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くも膜下出血


くも膜下出血の概要は?

おもな症状

 

バットで殴られたような激しい頭痛
突然の意識消失

似ている病気

 

片頭痛(へんずつう)
髄膜炎(ずいまくえん)
脳炎(のうえん)


くも膜下出血ってどんな病気?

脳脊髄液での出血

 

イメージ画像 脳は3層の膜で覆われています。脳の表面を直接覆っている膜を軟膜(なんまく)といいます。軟膜の上をくも膜が覆い、その上を硬膜(こうまく)が覆っています。
 くも膜と軟膜の間にはくも膜下腔(くもまくかくう)と呼ばれる隙間があり、脳脊髄液(のうせきずいえき)が循環しています。血管が破れくも膜下腔航に出血が起きるのがくも膜下出血です。

脳卒中の一種

 

 くも膜下出血は、いわゆる脳卒中(のうそっちゅう)の一種です。脳卒中の中で占めるくも膜下出血の割合は約10%で、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血(のうしゅっけつ)と比べると、頻度はそう高くはありません。
 しかし、生命にかかわる危険が高く、心臓麻痺などを含めた突然死の約5%を占めています。

過労死とも

 

 働き盛りの人に起こり、死亡率も高い病気です。
 中高年の過労死の原因のひとつとしても、しばしば取り上げられる病気です。


くも膜下出血の原因は?

外傷性くも膜下出血

 

イメージ画像 頭部外傷によって脳に傷がつくと、くも膜下出血を起こすことがあります。これを外傷性くも膜下出血といいます。

特発性くも膜下出血

 

 外傷・怪我が原因でないものを、特発性くも膜下出血といいます。単に「くも膜下出血」といった場合は、特発性くも膜下出血を指します。

脳動脈瘤の破裂

 

 もっとも多い原因は、脳の動脈が瘤のように膨れる脳動脈瘤が破裂する脳動脈瘤破裂(のうどうみゃくりゅうはれつ)です。
 次に多いのが、脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)・もやもや病といった脳血管の形態異常からの出血、頭部外傷によるものがあります。しかし、CT検査が普及して以来、脳動静脈奇形やもやもや病が原因の場合は、くも膜下出血よりも脳出血になるケースが多いことがわかってきました。
 くも膜下出血は、同じ家系に起こることがあるので、親戚でくも膜下出血を起こした人や、未破裂脳動脈瘤がある人がいる場合は、要注意です。

生活習慣病

 

 脳梗塞や脳出血は、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病が基盤にあって起こります。中年以降の人に多いのですが、くも膜下出血のほとんどが脳血管の形態異常が原因で起こるため、年齢を問わずに発症するのが特徴です。20歳代〜30歳代でも発症する人もいます。
 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、40歳代〜50歳代の人に多くみられます。


くも膜下出血の症状は?

頭痛や吐き気

 

イメージ画像 頭全体、時に前頭部、後頭部などに頭痛が起きます。
 同時に、吐き気、嘔吐、首の後ろが凝る、などのいわゆる髄膜刺激症状(ずいまくしげきしょうじょう)が現れます。痙攣、意識障害なども起こります。
 出血の仕方や、出血量によって、症状の現れ方が違います。

突然の頭痛

 

 頭痛の第一の特徴は、突然起こり、その頭痛が続くことです。
 突然とは、何時何分何秒に頭痛が起きたとか、部屋を出て3歩歩いたら頭痛が起きたというほど、突然に起こります。
 瞬間的にビリッと痛んですぐにやみますが、またしばらくするとビリッと痛む頭痛は持続してはいないので、突然頭痛が起きたとしてもくも膜下出血ではありません。

今までに経験したことのない痛み

 

 頭痛の第二の特徴は、今までに経験したことのないほど強い頭痛です。
 しかし、始めに軽い頭痛が前駆症状として突然起こり、少したってから強い頭痛が起こることもあります。

出血の量が多いと・・・

 

 出血の量が多い場合には、意識障害や呼吸障害が強く、昏睡から覚めないまま死亡することもあります。
 とくに重症の場合には、病院にたどり着く前に亡くなってしまう人もいます。

出血の量が少ないと・・・

 

 出血量が少ない場合には、意識障害がないか、あっても数分で意識が回復し、医師の診察を受けなくても元気になります。その後、いわゆる「ぼんのくぼ」と呼ばれる首筋の痛みや、頭全体の痛み、吐き気が続きます。
 出血量がごく少量の場合には、これらの症状をたんなる風邪や胃炎の症状と間違えてしまうこともあります。

重症になりやすい

 

 破裂する脳動脈瘤の場所によっては、脳の中に血腫を作り、片麻痺(かたまひ)が起こることもあります。言葉が出なくなったり、言葉は出ても意味を介さない失語症が起こることもあります。
 くも膜下出血は、始めはたとて軽症であっても、すぐに再出血を起こしやすく、さらに重体になってしまいます。

脳血管攣縮

 

 くも膜下出血の発症後2週間以内には、脳の動脈が細くなる脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)という状態が続きます。このため、脳の血流が減少し、片麻痺、正常水圧水頭症(せいじょうすいあつすいとうしょう)などの神経症状を起こします。
 再破裂と脳血管攣縮は、くも膜下出血の予後を左右する重要な因子です。


くも膜下出血の診断は?

頭部CTと脳血管撮影

 

イメージ画像 今までに経験したことのないほど強い頭痛が突然起こり、その頭痛が続いていれば、くも膜下出血が疑われます。出血してから時間がたつと、首筋た硬くなりうなずくことができなくなります。
 ただちに頭部CT検査を行い、頭蓋骨の内側で脳の周囲に出血が見られれば、診断はつきます。脳の出血を示す高吸収域が、白く映し出されますので、出血の有無、部位、程度などが確実に診断できます。
 その後すぐに、脳血管撮影を行い、破裂した脳動脈瘤や脳静動脈奇形の診断をします。

発症して数日後

 

 軽症のくも膜下出血の場合には、出血後数日たつと、出血した血液が吸収されてしまい頭部CTには写らないことがあります。
 このような場合には、腰椎穿刺(ようついせんし)を行って、脳脊髄液を採取します。脳脊髄液の中に血液が混じっていれば、くも膜下出血が起こった証拠となります。

MRIなど

 

 MRIのFLAIR法という撮影法を行うことで、診断できることもあります。


くも膜下出血の治療法は?

安静を保つ

 

イメージ画像 呼吸、血液循環などの全身状態を改善する治療を開始し、興奮や苦痛を除いて安静をはかります。
 血圧や脳圧を下げる薬剤も使用します。

可能であれば手術

 

 破裂した脳動脈瘤によるくも膜下出血の場合は、再破裂予防のため、可能であれば手術を行います。
 通常は動脈瘤に対して、クリッピングと呼ばれる手術を行います。
 最近では、血管内手術といって、血管の中へ細いカテーテルを挿入し、コイルを入れて動脈瘤の内側に詰める閉塞術を行うこともあります。

重症例では手術できないことも

 

 クリッピング術を行うか、閉塞術を行うかは、患者さんの年齢、動脈瘤の部位、大きさ、形、合併症などによって決まります。
 症状があまりにも重症の場合には、手術ができないこともあります。


くも膜下出血かなと思ったら?

すぐに受診を

 

イメージ画像 くも膜下出血は、発症後1時間くらいの間の状態変化が、その後の病状を左右することが多いです。
 また、6時間以内に再び出血するケースも少なくありません。
 救急車を呼ぶなどして、患者さんを一刻も早く脳神経外科のある病院へ運ぶ必要があります。
 乱暴な運び方をしてはいけないのはもちろんですが、手当てをしながら静かに運ばなければならないため、救急車の出動を依頼するのが良いでしょう。
 頭痛が軽い場合であっても、念のために受診しておくと良いでしょう。

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