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血糖値のコントロールと罹患期間 |
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糖尿病網膜症の発症、進行には、血糖値のコントロールの良否と、罹病期間が大きく影響しています。その進行を防ぐためには、血糖値を下げる必要があります。
しかし、やみくもに血糖値を下げるのが良いわけではりません。 |
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血糖コントロールの基準 |
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罹患期間が長く、進行した網膜症で、長期間無治療・またはコントロール不良の症例では、血糖値を急激に下げると短期間のうちに悪化してしまうことが多くあります。
現在では、血糖コントロールの基準として、ヘモグロビンA1c(Hb1c)が6.5%未満を目標としていますが、前増殖網膜症、もしくは増殖網膜症のある症例のコントロール改善速度としては、1ヶ月にヘモグロビンA1c(Hb1c)を0.5%程度のペースで下げていくことが適切だと考えられています。 |
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高血圧の治療 |
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血圧が網膜症などの、糖尿病合併症に影響することが証明されています。
高血圧の治療も、網膜症にとって重要になります。 |
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網膜症に有効な薬剤がない |
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厳格な血糖コントロールが網膜症の進行予防には必要ですが、実際の臨床では、それぞれの患者さんの症例をすべて良好に管理するのは不可能です。
合併症として、網膜症を目標にした薬物治療が望まれていますが、現在は網膜症に有効な薬剤は開発されていません。 |
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網膜レーザー光凝固 |
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糖尿病網膜症に対する眼科的治療法は、網膜レーザー光凝固(もうまくれーぜーひかりぎょうこ)、硝子体手術があります。
網膜レーザー光凝固は網膜に凝固斑を作るために、視野障害、色覚異常、視力低下などが発生することがあります。単純網膜症の時期から、この治療法をもちいるべきではありません。
網膜レーザー光凝固が適しているのは、すでに血管新生が発生している増殖糖尿病網膜症の病期です。血管新生の発症を予防するために、前増殖糖尿病網膜症の病期に行うのが、もっとも適切だと考えられています。 |
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硝子体手術 |
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硝子体出血のある症例では、網膜レーザー光凝固自体が不可能になってしまいます。さらに、網膜レーザー光凝固に反応しない黄斑症も大きな失明の原因になっています。
このようなケースでは、硝子体手術が最後の治療法となります。硝子体手術では、硝子体出血を除去するとともに、硝子体出血や、牽引性網膜剥離(けんいんせいもうまくはくり)の原因になっている血管増殖膜を取り除き、網膜を元の位置に戻すことが目的です。
失明例は、十数年前に比べると、激減しました。 |