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 角膜潰瘍

角膜炎の概要は?
おもな症状
  眼痛
流涙
視力低下など

角膜潰瘍ってどんな病気?
正確には病名ではありません
  イメージ画像 正確なことを言うと、角膜潰瘍とは病名ではなく、角膜における異常所見のひとつです。
後遺症が残ります
   角膜びらんとは異なり、角膜の表面の上皮だけではなく、その奥の実質にも濁りが生じたり、薄くなったりといった影響が出ている場合、角膜潰瘍と診断されます。必ず上皮欠損をともない、多くの場合、炎症が同時に認められます。
 角膜びらんよりも重症で、治癒した後でも視力障害などの後遺症が残ります。
 場合によっては、角膜穿孔(かくまくせんこう)と呼ばれる角膜に孔が開いてしまうことがあり、まれに失明に至るケースもあります。

角膜の構造は?
眼の表面の透明な膜
  イメージ画像 角膜は黒目の表面の厚さ0.5mmの透明なドーム状の膜です。視覚器官である眼に光が入る入口のところにあり、水晶体とともに眼のレンズの役割をしています。角膜が濁ったり、歪んだりすると、視力が非常に障害されてしまいます。また、角膜には豊富に神経が分布しているので、角膜に傷が付くと痛みが生じます。
 角膜は3層構造をしており、表面を覆う上皮と、内側を覆う内皮との間に、角膜の大部分を占める実質があります。実質は、コラーゲンのグルコサミノグリカン(糖の一種)からなりますが、その約80%は水分でスポンジが水を含んだような感じになっています。
角膜が透明の理由
   角膜はなぜ透明なのか、その詳しいメカニズムはわかっていません。コラーゲンの線維がある一定の間隔を持って規則正しく配列していることが、角膜が透明であるキーポイントだと考えられています。これは「モーリスの格子説」と呼ばれています。
 角膜実質中の水分が増加して角膜が膨潤し、コラーゲンの配列が乱れると、すぐに角膜は透明でなくなってしまいます。
角膜には血管がない
   正常な角膜には、血管が存在しません。血管がないのにどのように栄養分を受け取っているのか不思議ですが、角膜表面の涙、角膜周囲の白目の表面を覆っている結膜の血管、角膜の奥にある眼内の前房(ぜんぼう)という場所に溜まっている房水(ぼうすい)の三者によって、栄養分をもらっています。

角膜潰瘍の原因は?
外傷や細菌感染
  イメージ画像 外傷や、ヘルペスウイルス、細菌、真菌、アメーバなどによる感染がおもな原因です。感染による角膜潰瘍は、細菌性角膜潰瘍と呼ばれます。非感染性の潰瘍は、非感染性角膜潰瘍と呼びます。
 この他にも、蚕蝕性角膜潰瘍(さんしょくせいかくまくかいよう)と呼ばれる、自分の角膜を濁らせたり溶かしたりするような異常な免疫反応(自己免疫)が原因になることもあります。
 酸やアルカリが眼に入って起こる角膜化学腐蝕(かくまくかがくふしょく)、糖尿病や神経系の腫瘍などで角膜の知覚神経が障害されて起こる場合もあります。
角膜潰瘍の原因
   中央部では感染性のものが多く、周辺部では免疫反応によるものが多くみられます。
 中央部潰瘍 
細菌性角膜潰瘍
角膜真菌症(真菌性角膜潰瘍)
アカントアメーバ角膜炎
角膜びらんより進展したもの
 周辺部潰瘍 
蚕蝕性角膜潰瘍(モーレン潰瘍)
リウマチなど膠原病に伴うもの
ぶどう球菌性眼瞼縁炎に伴うもの
重症化する蚕蝕性角膜潰瘍
   蚕蝕性角膜潰瘍は必ず潰瘍になります。蚕蝕性角膜潰瘍以外では、重症例が角膜潰瘍になると考えてください。

角膜潰瘍の症状は?
おもな症状
  イメージ画像 眼のころつき、痛み、時に激痛、白眼の充血が起こります。瞳にかかる部分に潰瘍ができると、視力がかなり低下します。
 たくさんの涙が出ます。細菌性角膜潰瘍、真菌性角膜潰瘍の場合、多量の目やにが出ます。
痛みがことも
   眼痛をともなわない角膜潰瘍もあります。この場合、角膜の神経が障害されているため、かえって治癒しにくくなるのが特徴です。

角膜潰瘍の診断は?
感染があるか検査
  イメージ画像 感染が疑われた場合、角膜の悪い部分を少し削って、細菌、真菌、ヘルペスウイルスがいないかどうかを検査します。
 また、角膜の知覚の低下を調べる検査、血液検査で糖尿病や自己免疫疾患の検査を行うこともあります。

角膜潰瘍の治療法は?
感染が原因の治療法
  イメージ画像 感染が原因の角膜潰瘍の場合、原因となっている微生物に対する薬剤が含まれる点眼薬、眼軟膏、点滴、内服薬、結膜下注射などの治療を行います。結膜下注射は、白眼の部分の最表面の結膜と、その下の強膜の間に薬が入るように注射をします。
感染以外が原因の治療法
   感染が原因ではない場合、抗炎症薬を投与したり、角膜の上皮の治療を促進するため、眼軟膏を入れて眼帯をしたり、治療用のソフトコンタクトレンズを入れたりします。
角膜移植
   難治性の角膜潰瘍や、角膜穿孔を起こしている場合は、角膜移植を行う必要があります。
 うまく治った場合でも、角膜の中央に強い混濁が残って視力が不良の場合も、角膜移植を行います。

角膜移植手術とアイバンクとは?
角膜移植手術
  イメージ画像 角膜移植は、視力障害の原因となっている濁った角膜(黒目のこと)の中央部を円形に取り除き、ほぼ同じ大きさの綺麗な他の人の角膜を移植して、視力を回復させるものです。角膜の表面(上皮)だけ、裏面(内皮)だけを移植する方法など、病気に応じて様々な手術を使い分けます。
 角膜移植が有効な病気は角膜だけの異常で、視神経や網膜などに重い障害のある視力低下は、角膜移植を行っても回復しません。苛性ソーダなど強いアルカリ性の薬物、花火などの高熱による混濁では、移植しても再び角膜が混濁してしまい、上手くいかないことがあります。
 手術手技の発達、縫合糸の改良、角膜保存液の開発により、手術の安全度は向上しています。拒絶反応を抑えるための薬物の開発も進み、角膜移植の成績も向上しています。手術後1年たっても、約90%の患者さんの角膜は透明なままです。
角膜移植を受けたい人
  誰の角膜を移植するの?
     移植に使われる角膜は、死亡した人の角膜です。
 1958年(昭和33年)、「角膜移植に関する法律」が制定され、本人の意思と遺族の同意が得られれば、死亡した人から角膜の提供が受けられるようになりました。
  角膜移植の申し込みは?
     角膜移植を希望する人は、角膜移植を実施している医療機関で診察を受けます。専門医による診断で、角膜移植を受けられるかどうか判定します。
 可能になれば、登録して順番を待つことになります。
  費用と入院期間は?
     角膜移植は医療保険が適用されるため、医療費の支払いは自己負担分のみです。
 生活保護や身体障害者手帳の交付を受けている人は、自己負担分も公費で賄われます。
 角膜移植手術の入院期間は、7日間〜10日間です。
  拒絶反応は?
     腎臓や心臓の移植では拒絶反応が問題になりますが、角膜には血管がなく、血液が流れていないため、拒絶反応は起こりにくいです。
 血管がないはずの角膜に多数の血管が入り込んでいる病気の場合、拒絶反応が起こりやすいため、角膜移植が受けられるかどうかは慎重に判断されます。
角膜移植を提供したい人
  アイバンクに連絡
     自身の死後、角膜の提供を希望する人は、近くのアイバンク(眼球銀行)に連絡をします。登録や、そのほか、詳しいことを教えてもらえます。
 生前に登録していなくても、遺族が提供を希望する場合、アイバンクに連絡すれば提供することができます。
 アイバンクは全国各地に設立されています。
  提供希望者が死亡したとき
     眼球は死後6時間〜12時間以内に摘出する必要があります。死亡した場合、アイバンクへの連絡はできるだけ早く行います。
 連絡があると医師が出向いて眼球を摘出し、その後はプラスチック製の義眼を入れるので外見は摘出前と変わりません。
 摘出された眼球は、眼球保存液内で4℃に保たれ、1週間〜2週間以内に移植されます。一部の角膜は緊急用に使用するため、冷凍保存されます。

角膜潰瘍に関連する病気は?
角膜潰瘍に関係する病気
  イメージ画像 角膜ヘルペス、細菌性角膜炎、角膜真菌症、アカントアメーバ角膜炎、蚕蝕性角膜潰瘍、角膜化学腐蝕などがあります。
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