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社会不安障害・SAD


社会不安障害・SADってどんな病気なの?

注目を浴びる行動に不安を感じる病気

 

イメージ画像 結婚式のスピーチに強いプレッシャーを感じてしまい、出席できなくなる。他人との食事の席で、料理がのどを通らないほど恥ずかしくなる。
 このように、人目を浴びる行動への不安によって強い苦痛を感じたり、身体症状があらわれ、次第にそうした場面を避けるようになり、日常生活に支障をきたすことを『社会不安障害』といいます。英語では、『Social Anxiety Disorder』、略して『SAD』と呼びます。

社会的にあまり知られていません

 

 社会不安障害は、思春期前から成人早期にかけて発症することが多く、慢性的になりやすい病気です。人前に出ることを恐れるようになると、うつ病などのさらなる精神疾患の引き金になることもあります。
 アメリカでは7人〜8人に1人がこの病気で苦しんでいると言われています。日本国内でも、推定で約300万人以上の患者さんがいると言われています。しかし、社会的には、まだあまり知られていません。
 社会不安障害は特別な病気ではなく、海外では多くの患者さんが医療機関で治療を受けています。


社会不安障害・SADの症状は?

現れやすい場面

 

イメージ画像 社会不安障害が発生しやすい状況には、以下のようなものがあります。
 一例をあげるとすると、学校の授業や会議で発言を求められる時、突然指名されてあがっているヒマもない場合は普段通りに発言できますが、座席順に発言を求められ、前もって発言が予定されているような場合には頭の中が真っ白になってしまい固まってしまうなど。

 

偉い人の相手をするのが苦手
人前で食事ができない
人前で話をするのが苦手
人前で文字が書けない
初対面の人に会ったり、話をするのが苦手
会議など人々の注目を浴びるのが怖い

あらわれやすい症状

 

イメージ画像 社会不安障害は、強い不安症状が自律神経に作用して、さまざまな身体症状を発症することがあります。現れやすい症状には、以下のようなものがあります。

   

顔が赤くほてる・硬直する、または青くなる
脈が速くなり、動悸、息苦しくなる
汗をかく
頭が真っ白になる
めまいがする
手足、全身、声の震え
声が出ない
吐き気がする、胃腸の不快感
口が渇く
トイレが近くなる、または尿が出にくくなる


似ている病気

恥ずかしがりとの違い

 

 社会不安障害は、恥ずかしがり屋や、上がり症などの性格の問題ではなく、精神療法や、薬物療法によって症状が改善できる心の病気です。
 社会不安障害と、恥ずかしがり屋な性格との違いには、以下のようなものがあります。

恥ずかしがりの性格 社会不安障害
恥ずかしさを感じても、じょじょに慣れてくる ある決まった場面では強い不安を感じる
他人と比べて、恥ずかしさが強い自覚はない 他の人より、羞恥心、不安感、赤面、震えなどが強いと自覚している
不安を感じても強い身体症状はあらわれない 強い不安を感じると、赤面、震え、吐き気などの身体症状が出る
恥ずかしさを覚悟しても、その場に参加できる 不安に感じる場面に立ち会うのを避けてしまう
日常生活に大きな影響はない 日常生活に支障をきたしている

パニック障害との違い

 

 パニック障害パニック障害は、社会不安障害と同じように、人前で症状が出る病気です。場所、時間を問わず、突然発作が起こり、ときには全身のこわばりや、呼吸困難で、『死んでしまうのではないか』という気持ちが起こるほど、苦しい症状に襲われることがあります。
 社会不安障害は、社交的場面がきっかけとなり、パニック障害とは区別されます。

パニック障害 社会不安障害
場所や時間を問わない ある決まった場面で強い不安を感じる
『死ぬのでは』と思うほどの呼吸困難と緊張 顔がほてる、息苦しくなる
社交的場面がきっかけになるわけではない 社交的場面がきっかけとなる
人の多い状況では、症状が出ないこともある 人の多い場所では、不安になりやすい

社会不安障害・SADの原因は?

まだ詳しくわかっていません

 

イメージ画像 社会不安障害の原因は、まだはっきりとわかっていません。
 脳内にあるセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れてしまうことが、発症に関わっているのではないかと考えられています。
 脳にはおよそ140億個もの神経細胞があり、それらの神経細胞は、神経伝達物質の制御を受けることで、脳全体の機能を調節しています。セロトニンもそうした神経伝達物質のひとつです。
 また、大勢の前で挨拶をしたり、発表をする場面で、異常に緊張したことをふと自覚したことがきっかけとなって、発症することもあります。


社会不安障害・SADの診断は?

M.I.N.I.

 

 M.I.N.I(the Mini-International Neuropsychiatric Interview)という面接法によって診断します。
 4項目すべてに当てはまる場合は、社会不安障害が疑われます。

 

 人前で話をする、食事をする、字を書くなど、人から注目されていると思うと、怖くなったり、とまどったりする。

 

 自分でも怖がりすぎだと自覚している。

 

 わざわざ避けたり、じっと我慢しなければいけない状態になる。

 

 仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じることがある。

LSAS-J

 

 LSAS-J(Liebowitz Social Anxiety Scale日本語版)という尺度を用いて、重症度を診断します。
 せっかくなのでJavaScriptを使ったチェックシートを作ろうかと思ったんですが、時間がかかりそうなのでただの表です(^^ゞ。作ってくれる心優しき勇者様がおりましたら、ご連絡ください。

  恐怖感・不安感 回避
  0:まったく感じない
1:少しは感じる
2:はっきりと感じる
3:とても強く感じる
0:まったく回避しない
1:回避する(3回に1回以下)
2:回避する(2回に1回くらい)
3:回避する(3回に2回以上)
人前で電話を掛ける
少人数のグループ活動に参加する
公共の場で食事をする
人と一緒に公共の場所でお酒(飲み物)を飲む
権威ある人、目上の人と話をする
観衆の前で何か行動したり話したりする
パーティーや集会に参加する
人に姿を見られながら仕事(勉強)をする
人に見られながら字を書く
あまりよく知らない人に電話をする
あまりよく知らない人たちと話し合う
まったくの初対面の人と会う
公衆トイレで用を足す
他の人たちが着席して待っている部屋に入っていく
人々の視線を浴びる
会議で発言する
試験を受ける
あまりよく知らない人の意見に反論する
あまりよく知らない人と目を合わせる
仲間の前で報告をする
誰かを誘おうとする
店に品物を返品する
パーティーや集会を主催する
強引なセールスマンの誘いに抵抗する

 う、う、う、スマン、プリントアウトするなどして自分で計算してください(^^ゞ

95点〜100点以上  重度。
 働くことができない、会社にいけないなど、社会的機能を果たすことができなくなり、活動能力がきわめて低下した状態になってしまっている。
80点〜90点  苦痛を感じるだけでなく、実際に社交面や仕事などの日常生活に障害が認められる。
50点〜70点  中等度。
約30点  境界域。

社会不安障害・SADの治療法は?

おもな治療法は2つ

 

 社会不安障害の治療法には、薬物療法と、精神療法があります。2つの利用法は、単独で行われたり、併用して行われたりします。

薬物療法

 

イメージ画像 薬物療法は、不安感情を抑えることを目的として、学校や職場を避けるなどの回避行動を減らして、不安時の身体的症状の緩和を図ります。

 

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

   

 神経細胞間のセロトニンの量のバランスを保つ薬です。
 効果が現れ始めるまで、1週間〜2週間ほどかかります。3週間〜2ヶ月のうちに、次第に症状が改善していきます。
 副作用は、始めの1週間にあらわれることが多く、その後、軽減していきます。
 症状が十分に改善したあとも、1年以上の継続的な服用が必要です。
 第一選択で用いられるケースが多い薬です。欧米では、積極的に治療に利用されていて、その効果は日本でも認められています。

 

ベンゾジアゼピン系抗不安薬

   

 SSRIよりも即効性があるため、SSRIの効果があらわれるまでの補助的用法としてもちいられます。また、頓服用としても用いられます。

 

β遮断薬

   

 元々は高血圧症などに用いられる循環器系の薬です。ヨーロッパでは多く用いられています。

精神療法

 

 精神療法は、認知療法と、行動療法を組み合わせて治療が行われるのが一般的です。

 

認知療法

   

 不安な気持ちが起こるメカニズムを勉強し、不安感を引き起こしてしまうパターンを修正できるようにするのが認知療法と呼ばれるものです。
 周囲の人の目や、自分の能力を再確認し、不安が発生していた状況の認知を改めます。同時に呼吸法や、リラックス法、上手な話し方など、不安状況への対処法も合わせて学習していきます。

 

行動療法

   

 不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、刺激に身をさらす『曝露療法(エクスポージャー)』を行います。
 段階的な目標に沿って、じょじょに身体を慣らしていき、不安症状を改善していきます。
 社会不安障害の場合、認知療法と行動療法をグループで行う『集団認知行動療法(CBGT)』も、一般的に行われます。


社会不安障害・SADかなと思ったら?

早めの診察を

 

イメージ画像 社会不安障害は放っておくと、治りづらい病気です。なるべく早めに、専門医の診察を受けることが効果的です。
 初診の時、症状を尋ねられたら、素直に自分自身が抱えている悩みや不安、それにともなう身体症状を伝えましょう。
 専門医は、「どのような治療を、こういう理由で、このような効果が見込まれますが、効果が出てくるまでこのくらい時間がかかります」といった感じで、わかりやすく説明してくれるはずです。薬の効果や、副作用についても、説明してくれるはずです。

何科に行けばいいの?

 

 社会不安障害の診断治療は、精神科、神経科、心療内科などのメンタルクリニックで行います。
 精神科と、神経科という名称は、ほとんど同じ意味で使われており、うつ病うつ病や、統合失調症統合失調症など、心の病気を幅広く手掛けています。心の不安や恐怖によって体調に変調をきたす病気なので、心療内科でも診察を受けることができます。
 かかりつけ医がいましたら、まずはそちらで相談するのがいいと思います。


社会不安障害・SADの良くある質問

治療をはじめて3ヶ月、症状が治まったので薬をやめていい?

 

イメージ画像 一般的に、3ヶ月ほどの薬物療法では、社会不安障害が完治することはほとんどありません。まだ、薬を飲み続けていく必要があります。
 薬の服用期間は患者さんによっても異なるので、主治医に相談してください。

不登校や引きこもりと関係ある?

 

 不登校や、ひきこもりになる原因は、社会不安障害だけではなく、「いじめ」や、「うつ病うつ病」などさまざまです。しかし、社会不安障害と関係がないとも言い切れません。
 社会不安障害の特徴は、自分の不安感や恐怖感が一般の人よりも強いと自覚していますが、子供の場合はそうした自覚がないため、治療の開始が遅れがちになってしまいます。気になるようでしたら、一度、専門医に相談してください。

治療を受ければ、人前に出ても上がらなくなりますか?

 

 人前に出ると上がってしまうのは、誰にでもあることなので、社会不安障害の治療をしても、まったく上がらなくなるということはありません。
 社会不安障害の治療は、性格を変えることではなく、不安を取り除き、社会生活を送ることができるようにするためのものです。

薬の飲み合わせは?

 

 精神疾患系の薬には、飲み合わせによって副作用が起こる可能性があります。他の医療機関で処方された薬を飲む際には、主治医に伝えてください。
 別の医療機関を受診するときも、社会不安障害の薬を服用していることを医師に伝えてください。

薬は一生飲み続けるの?

 

 一生涯、飲み続けなければならないということはありません。症状が改善してくれば、服用量を減らしていき、薬をやめることも可能です。
 しかし治療は長期にわたります。治りかけているときに途中で薬の服用を中止すると、症状が再び現れることがあります。

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