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放射線腸炎


放射線腸炎の概要は?
おもな症状
  悪心・嘔吐
下痢
腹痛
しぶり腹
起こりやすい合併症
  腸閉塞

放射線腸炎ってどんな病気?
腸管粘膜は放射線の影響を受けやすい
  イメージ画像 腸管粘膜は、骨髄(こつずい)や性腺(せいせん)と同じように、常に活発に細胞が造られています。そのため腸管粘膜は、放射線感受性の高い組織です。
 放射線は活発な細胞新生に対して強い抑制効果を示すため、腸管粘膜、骨髄、性腺などの組織は強い放射線照射によって、容易に障害を受けてしまいます。
本来は治療目的
   活発な細胞新生のある組織は放射線の影響を受けやすいため、細胞分裂の活発な悪性腫瘍に対して放射線照射治療が行われています。
 しかしこうした治療目的の放射線照射でも、目的外の部位の腸管などに放射線が過剰に照射されると、腸管粘膜の壊死(えし)が起こってしまいます。そのため、ひどい下痢といった症状を引き起こします。
 放射線腸炎は、直腸に起こりやすい放射線治療の副作用ですが、小腸でも起こります。最近では予防処置がとられているため、発生は減少しています。
放射線食道炎
   放射線腸炎と同様、放射線治療を受けた後に起こります。
 放射線治療の2週間〜3週間後に起こる急性放射線食道炎と、2ヶ月以上たってから起こる慢性放射線食道炎に分類されます。
 胸焼け、胸骨(胸の中央にある縦に長い骨)の裏側の痛み、心窩部(みぞおち)の痛み、しみる感じなどの症状が現れます。

放射線腸炎の原因は?
ガンの放射線療法
  イメージ画像 放射線腸炎は、腹部の悪性腫瘍に対する放射線治療によって発症します。放射線照射の目標となる臓器と隣接しているか、前後に存在する腸管に対して過剰に放射線が照射されてしまうことで起こります。
近年は減少しています
   放射線照射と言っても、通常の胃透視、大腸造影など、一般的な検査による放射線照射量では、放射線腸炎の原因になるようなことはありません。
 最近の放射線治療は、放射線障害を防ぐ治療法が確立されてきているので、重い障害は起こりにくくなっています。

放射線の限度量と医療で使う放射線は?
放射線被曝の限度量
  イメージ画像 放射線の被曝は、できるだけ少ないことに越したことはありません。
 国際放射線防護委員会(ICRP)では、やむを得ない場合の上限値として放射線の線量限度の勧告を行っています。
 1990年(平成2年)、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告によると、放射線作業従事者は5年間で100mSv(100ミリシーベルト)、かつ1年間で50mSv(50ミリシーベルト)となっています。一般公衆(医療行為とは別)では1年間で1mSv(1ミリシーベルト)となっています。
医療で使う放射線
   放射線による検査や診断における被曝量は、検査の種類、身体の部位にもよりますが、多くはひとつの検査につき0.1mSv〜数mSvというわずかなものです。
 放射線療法では、ガン細胞に最大のダメージを与えて、健康な細胞には最小限の影響しか与えないように被曝線量は決まっています。
 1日あたり2Gy(2グレイ)、週5日、6週間の計30回で合計60Gy(60グレイ)が標準線量であり、最大線量です。ただしガンの種類や大きさ、進行度によって線量は決定されます。
シーベルトとグレイ
   Sv(シーベルト)は、放射線が人体に与える影響を計る単位で、線量当量です。
 Gy(グレイ)は、生体に吸収されるエネルギー量を表す単位で、吸収線量です。

放射線腸炎の症状は?
悪心、嘔吐、下痢
  イメージ画像 放射線照射後に、難治性の悪心(おしん)、嘔吐、下痢が起こります。
 放射線照射から、数時間後に症状が現れることもありますが、一般的には1週間〜2週間後に症状が現れます。まてなケースでは、数年後に症状が現れることもあります。
 下痢は粘液が混じることが多く、排便してもまだ残っている感じがしたり、痛みをともなうことがあります。血便になることもあります。
慢性の放射線腸炎
   腸管粘膜の炎症が慢性化すると、腸管の狭窄(きょうさく)を起こすことがあります。この場合、腸閉塞の症状が現れます。

放射線腸炎の診断は?
放射線治療の記録と症状から
  イメージ画像 放射線照射の記録と症状から、特別な検査を行わなくても診断することができます。
 大腸内視鏡を使って、粘膜の障害の程度を確認することもあります。
放射線腸炎の治療法は?
まずは安静に
  イメージ画像 繊維分の少ない食事を摂取する食事療法と、安静を保つことが基本となります。自然には治りにくく、病変が進むと潰瘍ができたり、狭窄を起こしたりします。
 薬物療法としては、鎮痙薬(ちんけいやく)、ロペミンなどの止痢薬などの内服投与を行います。また、プレドニンなどのステロイドホルモンの腸内投与(注腸)などを行います。
症状によっては
   粘膜の障害が治れば、症状も改善されます。しかし、時間とともに悪化する場合もあります。
 薬物療法の効果がない場合、人工肛門の増設が検討されます。
 腸管の狭窄が起こった場合は、内視鏡による拡張や、手術が必要になることもあります。

放射線腸炎かなと思ったら?
担当医の診断を
  イメージ画像 何らかの病気のために放射線照射による治療を受けた後、腹痛や下痢が起こった場合、早めに担当医の診察を受けるようにしてください。
 病院に行くまでは消化の良い食事を摂り、安静にします。入浴で腹部を温めるのも良いでしょう。
放射線にまつわる病気
   事故などによる放射線被曝によって起こる放射線障害、事故や放射線治療によって起こる放射線皮膚炎放射線肺炎、放射線の影響を受けやすい腸管粘膜に起こる放射線腸炎などがあります。この他にも、放射線角化症、放射線膀胱炎などがあります。
 通常、放射線治療によって発症しますが、原子力発電所や放射線を取り扱う機器の事故によって被曝し、発症することもあります。
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