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胃腸神経症・神経性胃炎


胃腸神経症・神経性胃炎ってどんな病気?

さまざまな診断名

 

イメージ画像 胃腸神経症は、上部・下部の消化管症状を強く訴えるにもかかわらず、検査をしても器質的な異常が認められない場合に用いられてきた病名です。
 胃腸神経症のほかにも、「胃神経症」、「神経性胃炎」、「神経性下痢」、「慢性腸炎」、「腹部不定愁訴症候群(ふくぶふていしゅうそしょうこうぐん)」などとも呼ばれてきた病気です。

消化管運動の機能異常

 

 胃腸神経症は消化管運動の機能異常という病態で、最近では過敏性腸症候群・IBS(Irritable bowel syndrome)、NUD(Non-ulcer dyspepsia)、FD(Functional dyspepsia)と呼ばれています。
 NUDは、「潰瘍のない消化不良」という意味です。FDは、「機能性ディスペプシア・機能性消化不良」という意味になります。


機能性ディスペプシア・FDってどんな病気?

新しい診断名

 

イメージ画像 身体に病変がみられない上腹部の不定愁訴(はっきりしない不調)は、機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia)という疾患名で診断されるようになってきました。
 最新のローマV分類による診断基準では、上部消化管内視鏡検査によって症状を説明できるような器質的疾患がなく
  ・つらいと感じる食後膨満感
  ・心窩部痛(みぞおち付近の痛み)
  ・心窩部灼熱間
 これらのうち、1つ以上が認められ、少なくとも6ヶ月以上前に診断され、最近3ヶ月間症状が続いているときに、機能性ディスペプシアと診断されるようになりました。

症状によって2つに分類

 

 機能性ディスペプシアは、症状の現れ方によって、食後愁訴症候群(PDS)と、心窩部痛症候群(EPS)の2つの症候群に分類されて診断されます。

機能性ディスペプシアの診断基準

  機能性ディスペプシアの診断基準(ローマV分類)
B1.機能性ディスペプシア
必須条件
 1.以下のものが1つ以上あること
  a.つらいと感じる食後膨満感
  b.早期膨満感
  c.心窩部痛(みぞおち付近の痛み)
  d.心窩部灼熱感(焼けるような痛み)
および
 2.胃内視鏡検査で、症状を説明できる病変がない
(少なくとも半年以上前からあり、少なくとも3ヶ月間の上の診断基準を満たす)
B1a.食後愁訴症候群
以下のうち一方、あるいは両方を満たさねばならない
 1.少なくとも週に数回、通常量の食後に、わずらわしい食後膨満感が起こる
 2.少なくとも週に数回、通常量の食事を終えることを妨げる早期膨満感が起こる
(少なくとも半年以上前からあり、少なくとも最近3ヶ月間に上の診断基準を満たす)
補足基準
 1.上腹部膨満感や食後の嘔吐、あるいは過剰なゲップが起こる
 2.心窩部痛症候群が合併してもよい
B1b.心窩部痛症候群(ESP)
以下のすべての項目を満たさねばならない
 1.少なくとも週に1回、心窩部に限局した中等症以上の痛みあるいは灼熱感
 2.間欠的な(間をおいて繰り返す)痛みであること
 3.胸部あるいは心窩部以外の腹部領域に局在しない
 4.排便や排屁により軽快しない
 5.胆嚢やオッディ括約筋障害の診断基準を満たさない
(少なくとも半年以上前からあり、少なくとも最近3ヶ月間に上の診断基準を満たす)
補足基準
 1.焼けるような痛みでも胸骨後部に発生するものではない
 2.痛みは通常、接触により誘発あるいは軽快するが、空腹時に起こってもよい
 3.食後愁訴症候群が合併してもよい

胃腸神経症・神経性胃炎の症状は?

長引く症状

 

イメージ画像 吐き気、嘔吐、上腹部のもたれや不快感、胸焼け、腹痛、下痢、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)、げっぷなど、さまざまな症状が3ヶ月以上にわたって繰り返し現れます。
 通常は、数年にわたって慢性に経過します。


胃腸神経症・神経性胃炎の診断は?

さまざまな検査

 

イメージ画像 エックス線造影検査、内視鏡検査で異常がないこと、次いで血液一般検査、便潜血反応(べんせんけつはんのう)で、胃潰瘍、胃ガンなどの病気や身体的異常がないことを確認します。
 特に中年以降では、胃ガン大腸ガンなどの悪性疾患と区別することが重要になります。
 場合によっては、食道内圧検査、胃排出能検査、性格検査などを行うことがあります。


ストレスと胃疾患の関係は?

ストレスと胃・十二指腸潰瘍

 

イメージ画像 ストレスがかかると全身にさまざまな程度の障害を及ぼしますが、胃は特にストレスの影響を受けやすい臓器として有名です。
 雑誌などでは「ストレスと病気」という特集があれば、必ず胃・十二指腸潰瘍がその代表的疾患として記載されています。
 ストレスがかかると胃の平滑筋は緊張して収縮し、そのため胃の血液循環の障害を生じ、潰瘍が形成されやすくなると説明されていました。

胃炎になっても潰瘍は形成されず

 

 ラットなどの動物にストレス負荷をかけると、数時間で胃炎が形成され胃粘膜出血が生じます。
 しかし不思議なことに、どんな強いストレスを加えても胃炎は形成されますが、深掘れの潰瘍は生じませんでした。そのため、潰瘍形成にはストレスだけでは足りずに、プラスアルファの何かが必要であると考えられてきました。

ピロリ菌の感染

 

 潰瘍形成の重要な要因のひとつが、ピロリ菌感染でした。ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると、胃粘膜はもろくなりストレスが加わったり、胃酸が過剰に分泌されると潰瘍が形成されやすくなります。
 阪神・淡路大震災の際、胃潰瘍の発生が増加したと新聞報道がありましたが、兵庫医大の調査によると、ピロリ菌の除菌を行っていた人からは1例の発生もありませんでした。自衛隊レンジャー訓練では、あまりの厳しさに多くの隊員から胃・十二指腸潰瘍が発生するので有名でしたが、最近の調査でピロリ菌陰性者からは胃炎しか発生しないことが明らかになってきました。

ピロリ菌の除去

 

 ストレスが胃に悪いことは事実ですが、ストレスを解除することより、ピロリ菌を除菌することの方が容易なため、胃・十二指腸潰瘍の再発予防には、世界的にピロリ菌の除菌が優先的に行われるようになってきています。


胃腸神経症・神経性胃炎の治療法は?

精神的治療と薬物治療

 

イメージ画像 精神的治療と、薬物治療に分類されます。

日常生活に支障

 

 多くの場合、何らかの体質素因があり、幼少期からよく腹痛・下痢・嘔吐などを起こしていたというエピソードを持っています。
 このような素因のある人が、なんらかの強い心理的ストレス、心理的疲労を体験した時に、日常生活や社会生活に大きな支障を来たし、医療機関を受診するケースが多いです。
 不安なことは、医師に何でも話し、相談するようにしましょう。病気や身体的異常がなく、基本的に寿命に影響しないことを理解し安心することも大切です。過労、心理的ストレス、生活習慣の乱れがあれば是正、改善します。

うつ病性障害も

 

 薬剤では、消化管機能改善薬が有効なこともあります。
 重症の場合は、強い不安、心的疲弊状態として、うつ病のある場合が多く、抗不安薬も効果があります。


胃腸神経症・神経性胃炎かなと思ったら?

まずは消化器内科へ

 

 さまざまな不安感が強いので、家庭、友人などに、どんなことが不安かを相談するようにしましょう。
 初診は胃腸科になりますが、基本的に治療を行うのは心療内科、神経内科になります。器質的疾患がないかどうかを確認するため、まずは消化器内科を受診するようにしましょう。

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