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抗精神病薬の副作用


抗精神病薬の種類

統合失調症などの治療薬

 

イメージ画像 幻覚や妄想など、知覚や思考の異常を抑え、病的な興奮状態を鎮静化させる作用があります。
 統合失調症、躁病(そうびょう)、妄想などの精神病症状をともなううつ病、高齢者や手術後に起こる意識混濁をともなうある種の興奮状態・せん妄などの治療に使用されます。

定型抗精神病薬

 

 クロルプロマジンという精神病薬の登場によって、1950年代から統合失調症の治療に抗精神病薬が使われるようになりました。
 その後、ハロペリドールなどが開発され、陽性症状に有効な治療薬となりました。
 これらは定型抗精神病薬(ていけいこうせいしんびょうやく)と呼ばれ、脳のドーパミン受容体の遮断によって回復した陽性症状は、脳ドーパミンの過剰な作用が関与しています。

非定型抗精神病薬

 

 1996年、リスペリドンの使用が開始され、現在では非定型抗精神病薬が主流の時代になりました。
 非定型抗精神病薬は、セロトニンとドーパミン受容体などを拮抗し、引きこもり、意欲低下などの陰性症状に対して効果が期待できるようになりました。

おもな抗精神病薬

 
種類 一般名 商品名・薬品名
定型抗精神病薬 ハロペリドール セレネース
ピモジド オーラップ
クロルプロマジン コントミン
レボメプロマジン ヒルナミン
プロペリシアジン ニューレプチル
ペルフェナジン PZC
スルピリド ドグマチール
ゾテピン ロドピン
オキシペルチン ホーリット
非定型抗精神病薬 リスペリドン リスパダール
オランザピン ジプレキサ
クエチアピン セロクエル
ペロスピロン ルーラン
アリピプラゾール エビリファイ
ブロナンセリン ロナセン

パーキンソン病様の症状・錐体外路症状

急性

 

イメージ画像 定型精神病薬の服用によって、起こる場合のある急性の副作用があります。
 急性の副作用が出た場合、すぐに処方を見直すべきです。定型精神病薬を減量させ、非定型精神病薬に切り替えたり、抗パーキンソン薬を加えるなどして、治療を継続します。
家庭の医学:パーキンソン病とは?

 

パーキンソニズム

   

 身体が硬くなり、動きが鈍くなります。手指、上肢、頭部、舌などに震えが出て、小股で歩くようになります。
 顔は仮面のようになり、ヨダレを垂らし、発語はゆっくりで、単調になります。
 文字を書くと、小さい字になります。

 

急性ジストニア

   

 若い人の場合、1週間以内に筋肉の緊張異常が現れることがあります。
 顔や首など身体の筋肉郡が収縮し、ひねり運動が現れ、首が斜めにねじれたり、舌が突出したりします。

 

急性アカシジア

   

 落ち着いて座っていることができず、立ったり座ったり、歩き回ったりします。
 焦り、不安、不眠などの症状がともなうこともあります。

遅発性

 

 長期間の服用によって現れる、遅発性の副作用です。

 

遅発性ジスキネジア

   

 定型精神病薬を長期間に渡って服用した場合、または服用を中断した時に現れます。
 入院患者さんの15%〜20%に現れる、比較的、頻度の高い副作用です。
 症状は、口の周囲、顔面の異常運動が多いです。口をモグモグとさせたり、舌を突き出したり、唇を尖らせたり、舌を動かす時もあります。
 治療には、クロニジン(カタプレス、降圧薬)が効果的です。

 

遅発性ジストニア

   

 急性ジストニアと同様に、突然、筋肉郡が意思とは無関係に収縮し、首が斜めになる斜頸の症状が現れます。
 反復的な運動をしたり、異常姿勢を起こし、歩行が難しくなることもあります。
 特徴的な筋収縮を起こす症候群で、痛みをともないます。
 治療には、クエチアピン(セロクエル)を使用します。発生頻度は1.5%〜2%と低いものの、治療は困難です。

 

ピサ症候群

   

 身体が強直したまま、屈曲する姿勢が特徴の症候群です。
 身体の片側にのみ現れるジストニアで、その独特な姿勢からピサ症候群と名付けられました。

 

遅発性アカシジア

   

 急性アカシジアと、同じ症状が現れます。
 治療には、クロナゼパム(リボトリール)を使用します。


乳汁分泌

ホルモンバランスの影響

 

イメージ画像 定型精神病薬の服用によって、出産していないのに乳汁分泌が生じたり、生理不順になったり、無月経になることがあります。これらの症状は、血中プロラクチンというホルモン濃度が高値になるために起こります。
 脳の下垂体前葉(かすいたいぜんよう)という部位で作られるプロラクチン細胞は、ドーパミンによって分泌は抑制されます。
 定型精神病薬によって、ドーパミンを拮抗し、抑制が外されるため、プロラクチンが過剰に血液中に放出されてしまいます。

非定型抗精神病薬に変更を

 

 非定型精神病薬では、プロラクチンを一時的に増加させることはありますが、乳汁分泌や生理不順などの副作用は少なくなります。
 そのため、定型精神病薬から、非定型精神病薬に切り替えると良いでしょう。


水中毒

血液濃度が薄くなる

 

イメージ画像 精神疾患の治療薬を服用している患者さんの場合、喉が渇くことが多く、水分を多く飲み過ぎてしまいます。
 水分を極端に多く飲み過ぎて、1日3リットル以上も飲むようになると、血液が薄くなってしまい、血液中のナトリウム濃度が低下してしまいます。
 ナトリウム濃度の標準血液濃度は128nmol/l〜130nmol/lですが、115nmol/lくらいに低下すると、水中毒と呼ばれる症状が現れます。

水中毒の症状

 

 初期症状では、眠気、食欲不振、悪心、嘔吐、頭痛、腹痛などが現れます。
 さらに進行すると、全身痙攣、昏睡を起こすこともあります。
 アメリカの水の大飲みコンテストでは、15分間で7リットルもの水を飲み、死亡した例もあります。ナトリウム濃度が100nmol/l以下になると、生命に危険を及ぼすこともあります。


抗精神病薬中毒

自律神経系の副作用

 

イメージ画像 眠気が現れ、判断力が鈍くなり、周囲に無関心になるため、自動車の運転、危険な作業は避けるべきです。
 血管、呼吸、消化器など、身体のすべての自律神経系を抑える作用があるため、起立性低血圧、不整脈、呼吸抑制、口の渇き、鼻詰り、光が眩しい、尿が出せなくなる尿閉(にょうへい)、嘔吐、イレウス(腸閉塞)などの副作用が見られます。

錐体外路系の副作用

 

 筋の動き、運動を調節する、錐体外路系(すいたいがいろけい)に作用するため、パーキンソン症候群を起こします。
 肝臓、骨髄(こつずい)にも作用し、黄疸(おうだん)、白血球減少症を起こします。

悪性症候群

 

 悪性症候群では、急激な高熱、筋肉が硬くなる筋強剛、頻脈、発汗、血圧上昇、頻呼吸、意識障害、無言、無動などの症状が現れ、危険な状態になります。
 すぐに抗精神病薬の服用を中止し、医師の診察を受けるようにしてください。

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