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 唾液腺炎・耳下腺炎

唾液腺炎・耳下腺炎の概要は?
おもな症状
  唾液腺のある部位(耳下腺では耳の前)の腫れ
発赤
痛み
唾液の性質の変化
似ている病気
  唾液腺の腫瘍
唾石症(だせきしょう)
リンパ腺の病気
あごの病気
シェーグレン症候群
ミクリッツ症候群
起こりやすい合併症
  唾液腺の出口の炎症
リンパ節炎
流行性耳下腺炎の場合には髄膜炎・脳炎
成人では生殖器の炎症

唾液腺炎・耳下腺炎ってどんな病気?
唾液腺とは
  イメージ画像 唾液腺とは、味覚刺激などによって唾液を作り、口の中に分泌する腺のことです。
 唾液は食べ物をひとかたまりにして飲み込みやすくしたり、でんぷんの消化に働いたり、口の中の殺菌、会話時の舌の動きを良くする潤滑油の働きをしています。
唾液腺の炎症
   唾液腺に起こる炎症を唾液腺炎といいます。
 原因は細菌の感染によるもの、ウイルスの感染によるもの、免疫異常によるものなど、さまざまです。
おたふくかぜなど
   侵される唾液腺によって、耳下腺炎、顎下腺炎(がくかせんえん)、舌下線炎(ぜっかせんえん)などに分類されます。耳下腺炎では、「おたふくかぜ」として知られている耳下腺ウイルスによる流行性耳下腺炎がもっとも一般的です。

唾液腺炎・耳下腺炎の原因は?
流行性耳下腺炎
  イメージ画像 流行性耳下腺炎はおもに小児期に、冬〜春先に流行することの多いウイルスによる伝染性の病気です。患者さんのうち95%が、9歳以下の小児になります。患者さんの唾液の飛沫などから感染します。
 一度感染すると免疫ができるため、以後にもう一度感染することはありません。
 典型的な症状としては、風邪のような症状にともなって両側の耳下腺(おもに耳たぶ付近)が腫れ、唾液の出る量が少なくなります。ときに高熱をともない、髄膜炎、睾丸炎、卵巣炎などの合併症を引き起こすことがあり、全身的な症状を現す病気です。
 一般的には小児の病気ですが、ときに抗体を持っていない大人も感染することがあります。
再発性耳下腺炎
   ウイルスによる感染が原因ではない耳下腺炎として、再発性耳下腺炎があります。
 原因は明らかでなく耳下腺の腫れを繰り返す症状が特徴です。小児期と中年以上の女性にみられる病気ですが、発生頻度は少なくなっています。
シェーグレン症候群
   全身的な免疫異常を原因とした自己免疫疾患とされているシェーグレン症候群があります。慢性耳下腺炎の形で耳下腺の腫脹、口の渇き・ドライマウス、涙腺の分泌異常・ドライアイがおもな症状としてあらわれる疾患です。
顎下腺炎
   その他の唾液腺炎として、顎下腺炎があります。唾液を口の中へ運ぶ唾液腺管の中に唾石(だせき)と呼ばれる石が作られて詰まってしまい、唾液の出が悪くなった時などに起こります。
 これに口中の細菌が感染して化膿することがあります。舌と歯茎の間の舌下口底部の粘膜が赤く腫れ上がり、痛みや熱をともないます。この場合、顎下腺のすぐ前にある舌下腺にも同時に舌下腺炎を併発して腫脹することが多く見られます。
 また、流行性耳下腺炎でも、顎下腺が侵される場合もあります。
その他
   細菌による唾液腺炎はもともと唾液腺に何の病変もない人には生じにくい病気です。小児では、唾液管末端拡張症(だえきかんまったんかくちょうしょう)という腺そのものの異常があります。
 梅毒、結核などによって、唾液腺炎が生じることもあります。
 唇の裏側、上あごの粘膜には、米粒ほどの小さな唾液腺が点在しますが、まれにこれらにも炎症が起きることがあります。

唾液腺の種類
唾液腺の場所
  イメージ画像 耳下腺(じかせん)、顎下腺(がくかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の大唾液腺があります。唇、上顎の奥の方の粘膜、頬、臼歯部の粘膜部、舌の先端の下の粘膜には米粒ほどの大きさの小唾液腺が点在します。
耳下腺と顎下腺
   耳下腺は両側の耳の前から耳たぶ付近にあり、口の中では上顎の大臼歯に相当する頬の粘膜に出口があります。おたふくかぜで腫れるのは、この唾液腺です。
 顎下腺は下顎より下で、えらから少し前寄りの部分にあり、出口は舌と奥歯の間の粘膜下にある舌下腺と一緒で、舌の先端の真下で歯茎寄りの粘膜にあります。外から顎下腺のある部分を指で押すと、唾液が流れ出るのがわかります。
舌下腺と小唾液腺
   舌下腺は、舌下部粘膜下にあります。導管は短く、舌下小丘部付近に開口しています。分泌される唾液は、粘液性唾液で粘稠です。
 小唾液腺は口腔粘膜下に600個〜1000個あり、すべてが粘液腺です。小唾液腺がある部位によって、口唇腺、舌腺、口蓋腺、頬腺、舌口蓋腺、臼後腺などの名称が付けられます。
唾液の性質
   唾液腺から出る唾液の性質は、粘り気のある舌下腺や小唾液腺からのもの、さらさらした耳下腺からのもの、その中間の顎下腺からのものに分類されます。

唾液腺炎・耳下腺炎の症状は?
痛み、発熱、口の渇き
  イメージ画像 急性の炎症では、炎症を生じた腺のところに痛み、発熱などが起こります。
 すべての腺が炎症を起こすウイルス感染症や、シェーグレン症候群では、唾液の分泌障害が生じ、口の乾燥感が現れます。
唾液管末端拡張症
   唾液管末端拡張症は、小児慢性再発性耳下腺炎とも呼ばれます。小児にみられる特殊な病気で、急性耳下腺炎を反復します。
 当初は、流行性耳下腺炎と誤診されやすく、反復することによって疑いを持たれ、診断されることがほとんどです。

唾液腺炎・耳下腺炎の診断は?
唾液腺が腫れているか検査
  イメージ画像 腫れているのが唾液腺かどうかを確認する必要があります。
 耳下腺や顎下腺では、リンパ節炎と紛らわしいことがあります。
 流行性耳下腺炎をはじめ、耳下腺に炎症があればアミラーゼの値が高くなります。ただし、アミラーゼの値が高いからといって、それぞれの疾患を確定診断することはできません。
 そのほか、一般的な血液検査が必要です。
確定診断
   ウイルス性か細菌性かは、問診や局所所見、血液検査で判断されます。
 流行性耳下腺炎では、流行状況の把握と、ウイルス抗体の抗体価を測ることによって確定診断となります。
 唾液管末端拡張症の確定診断には、唾液管造影検査が必要になります。

急性耳下腺炎・急性顎下腺炎
有名なおたふくかぜ
  イメージ画像 耳下腺、顎下腺の急性炎症の多くは、ウイルスや細菌によって生じます。
 ウイルス性の急性炎症でもっとも良く知られていて罹患例数も多いのが、流行性耳下腺炎、いわゆる「おたふくかぜ」です。おたふくかぜのウイルスが口や鼻から感染し、増殖したウイルスが血液を介して全身に広がり、唾液腺に達したものが耳下腺炎や顎下腺炎を引き起こします。
 症状が出始めると、全身倦怠感、発熱、頭痛などをともない、多くは両側の耳下腺腫脹が起こります。腫脹は48時間でもっともひどくなり、2日〜10日続きます。腫れが引くまでは他の人に感染させる可能性があります。
 診断には潜伏期間として2週間〜3週間以前に感染者との接触があったかどうか、周囲の流行状況の把握が重要です。唾液管開口部の発赤、検査では血液アミラーゼ値の上昇などが参考になります。確定診断にはウイルスの抗体価の測定が必要です。
細菌性の耳下腺炎
   細菌性の急性唾液腺炎は、抵抗力の落ちた全身状態の悪い人以外は、耳下腺や顎下腺そのものに何らかの異常がある場合に生じるのが普通です。耳下腺では、唾液管末端拡張症というわれる小児の病気、シェーグレン症候群などの場合に発症することがあります。
 細菌性の急性炎症の多くは顎下腺に生じ、その原因のほとんどは唾石(だせき)によるものです。顎下部が発熱、痛みをともない強く腫れ、ひどい場合は膿瘍化し、首の方まで腫れてしまいます。皮膚が赤くなることもあります。舌と下顎骨の間が赤く腫れ、下顎正中内側にある唾液管の開口部からは膿が出ます。膿瘍化した場合は、切開して膿を出す必要があります。口の中の腫れた部分が破れて、自然に石が出ることもあります。
 細菌性の急性炎症の場合は、抗生物質の投与が必要です。唾石では消炎後、唾石に対する手術治療が必要です。唾液が唾液管内に貯まることが細菌感染の原因と考えられる唾液管末端拡張症などでは、細菌感染を予防する治療法として、唾液の排出を促すために1日1回の耳下腺マッサージが勧められます。

唾液腺炎・耳下腺炎の治療法は?
原因によって異なる治療法
  イメージ画像 唾液腺炎の治療法は、原因によって変わっていきます。
 細菌感染によるものは、抗菌薬が効果的で、痛みをともなうものでは鎮痛消炎薬を用います。
 ウイルスによる流行性耳下腺炎では、感染する前にワクチンで予防するという方法があります。感染してからは特異的に効果のある薬剤は存在しないので、対症療法的な治療法になります。
 急性炎症が落ち着いたら、唾石など治療が必要な疾患がある場合は、それぞれの治療を行います。
シェーグレン症候群
   シェーグレン症候群のような免疫異常によるものでは、効果的な治療法はまだ開発されていません。対症療法的に唾液を出しやすくする薬剤や人工唾液の使用、うがいなどで口の中を湿らせるようにするなどがあります。

唾液腺炎・耳下腺炎かなと思ったら?
耳鼻咽喉科へ
  イメージ画像 唾液腺の部位に生じる腫れ、痛み、口の乾燥感などがあれば、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
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