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拒食 痩せ 過食 過食嘔吐
人格障害
薬物依存・アルコール依存 うつ病
食行動の異常に基づく、原因不明の難治性の疾患です。 一般的には、「拒食症」、「過食症」などとして知られています。
ダイエット、受験などの自信を失うような失敗が原因で拒食となります。 痩せが進行しても食事を摂る量が増えず、ますます痩せが進行してしまうケース。または、拒食状態がある時点から、突然と大量に食べ物を摂るようになって過食症へ移行するケースの2種類のタイプがあります。 自己誘発性嘔吐(じこゆうはつせいおうと)や、下痢など、薬物乱用をともなう場合があります。
摂食障害は、痩せていることが美しいとされる文化的な背景のある地域に多くみられます。 患者さんの約95%は女性です。思春期、青年期の女性に多いとされています。 近年では患者さんが急増しており、世界的にも大きな社会問題となっています。
一般的に慢性の経過をたどる場合が多く、症状は対人関係の問題や、社会環境のストレスに敏感に反応します。容易に再発することでも知られています。 アメリカの研究では、10年以上の経過で、治癒率は約60%です。一方で、6%〜7%が予後不良で死亡するといわれています。日本での研究報告でも、同様の成績が報告されています。 思春期、青年期の女性の疾患としては、もっとも重症な疾患のひとつです。
現在では、摂食障害の原因はわかっていません。 遺伝子の研究、脳画像解析の研究など、世界的にさまざまな視点から原因解明の研究が試みられています。
摂食障害の診断基準は、神経性無食欲症(しんけいせいむしょくよくしょう)と、神経性大食症(しんけいせいたいしょくしょう)に分類されます。 しかし、今後の研究によって、診断基準、病型分類は変わっていく可能性があります。
診断上で重要となるのは、肥満への恐怖、身体イメージの障害です。 自分が病気であると認識していることに乏しい人が多いのが特徴です。合併しやすいうつ病、人格障害と診断され、摂食障害が見逃されてしまうことも多くあります。 身体検査では、痩せ、過食、薬物乱用などの影響で、二次的なさまざまな身体障害を合併します。一方で、過食嘔吐のない制限型では、痩せの程度のわりに検査では異常があらわれず、これが一般診療科で見逃されてしまう要因ともなっています。
生命予後に直接関係する検査の異常は、低カリウム血症、低リン血症などです。
精神疾患の合併は、境界性人格障害、薬物依存・アルコール依存、うつ病などがみられます。
アメリカの摂食障害の診断基準です。DSM-W-TRを参考にしています。
年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否。 たとえば、期待されている体重の85%以下の体重が続くような体重減少。成長期間中に期待されている体重増加がなく、期待される体重の85%以下になる。
体重が不足している場合でも、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖。
自分の体重、または体型の感じ方の障害、自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、現在の低体重の重大さの否認。
初潮後の女性の場合、無月経。月経周期が連続して少なくとも3回は欠如している。 エストロゲンなどのホルモン投与後にのみ月経が起きている場合、その女性は無月経とみなされます。
現在の神経性無食欲症のエピソード期間中、患者さんは規則的にムチャ食いや、排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤・浣腸の使用)を行ったことがない場合。
現在の神経性無食欲症のエピソード期間中、患者さんは規則的にムチャ食いや排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤・浣腸の使用)を行ったことがある場合。
ムチャ食いのエピソードの繰り返し。 他とはっきり区別される時間帯に、普通の人が食べる量よりもはるかに多い食物を食べること。 ムチャ食いの期間中、食べるのをやめることができない、または多く食べているかを制御できないという感じがする。
体重の増加を防ぐため、不適切な代償行為を繰り返す。自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤・浣腸・その他の薬物の誤った使用、絶食、過剰な運動。
ムチャ食い、不適切な代償行為を、平均して少なくとも、3ヶ月間に週2回起こっている。
自己評価は、体型、体重の影響を過剰に受けている。
障害は、神経性無食欲症のエピソード期間中にのみ起こるものではない。
神経性大食症のエピソード期間中、定期的に事故誘発性嘔吐をするか、下剤・利尿薬・浣腸の誤った使用をする。
神経性大食症のエピソード期間中、絶食、過剰な運動などの不適切な代償行為を行ったことがあるが、定期的に自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤・浣腸の誤った使用はしない。
摂食障害自体の効果的な治療方法は、まだ確立されていません。 行動療法を中心とした、精神療法が中心に行われます。認知行動療法、対人関係療法の有効性がいわれていますが、過食嘔吐などの部分症状に限られています。
日本では、支持的な心理療法を中心に、家族療法、行動制限療法、認知行動療法など、さまざまな治療法が行われています。 痩せや、過食嘔吐などによる身体障害に対する身体医学療法、対処療法的な向精神薬の併用など、時期や症状によって重要な治療法となります。
病気だと意識していない人が多く、治療を受けていない人が多数存在すると考えられています。病院に行きたがらない人にも、何とか説得して病院に通院させるようにします。 摂食障害が疑われたら、精神科、心療内科で専門医を紹介してもらうと良いでしょう。