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 甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍ってどんな病気?
良性腫瘍と甲状腺癌
  イメージ画像 甲状腺腫瘍には、良性の腫瘍と、ガンがあります。
 良性腫瘍のほとんどは、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)です。
 甲状腺ガンには、乳頭ガン(にゅうとうがん)、濾胞ガン、未分化ガン、髄様ガン(ずいようがん)があります。そのほかに、悪性リンパ腫が甲状腺にできることもあります。
  腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)
     甲状腺腫瘍は、甲状腺の細胞が自律的に増殖してできます。外部から甲状腺が刺激されると、過形成を起こし、甲状腺がはれます。
 これらは、腫瘍ではなく、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)として区別されます。
  乳頭癌(にゅうとうがん)
     乳頭ガンは、甲状腺ガンの中でもっとも多いガンになります。
 とてもゆっくりと増殖するガンで、頸部(けいぶ)のリンパ節に転移しやすいという性質を持っています。ですが、命に関わることの少ない、予後の良いガンの一種です。
 リンパ節への転移によって、乳頭ガンに気が付くこともあります。
  濾胞癌(ろほうがん)
     濾胞ガンも、比較的、予後の良いガンです。しかし、血液に乗って肺や骨に転移しやすいという性質を持っています。
 また、良性の濾胞腺腫との区別が難しいのも問題となります。
  未分化癌(みぶんかがん)
     未文化ガンの予後は非常に悪く、1年〜1年半で、約95%の患者さんは死亡してしまいます。
 しかし、甲状腺ガンの中では、まれなガンの一種です。
  髄様癌(ずいようがん)
     髄様ガンは、傍濾胞細胞(ぼうろほうさいぼう、C細胞)から発生するガンです。カルシトニンというホルモンを分泌します。
 同一家系内に多くの人が髄様ガンになることがあります。この場合は、RETという遺伝子に異常があることがわかっています。
  悪性リンパ腫
     悪性リンパ腫では、甲状腺の中に入っているリンパ球から発生する腫瘍です。
 放射線、抗ガン薬療法による化学療法に良く反応するので、比較的、予後の良い腫瘍です。

甲状腺ってなに?
甲状腺の形
  イメージ画像 甲状腺という名前は、西洋の盾のような形をしていることに由来します。
 ちょうど蝶が羽を広げたような形をしており、蝶の羽にあたる部分は右葉(うよう)と左葉(さよう)と呼ばれます。蝶の胴体にあたる部分は、峡部(きょうぶ)と呼ばれます。
甲状腺の場所
   峡部は靭帯(じんたい)で、気管の前面に固定されています。左葉と右葉が、気管を取り囲んでいます。
 甲状腺は首の前にありますが、男性と女性では位置が違います。男性の方が女性よりも低い位置にあります。男性の半数くらいでは、甲状腺の位置が低く、胸骨の下に入っており、首に触っただけではわかりません。その際は、嚥下運動(えんげうんどう)をしてもらうと、気管と一緒に甲状腺が上がってくるので、指で甲状腺を触れるようになり、甲状腺腫が見付ることもあります。
ツバを飲み込んでください
   医師が首の診察をしているとき、患者さんに「ツバを飲み込んでください」とお願いすることがあります。これは、ツバを飲み込むことによって、甲状腺を指で触れるようになるためです。
 正常な大きさの甲状腺の場合、外から触ることはできませんし、見えることもありません。

甲状腺腫瘍の原因は?
まだわかっていません
  イメージ画像 甲状腺髄様ガンの一部を除いて、甲状腺腫瘍の原因に関しては、まだわかっていません。

甲状腺腫瘍の症状は?
まったく気が付かず
  イメージ画像 予後の良い乳頭ガン、濾胞ガンの場合、甲状腺の腫れ以外には自覚症状がありません。健康診断や、風邪などで医者を受診したとき、偶然に発見される場合がほとんどです。
 最近では健康診断に、首の超音波検査が含まれていることがあります。これによって発見された場合も、まったく気が付いていなかったということがほとんどです。
悪性の場合は自覚症状があらわれる
   悪性度の高い未分化ガンでは、甲状腺の腫れが急速に大きくなり、痛み、発熱が起こります。さらに進行すると、周囲を圧迫して物が飲み込みにくくなったり、呼吸困難になったりします。

甲状腺腫瘍の診断は?
触るだけでわかることも
  イメージ画像 甲状腺ガンは、しこりが気管に癒着していて動きが悪いので、甲状腺疾患の専門家なら触るだけでわかることもあります。
 一般的には、超音波断層検査と、腫瘍の細胞を注射器で取って調べる穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)という検査で診断されます。
そのほかの検査法
   甲状腺のCT、MRI、核医学検査は、さらに腫瘍の性質や転移の有無を知るために行われます。
 また、家族性甲状腺髄様ガンでは、血液の腫瘍マーカーを測定したり、ガン遺伝子を調べたりすることで、ガンが外から触れるようになる前に、保因者を発見することができます。

腫瘍マーカーとは?
腫瘍から出る特異な物質
  イメージ画像 腫瘍マーカーとは通常、腫瘍ができるとその表面に特異的に発現してくる物質で、腫瘍の大きさ、広がりに応じて、血液中にその物質がたくさん流入してきます。
 腫瘍マーカーは、腫瘍の発生している臓器と強い特異性があるため、血液検査で高値を示すようなら、その臓器に腫瘍があることが推測されます。
さまざまな腫瘍マーカー
   婦人科の腫瘍で特に特異性があるものに、CA125があります。この腫瘍マーカーは卵巣腫瘍、とくに卵巣ガンの場合に高値を示します。ただし他の腫瘍マーカーでも同様ですが、子宮内膜症などの他の病気でも高値を示すことがあるため、CA125の検査値が上がったからといって、すぐに卵巣ガンだと診断することはできません。
 CA19-9は、婦人科以外の腫瘍でも高値を示すことが知られていますが、婦人科腫瘍では卵巣腫瘍、とくに成熟嚢胞性奇形腫で高値を示すことがあります。
 卵巣ガンは、いわゆる腺ガンであることが多いのですが、扁平上皮ガンが多い子宮頸ガンでは、SCCという腫瘍マーカーがよく高値になります。
 胎盤から分泌されるhCGという腫瘍マーカーは、胞状奇胎(ほうじょうきたい)、絨毛ガンなどで高値を示します。
腫瘍マーカーで確定診断にはなりません
   これらの腫瘍マーカーは、一般的に病気の病状に従って増減します。しかし診断上の意義は、画像診断などを含めた検査の一部に過ぎないことを頭に入れておくことが大切です。

甲状腺腫瘍の治療法は?
薬剤による化学療法
  イメージ画像 甲状腺腫瘍を薬で治療する方法は、現在のところまだ存在しません。
 甲状腺ホルモンを服用して甲状腺刺激ホルモン(TSH)を抑えておくと腫瘍が小さくなるという説もありましたが、甲状腺ホルモンが過剰になるため、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が起こるなどの副作用もあり、現在ではほとんど行われていません。
良性ならば定期検査
   良性で、甲状腺腫が気にならなければ、そのまま放置しておいても大丈夫です。
 ただし、大きくなったり、濾胞腺腫だと思っていたものが濾胞ガンだったということもあるので、1年に1回は定期的に検査を受けるようにしましょう。
乳頭癌・濾胞癌では手術
   乳頭ガン、濾胞ガンの治療法は、手術が基本となります。日本での標準的な治療法は、甲状腺ガンのある側の甲状腺と、周囲のリンパ節を取り除く手術が行われます。
 通常は化学療法、放射線療法は行いませんが、肺、骨などに転移がある場合は、甲状腺をすべて取り除き、大量の放射性ヨードを投与することで、ガン細胞を破壊することができます。
特殊な手術
   手術でガンを完全に切除できなかった場合には、超音波断層装置で見ながら、細い針を甲状腺に刺し、腫瘍内にエタノールを注入して微小な血管に塞栓(そくせん)を起こさせ、同時に腫瘍細胞も破壊するというPEITという治療法が行われることもあります。
未分化ガンでは・・・
   残念ながら、未分化ガンでは、現在のところ有効的な治療法はありません。

甲状腺の手術は?
甲状腺癌とバセドウ病
  イメージ画像 甲状腺の病気で手術が必要になるのは、甲状腺ガンと、バセドウ病です。
 甲状腺ガンといっても、日本では乳頭ガン、濾胞ガンという悪性度の低いガンがほとんどのため、腫瘍の部分を含む側葉の切除、あるいは全摘に準じた摘出を行って、周囲のリンパ節を郭清(かくせい)する手術が行われます。
 バセドウ病では、甲状腺のサイズを縮小させることが目的なので、一葉は全摘して一葉は約3g残すか、両葉ともに約2g残します。
安全な手術です
   甲状腺の手術は、基本的に安全な手術です。
 反回神経(はんかいしんけい)を傷付けてしまうと、嗄声(させい)と呼ばれるしわがれた声になってしまいます。また、副甲状腺を取ってしまうと、カルシウムが低下して、テタニーという腕や手などに起こる痙攣発作などの合併症が現われます。
内視鏡下手術
   首の中央部に手術の傷跡が残るため、最近ではそれを避けるための頸部小切開法や、内視鏡下手術など、体への負担が少ない手術も行われるようになっています。

甲状腺腫瘍かなと思ったら?
まずはかかりつけ医へ
  イメージ画像 首の腫れが甲状腺に関係するかどうかは、一般の医師でもわかるので、まずはかかりつけ医に診察してもらいましょう。
 もし、甲状腺腫瘍とわかったら、紹介状を書いてもらい、甲状腺を専門にする外科医の診察を受けてください。
 なお、甲状腺に病気を持つ患者さんは、イソジンなどを使ったうがいは良くありません。
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