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適応障害とは、職場、学校、家庭などの生活環境に不適応を生じ、不安、抑うつなどの症状を招くケースを指します。
うつ病、不安障害ほど深刻な状態は呈しておらず、比較的軽い状態といえます。 アメリカ精神医学会の診断マニュアル「DSM-W-TR」によれば、明らかなストレスに反応して3ヶ月以内に生じ、ストレスが消失してから6ヶ月以内に消失するものとされています。
適応障害の症状はとても多彩です。 不安 、抑うつ、焦燥(しょうそう)、過敏などの精神症状。頭痛、不眠、食欲不振、腹痛などの身体症状。適応障害が原因で発生する身体的な異常は、自律神経失調症、心身症とも呼ばれます。遅刻、欠勤・不登校、過剰飲酒などの問題行動があります。 そして、次第に対人関係、社会的機能が不良となり、引きこもってうつ状態になります。
42歳の男性会社員の例では、課長へ昇進したものの、業務量が倍増し、夕方になると疲労、倦怠感、憂鬱感を覚えるようになりました。 業務にも些細なミスを繰り返すようになったので、部長に相談し、いったん降格させてもらいました。 その結果、間もなくすると症状は回復しました。
36歳の専業主婦の例では、連日、帰宅の遅い夫が部下の女性と親密な仲であることが発覚しました。 夫は「もう別れた」と言うものの、疑う気持ちはなかなか拭い去ることができませんでした。ふとしたきっかけで、「また会っているのではないか」と不安になり、動悸、息苦しさを覚えるようになりました。 そこで実家の両親に相談し、結婚記念日に指輪を買ってもらうと、気持ちはだいぶ落ち着きました。
適応障害の診断には、以下に示す基準を満たすことが必要になります。そして、他の精神障害がないことが前提条件となります。 1.はっきりした心理的ストレス・社会的ストレスに対する反応で、3カ月以内に発症する 2.ストレスに対する正常で予測されるものよりも過剰な症状を示す 3.社会的または職業・学業上の機能の障害 4.不適応反応はストレスが解消されれば6ヶ月以上は持続しない
適応障害は、おもな症状によって以下の6つのケースに分類されます。
第一に環境調整が大切です。適切な援助と対処によって、不安は和らぎます。 本人が苦痛を覚えているストレスを特定し、可能な限りそれを取り除くようにします。 その際、職場の上司、学校の教師など、カギとなる人物に援助を要請することも望まれます。
不安・抑うつを伴う苦痛が強い場合には、抗不安薬や、抗うつ薬を用います。 SSRIと呼ばれる、脳内のセロトニンという精神伝達物質へ特異的に作用し、副作用の少ない抗うつ薬が良く用いられます。 症状がある程度落ち着いてきたら、本人の適応能力・対処能力を高めるようなトレーニングも望まれます。
もっとも効果的な方法は、「問題解決」です。 ストレスとなった原因を冷静に分析し、現実的で最善の方法を考えます。 根本的な解決が不可能な場合は、問題に対する本人の「認知」を修整する、精神療法を行います。 直面している問題に対して、否定的・悲観的に捉えるのではなく、肯定的・楽観的に捉えることによって、困難な状況を「試練」として乗り越えていこうという前向きな態度をもたらします。そして、困難な試練を糧にして、自分の成長・発展につなげられたならば、理想的です。
適応障害は専門医であっても、軽度のうつ病と区別がつきにくい病気です。 また、放置していると本当にうつ病になってしまうことがあります。性格が真面目で忍耐強い人ほどかかりやすいと言われています。 まずは心療内科、精神科を受診するようにしましょう。
適応障害という言葉を初めて耳にしたのは、雅子妃殿下に関するニュースではないでしょうか。 適応障害にしては、症状が長く続きすぎている気もしますが・・・。実際に適応障害で苦しんでいる患者さんもいるわけですし、宮内庁は正しい情報を発表することが必要であると思います。