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突然の高度の難聴(片耳のみ) めまい 耳鳴り 耳閉感(じへいかん・耳が詰まった感じ) 聴覚過敏(音が響く感じ) 吐き気 嘔吐
メニエール病 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう) 外リンパ瘻
内耳の蝸牛(かぎゅう)が、何らかの原因により障害を受けたため、突然に生じる難聴を特徴とする病気です。 障害が内耳の前庭半規管(ぜんていはんきかん)にまで及ぶと、難聴にくわえて、めまいがともなって起こります。
まだ原因に関しては、わかっていません。 現在では、内耳障害の原因として、ムンプスウイルスやヘルペスウイルスによるウイルス感染説、循環障害説などさまざまな原因が考えられています。現在のところ、さまざまな病因による内耳障害が突発性難聴という症候群の中に含まれていると考えられています。
耳には音を聞くはたらきのほかに、体のバランスをとる「平衡感覚」の役割があります。 耳の平衡感覚を感知する器官として、耳石器(じせきき)、半規管(はんきかん)があります。
耳石器は2つあり、卵形嚢(らんけいのう)は水平、球形嚢(きゅうけいのう)は垂直に位置しており、この2つの袋の中に、リンパ液と炭酸カルシウムでできている耳石という小さな石が入っています。 耳石器の内部は薄い膜で覆われていて、その奥に有毛細胞という細かい毛の生えた感覚細胞があります。耳石がリンパ液の中を動くと、有毛細胞の毛が刺激されて位置を感知することができます。卵形嚢は水平方向の動き、球形嚢は垂直方向の動きを感知します。
半規管は、前半規管、後半規管、外側半規管の3つからなり、まとめて三半規管(さんはんきかん)と呼ばれます。 半規管は3つの中空のリングから構成されており、内部は内リンパ液で満たされています。前庭の近くに膨大部(ぼうだいぶ)と呼ばれるふくらみがあり、そこには感覚毛を持った受容細胞があります。感覚毛の上にはクプラと呼ばれるゼラチン状のものが載っています。内リンパ液が動くことで、クプラが押され、感覚毛が曲がり、受容細胞が興奮します。頭部が回転すると、内リンパ液はしばらく静止したままなので、感覚毛が逆に曲がります。この情報と、視覚情報から、体が回転したと認識します。 三半規管はそれぞれ別の面にあるため、あらゆる回転方向を認識することができます。これらの半規管はそれぞれ直角に交わっていて、X軸、Y軸、Z軸のように3次元空間の回転運動の位置感覚を感知します。
突然に発生する難聴です。 通常は、片耳のみに発生することが多いのですが、まれに両耳同時に発生することもあります。 また、耳鳴り、めまいが難聴の発生と前後して生じることがあります。めまいには、吐き気、嘔吐をともなうことがあります。
音は外耳から鼓膜に達して、鼓膜の振動は3つの耳小骨(じしょうこつ)をへて内耳に伝えられます。ここまでの間に、なんらかの障害が生じていると、音がうまく内耳に伝わらなくなります。これを「伝音難聴」と呼びます。 内耳に伝えられた音の振動は、内耳のコルチ器という部分にある有毛細胞を振動させ、細胞内の電気的信号に変換されます。電気的信号に変換され、聞こえの神経に伝達し、さらに脳へと送られて音を感じることができます。内耳以降のレベルに障害が起こって生じる難聴を「感音障害」と呼びます。
難聴が伝音難聴か感音難聴かは、聴力検査で診断できます。耳にあてた受話器から音を聞いた時の聴力を「気導聴力」と呼びます。 耳の後に振動子(骨導受話器)をあて、直接頭蓋骨を振動させて測る聴力を「骨導聴力」といいます。 骨導聴力が良いのに気導聴力が悪い場合、外耳〜内耳にかけて異常があると考えられ、伝音難聴と診断されます。骨導聴力と気導聴力が同程度に悪ければ、内耳以降に異常があると考えられ、感音難聴と診断されます。
伝音難聴の原因は、耳垢(じこう)の詰まり、鼓膜の穿孔(穿孔)、中耳炎(滲出性中耳炎、急性中耳炎、慢性中耳炎、中耳真珠腫)、耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)、耳小骨連鎖離断(じしょうこつれんさりだん)、耳小骨奇形(じしょうこつきけい)、耳硬化症(じこうかしょう)などがあります。 基本的には、処置や手術で改善可能な難聴です。
感音難聴の原因は、内耳性難聴と、それ以降に原因のある後迷路性難聴(こうめいろせいなんちょう)とに分類されます。 内耳性難聴には、先天性難聴、騒音性難聴、音響外傷、突発性難聴、メニエール病、聴器毒性薬物中毒、老人性難聴、ウイルス感染症による難聴などがあります。 後迷路性難聴には、聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)、脳血管障害による難聴、脳炎などによる難聴、心因性難聴など、多彩な原因があります。
難聴で補聴器を用いる場合は、伝音難聴では非常に有効です。しかし、感音難聴では言葉のわかりやすさに一定の限界があります。
突然、難聴が発生した場合、難聴の原因がどこにあるのかを診断する必要があります。 耳鼻科、耳鼻咽喉科での診察、耳のX線検査、鈍音聴力検査が必要になります。場合によっては、精密な聴力検査、平衡機能検査も必要になります。
突発性難聴では、聴力の改善、悪化を繰り返すことはありません。改善・悪化を繰り返す場合は、メニエール病が疑われます。 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)では、突発性難聴として初発することがあります。聴神経腫瘍が疑われる場合には、MRIによる画像診断が必要になります。 帯状疱疹(たいじょうほうしん)がみられる場合、ハント症候群と考えられます。
難聴が発生してから、早期に治療を開始するほど、聴力が改善し予後が良好だと言われています。遅くても、発生から2週間以内に治療を開始するのが望ましいです。 発症から1ヶ月以上経過した場合は、予後は極めて不良となり、通常は著しい改善は望めなくなってしまいます。 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因となるムンプスウイルスが原因の場合、予後は不良で回復は期待できません。
聴力が悪い場合、めまいをともなっていると、予後が悪いことが知られています。
多くの病院では、副腎皮質ステロイド薬、循環改善薬、ビタミン薬などの多剤併用療法を中心とした治療法が行われます。 メニエール病と同様の内リンパ水腫が疑われる場合や、ヘルペスウイルスの再活性化が明らかな場合は、それぞれの治療も並行して行います。
騒音からの隔離と、心身の安静が必要です。テレビ、ラジオ、電話などは、なるべく控えるようにしましょう。ストレスが関与しているとも考えられているので、心身の安静の目的から抗不安薬が使われることもあります。 騒音、ストレスから隔離できない場合、入院することもあります。
聴力の改善を正確に診断できる検査は、現在のところありません。 予後は不明、不良といっても、生命に危険を及ぼすようなことはありません。 現在では、失われた聴力を回復させるなど、さまざまな治療法の研究が行われております。
突発性難聴が疑われた場合、できるだけ早期に耳鼻科、耳鼻咽喉科の病院を受診することが重要となります。早く治療を開始すれば、それだけ聴力の改善も期待できます。
歌手の浜崎あゆみさんは、突発性難聴によって左耳の聴力を失ったことを自身のブログで告白しています。 ロックバンドのDir en greyのボーカリスト京さんは2000年のツアー中に突発性難聴を患い左耳の聴力を失っています。 タレントの相田翔子さんは、Wink在籍時代に疲労とストレスの連続から、一時的に突発性難聴になったことがありました。 このほかにも、ガールズロックバンドのプリンセス・プリンセスの今野登茂子さん、世界的音楽家の坂本龍一さん、ザ・スパイダースの井上順さん、歌手の大友康平さん、ロックバンド・エレファントカシマシのボーカルの宮本浩次さん、シンガーソングライターのスガシカオさん、イギリスのミュージシャンであるフィル・コリンズさんも突発性難聴を患った経験があるそうです。
はっきりした原因は特定されていませんが、ウイルス感染説が有力になっているようです。 私の友達も突発性難聴を発症しました。一時的に完治しても、再発を繰り返してしまうようです。治療には早期に開始することが大切なようです。発症から2週間以上経過してしまうと、治療成績はあまりよくないようです。理想は発症から48時間以内なんだとか。 厚生労働省の特定疾患に指定されている難病ですが、残念ながら医療費の助成は受けられません。