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さまざまな神経症
胸痛、動悸(どうき)、息切れ、呼吸困難、めまいなど、心臓病に良くみられる症状を示しているにも関わらず、心臓を検査しても何の異常も見付からないものを、心臓神経症といいます。 かつてはダ・コスタ症候群、神経循環無力症と呼ばれていましたが、現在は心臓神経症と呼ばれています。 心臓の病気というよりは、全般性不安障害・不安神経症のような心の病気に分類されます。
以下のような人に良くみられる病気です。
神経質な人
子供から手が離れて暇な時間ができたために自分の体の状態が気になるようになった女性
親しい人を心臓病で亡くして心臓病に対して不安感を抱いている人
心筋梗塞などの心臓病を経験したことのある人
心臓神経症の原因は、ストレス、過労、心臓病に対する不安などが考えられます。
ストレス、過労、不安感などは、心臓の働きを活発にする交感神経を刺激します。その結果、心拍数が増加し、動悸を強く感じるようになります。 一度、このような症状を体験すると、「自分は心臓病ではないか?」という不安が生まれます。その不安が徐々に大きくなるにつれて、胸痛、呼吸困難、めまいなど、より大きな症状を感じるようになってしまいます。
あの医者は本当のことを言わないのではないかと気に病んで、より大きな症状を感じるようになります。 心筋梗塞などの心臓病を経験したことによる再発の不安から、胸痛などを感じる場合もあります。 胸痛を訴えて病院を受診し、検査によって心臓病が否定された人の30%〜50%の人は、精神科専門医が診察すると不安障害と診断されるという報告もあります。
心臓神経症のおもな症状は、胸痛、動悸、息切れ、呼吸困難、めまいなどの症状を示します。 これらの症状のうち、胸痛はほとんどの患者さんが訴えます。その痛みは一見すると、狭心症(きょうしんしょう)の症状と良く似ています。しかし良く調べてみると、多くの点で違いがあることがわかります。 身内や友人の心臓病の人の話、特に死亡した人の話などを思い出して、自分もそうではないか、そうなるのではないかと心配になり、常に心臓のことが頭から離れなくなります。
心臓神経症で感じる胸痛は、「ズキズキ」とか、「チクチク」と表現されるような痛みで、痛む部分が左胸のごく狭い範囲に限られています。手で圧迫すると、痛みが強くなるという点が特徴です。 この痛みは、運動したり、興奮したりしている時ではなく、大抵は一人で静かにしている時にあらわれます。長い時は一日中続くこともありますし、逆に胸の一部を刺すようなごく短時間の痛みの場合もあります。 狭心症の胸痛は、前胸部の中央の痛みで、体を動かしたときに短時間感じる場合が多いです。
手足のしびれ、耳鳴り、頭痛、顔面紅潮(がんめんこうちょう)、息切れなど、不安から呼吸が速くなって息苦しさが増す、過換気症候群の症状を伴うこともあります。
まず一般的な心臓病の検査を行います。問診、診察、胸部エックス線検査、心電図、心エコー検査などを行い、心臓の病気の有無を判断します。心臓カテーテル検査と呼ばれる精密な造影検査が必要な場合もあります。 さらに胸膜の病気、食道痙攣、神経や筋肉の異常、頸椎症など、胸痛の原因となる病気の有無について検査をします。 これらが除外されて初めて、心臓神経症と診断されます。
胸痛発作を強く訴える患者さんで、狭心症との区別が難しい場合には、ニトログリセリン舌下錠を処方し、胸痛発作の起きたときに服用してもらいます。 ニトログリセリン舌下錠の薬の聞き具合を調べることで、診断する場合もあります。
心臓神経症の原因は、心の問題です。症状が起こる仕組みを良く説明して納得してもらうと同時に、患者さんの症状を引き起こしている原因が何であるのかを調べ、それに対するアドバイスを行います。
症状が悪い場合には、心臓の働きを抑えるβ遮断薬、気分を安定させる精神安定剤が処方されることもあります。
心臓神経症の専門医は、心療内科や、神経科、精神神経科になります。心臓の専門医から、紹介されることが多いです。 心臓神経症と診断されたら、それを信じ、次から次へとドクターショッピングをしないようにしましょう。心臓神経症とは、気長に付き合うことも大切です。
心臓に心臓弁膜症、狭心症などの器質的な病気があるわけではないので、予後は良好です。 しかし、症状がなかなか取れないのが実情です。 睡眠・休養をしっかりとって心身を休め、気分転換、仕事以外での趣味を持つことも治療に役立ちます。