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 糖尿病網膜症

糖尿病網膜症ってどんな病気?
失明の恐れ
  イメージ画像 糖尿病網膜症は、糖尿病による眼の合併症のひとつで、放置すると失明にいたる恐ろしい病気です。
 日本では、糖尿病網膜症によ視覚障害は増加傾向にあり、中途失明の第一原因になっています。
発症予防と進行抑制
   ある程度進行すると、途中から糖尿病自体を治療して血糖値が正常になったとしても、網膜症は改善することはありません。
 したがって、糖尿病網膜症の発症予防や、進行の抑制が、この病気の大きな治療目的になります。

糖尿病網膜症の原因は?
適切に治療を受けていれば発症しない
  イメージ画像 糖尿病が原因で網膜症が発症するので、糖尿病初期から血糖値が良好に維持されていれば、網膜症を発症することはほとんどありません。
 しかし、未治療、もしくは血糖値が良好にコントロールできない状態のまま数年以上放置しておくと、糖尿病網膜症が発生してしまいます。
4つの原因
   高血糖が原因の代謝異常の結果、網膜症が発症し、進行していきます。そのおもなメカニズムとしては、以下の4つが考えられます。
    ポリオール代謝経路の亢進
    酸化ストレス
    終末糖化産物(しゅうまつとうかさんぶつ)の蓄積
    プロテインキナーゼCの活性化
網膜の血管障害
   病理学的には、糖尿病網膜症は網膜血管障害が基本病態で、網膜毛細血管の壁細胞、血管内皮細胞(けっかんないひさいぼう)の障害に引き続き、網膜毛細血管瘤(もうまくもうさいけっかんりゅう)が形成されます。
血管の透過性亢進
   網膜の血管障害は、血管の透過性亢進(とうかせいこうしん)を引き起こし、点状出血や、硬性白斑(こうせいはくはん)もあらわれてきます。
 なお、正常な網膜血管は他の血管とは異なり、血液成分が血管外に漏れることはありません。
硝子体出血へ
   さらに進行すると、網膜毛細血管閉塞(もうまくもうさいけっかんへいそく)を引き起こし、軟性白斑(なんせいはくはん)があらわれてきます。
 そしてついには、それらの網膜虚血が大きな引き金となって網膜新生血管が発生し、硝子体出血などを引き起こします。
原因物質
   以前から、網膜血管の新生を促す物質の存在が予測されていましたが、最近の研究によって、その物質は血管内皮増殖因子VEGFというサイトカインが主役になっていることがわかってきました。

糖尿病網膜症の症状は?
視野中心部のゆがみ、視力低下
  イメージ画像 糖尿病網膜症は、急激に進行するわけではなく、数年から10年以上かけて徐々に進行していきます。
 網膜の中心部である黄斑部(おうはんぶ)に浮腫(ふしゅ)・むくみが発生すれば、黄斑症になります。視野中心部のゆがみや、視力低下を自覚してきます。
 軟性白斑や、網膜出血が黄斑部に多発するようになると、部分的な視野異常を自覚することもあります。
かすみ目、飛蚊症、視野欠損
   軽度の硝子体出血では、かすみや、視野に蚊が飛んでいるように見える飛蚊症(ひぶんしょう)があらわれます。
 高度の硝子体出血では、視力低下を自覚します。
 網膜剥離(もうまくはくり)が進行すると、網膜剥離に相当する部分の視野欠損が自覚されるようになります。
自覚症状が出てからでは手遅れ
   いずれの症状でも、自覚症状が認められるのは、ほとんどが増殖網膜症の時期になってからで、その時点ではすでに手遅れの状態になっていることがほとんどで、それがこの病気の特徴であり、恐ろしいところです。

糖尿病網膜症の診断は?
糖尿病と診断されたら眼科も受診
  イメージ画像 糖尿病網膜症の診断には、眼底検査と、蛍光眼底造影検査を必ず行います。
 内科で糖尿病と診断されたら、必ず眼科も受診して、網膜症の有無を調べるための眼底検査を受ける必要があります。
眼底検査と、蛍光眼底造影検査
   眼科では、まず視力検査と、眼圧検査のあと、眼底検査が行われます。眼底検査で網膜症が認められたら、精密検査として、蛍光眼底造影検査が行われます。
 眼底検査では、網膜出血、硬性白斑、軟性白斑、硝子体出血、血管新生増殖膜など、ほとんどすべての眼底変化を診断することができますが、網膜症の予後にもっとも影響する血管閉塞の評価は行えません。
 蛍光眼底造影検査では、新生血管の程度、血管閉塞の範囲、網膜浮腫の程度を正確に診断することが可能です。
超音波検査なども
   さらに、形態学的な検査としては、超音波検査、OCT検査があります。
 視機能検査としては、視野検査、網膜電位図、色覚検査、フリッカーテストなどが行われることがあります。
見分けるべき疾患
   見分けるべき疾患としては、網膜静脈閉塞症などの網膜出血を起こす、すべての疾患があてはまります。
 眼底検査だけでも、その特徴的な所見から、ほとんどの場合は見極めが可能です。

糖尿病網膜症の治療法は?
血糖値のコントロールと罹患期間
   糖尿病網膜症の発症、進行には、血糖値のコントロールの良否と、罹病期間が大きく影響しています。その進行を防ぐためには、血糖値を下げる必要があります。
 しかし、やみくもに血糖値を下げるのが良いわけではりません。
血糖コントロールの基準
   罹患期間が長く、進行した網膜症で、長期間無治療・またはコントロール不良の症例では、血糖値を急激に下げると短期間のうちに悪化してしまうことが多くあります。
 現在では、血糖コントロールの基準として、ヘモグロビンA1c(Hb1c)が6.5%未満を目標としていますが、前増殖網膜症、もしくは増殖網膜症のある症例のコントロール改善速度としては、1ヶ月にヘモグロビンA1c(Hb1c)を0.5%程度のペースで下げていくことが適切だと考えられています。
高血圧の治療
   血圧が網膜症などの、糖尿病合併症に影響することが証明されています。
 高血圧の治療も、網膜症にとって重要になります。
網膜症に有効な薬剤がない
   厳格な血糖コントロールが網膜症の進行予防には必要ですが、実際の臨床では、それぞれの患者さんの症例をすべて良好に管理するのは不可能です。
 合併症として、網膜症を目標にした薬物治療が望まれていますが、現在は網膜症に有効な薬剤は開発されていません。
網膜レーザー光凝固
   糖尿病網膜症に対する眼科的治療法は、網膜レーザー光凝固(もうまくれーぜーひかりぎょうこ)、硝子体手術があります。
 網膜レーザー光凝固は網膜に凝固斑を作るために、視野障害、色覚異常、視力低下などが発生することがあります。単純網膜症の時期から、この治療法をもちいるべきではありません。
 網膜レーザー光凝固が適しているのは、すでに血管新生が発生している増殖糖尿病網膜症の病期です。血管新生の発症を予防するために、前増殖糖尿病網膜症の病期に行うのが、もっとも適切だと考えられています。
硝子体手術
  イメージ画像 硝子体出血のある症例では、網膜レーザー光凝固自体が不可能になってしまいます。さらに、網膜レーザー光凝固に反応しない黄斑症も大きな失明の原因になっています。
 このようなケースでは、硝子体手術が最後の治療法となります。硝子体手術では、硝子体出血を除去するとともに、硝子体出血や、牽引性網膜剥離(けんいんせいもうまくはくり)の原因になっている血管増殖膜を取り除き、網膜を元の位置に戻すことが目的です。
 失明例は、十数年前に比べると、激減しました。

糖尿病網膜症かなと思ったら?
適切な治療で失明を予防
  イメージ画像 現在では、糖尿病網膜症に対する有効な薬剤が開発されていません。糖尿病初期の段階から、血糖と血圧のコントロールが、網膜症の発症予防に大切となります。
 不幸にして網膜症が発症してしまった段階では、適切な時期に網膜レーザー光凝固治療や、硝子体手術が行われることが大切になります。
 内科と眼科の定期的な通院治療が必要になります。適切な治療さえ受ければ、ほとんどの症例で糖尿病網膜症による失明は防ぐことができると考えられています。
自己管理も大切
   内科医と眼科医との連携、患者さん自身の自己管理が、糖尿病網膜症による失明を予防する上で大切になります。

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