながら支えてください。時には外出をしたり、スポーツをするなどして気分転換も必要です。

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