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うつ病の詳細


うつ病ってどんな病気?

概要

 

 強いストレスが引き金となって(本人に自覚がない場合や、ストレスがないこともあります)憂鬱な気分や自責の念がいつまでも続き、不眠や体調不良などさまざまな身体症状を伴う『こころの病気』です。

めずらしい病気ではありません

 

 うつ病の生涯有病率は、WHOの推計によれば15%〜30%とされており、2020年までには『ガン』に次いで人類を悩ませる病気の第二位になるとも予測されています。
 現在では、風邪のように誰でもかかる病気なのですが、欧米の調査ではそのうち3割〜5割の患者さんはうつ病の自覚を持たず、放置されていると報告されています。このような傾向は日本でも同様だと考えられています。
 厚生労働省では、日本人のうつ病有病率は6.5%と報告されていて、日本人の15人に1人は一生のうち一度はうつ病にかかる可能性があると考えられています。
 また、女性のうつ病有病率は8.3%%で、男性の4.2%と比較すると、2倍もうつ病になりやすいといわれています。

うつ病になりやすいタイプ

 

 仕事熱心な人、生真面目な人、几帳面な人、物事に強いこだわりを持つ人。また、世間の秩序を守り、常識を大切にし、いつも他人に気をつかう人。
 ただし、このようなタイプの人すべてがうつ病になるというわけではありません。

内科などでは誤診されるケースも少なくありません

 

 うつ病は本人に自覚があっても、主症状が憂鬱感であるところから、いずれは治まるだろうと自己診断するケースも少なくありません。また、うつ病が疑われる症状で病院(一般診療科)を受診したとしても、身体に出る症状だけの訴えだと、医師から『異常はありません』と診断されることもあります。このような場合、うつ病の患者さんでは、微笑みながら『どうもありがとうございました』ときちんと挨拶して帰る(微笑みうつ病)ケースも少なくないことから、医師側も誤診してしまうことがあります。
 しかし、うつ病は早期から治療を開始しなければ、それだけ苦しみが長く続くだけでなく、ますます重症化して、ついには自殺まで考えるようになります。

単なる気の持ちようではありません

 

 周囲の人に「気分が憂鬱だよ」と訴えると、「気の持ちようだ」とか、「気にしすぎ」などといわれることがあると思います。場合によっては、、「愚痴ばっかりこぼして」と批判されることもあるかもしれません。
 しかし、うつ病は脳内の神経伝達物質の働きが低下して活力不足となり、憂鬱な気分に見舞われるため、単なる気の持ちようではなく、治療が必要になります。

「うつ病」と、単なる「落ち込み」はココが違う

 

イメージ画像 日常生活でも気分が落ち込むことはよくあることです。失恋、仕事での失敗・叱責、友人関係などで気分は落ち込みます。しかし、多くの場合は数時間〜数日で回復し、また元気になり『頑張ろう』と思えるようになります。
 ところが、いつまでたっても気持ちが沈んだまま回復せず、2週間以上も気分の落ち込みが続く場合は、うつ病の可能性が疑われます。
 また、落ち込みの程度はいつも同じというわけではなく、多くの場合は、朝方にひどく落ち込み、夕方から夜にかけて軽くなっていく傾向があります。このように一日の中で気分の落ち込みに変化があることを『日内変動』といい、うつ病の特徴の1つにあげられます。
 悩みや心配があって眠れなかった経験のある人は多いと思います。不眠はうつ病で最もよくあらわれる症状の1つです。うつ病の場合、夜に眠れないことや、早朝から目が覚めてしまうことなどがあります。


うつ病の症状は?

おもな症状

 

こころの症状

からだの症状

気分の落ち込み
睡眠

気分が落ち込み、憂鬱な気分になる
悲しい気持ちになる
なんの希望もなくなる

眠れない
眠りが浅かったり、朝早く目が覚めたりする
朝、目覚めた時が一番ゆううつである
睡眠不足から、頭痛や肩こりに悩まされる

意欲の低下
食欲

これまで好きだったことへの興味や喜びがなくなる
気力が低下して、何をするのもおっくうになる
人付き合いがいやになる
仕事をしたくなくなる
新聞やテレビを見なくなる
身だしなみに関心を払わなくなる

食欲がなくなる。
何を食べても美味しいと思えず、砂を噛んでいるようだ
体重が減った(または増えた)
胃がもたれる。むかつきがある。吐き気がする

あせり・罪悪感
自律神経系

あせってイライラする
根拠もなく、自分の責任だと思う
過去の小さなことを思い出しては悩む

微熱が続く
時々、めまいがする
息切れがする
冷や汗や、寝汗をかく
体がだるい
動いていないのに、疲れやすい
体の動きが遅くなる
トイレが近くなる
便秘、下痢に悩まされる

思考力の低下
ホルモン系

集中力がなくなり、能率が低下する
物事の判断ができなくなる

生理不順が続く
性欲が落ちる

その他、さまざまな症状

 

感情面

意欲や意識面

思考面

妄想面

落ち込む
憂鬱
つまらなく感じる
物悲しい
寂しい
無感動
イライラする
不安
おっくう
やる気がわかない
根気が出ない
寝てばかりいる
興味が持てない
自身がない
身なりに構わない
考えがまとまらない
決断力の低下
ぼんやりしてしまう
頭の働きが鈍る
集中力がない
同じ事を何度も考える
記憶力の低下
罪業妄想
(過去の小さな過ちを悔やむ)
心気妄想
(不治の病にかかっていて助からないと思い込む)
貧乏妄想
(お金がない、貧乏で入院費も払えないと思い込む)

 妄想に関しては、こちらのページを参考にしてください。家庭の医学:幻聴・幻声・妄想幻聴・幻声・妄想


うつ病の特徴は?

一時的な気分の落ち込みは気分転換できる

 

 憂鬱感は誰にでも日常的に起こる感情ですが、うつ病の最大の特徴はこの憂鬱感が長く続くことです。憂鬱な気分が続くと『落ち込み』や『辛さ』を感じます。
 単なる気分の落ち込みであれば、友人との語らいやスポーツ、お酒を飲むなど、いわゆる『気分転換』によって発散できます。

うつ病になると日常生活に支障が出る

 

 しかし、うつ病の場合は、辛さや気分の落ち込みの質と量がはるかに強く、苦しみが深く長く続くのが特徴です。しかも、この辛さや苦しみはお酒やスポーツなどでまぎらわすことはできず、周囲の人たちからも意外と気が付いてもらえません。
 そしで、『なんとかしなければ』と気持ちばかり焦り、ついには自分を責めるようになり、最終的には日常生活に支障をきたすまでになります。

身体的症状も

 

イメージ画像 つらく悲しい気分が続くと、精神的な症状だけでなく、『こころの悩み』が身体面にも現れるようになります。多くの人では、身体症状が先に出ることが多いのもこの病気の特徴です。
 不眠、熟眠障害(眠りが浅い)、早朝覚醒(朝早く目覚める)などの症状が『こころの悩み』に根ざすものであることはおわかりだと思いますが、うつ病では多くの患者さんがこのような睡眠障害を訴えます。また、発汗、頭痛や肩こり、疲労倦怠感、食欲不振なども同じ原因に根ざすものです。
 しかし、うつ病の場合は『こころの悩み』だけにとどまらず、胃の不快感、便秘、腰痛、性欲の減退、めまい、口の渇き、頻尿、女性の場合は月経異常など、一見すると体の病気をうかがわせる異常が出るケースも少なくありません。


うつ病の原因は?

原因は?

 

 うつ病の発症には、病気や怪我、学校や職場の人間関係、子どもの独立、家族や友人の死別といった日常生活のストレスとも関係があると言われています。
 ストレスの感じ方には個人差があります。人それぞれに、価値観やコンプレックスに違いがあるので、他人から見れば嬉しいと思われることでも、本人にとっては重荷と感じたり、ストレスを感じることもあります。
 また、自分ではストレスを自覚しなくても、体や心に負担がかかっていることも考えられます。

 

環境変化によるプレッシャー

   

 就職、昇進、転勤、転職、入学、転校、結婚、出産など。

 

からだへのダメージ

   

 病気、怪我など。

 

何かを失うことへの不安、むなしさ

   

 子どもの独立、失業、離婚、退職、閉経、老化など。

 

別れの悲しみ

   

 家族や友人との死別、ペットとの別れ、失恋など。


うつ病になるメカニズムは?

きっかけはわかっても、メカニズムはまだよくわかっていない

 

 うつ病になるきっかけ(誘因)は捉えることができても、その背景にある『こころの動き』までは、まだ医学的には正確に捉えられていません。ただし、うつ病になる人たちには、真面目で几帳面な性格の人が多いことが指摘されています。

モノアミン仮説

 

イメージ画像 脳内の化学的なメカニズムの研究から、うつ病になったとき脳内で生じている変化がしだいにわかってきました。
 私たちの喜怒哀楽の感情が起こったとき、脳内ではカテコールアミンやセロトニンなど、『モノアミン』と呼ばれる神経伝達物質が放出されます。神経細胞の末端(シナプス)にはモノアミンを受け取り伝達する受容体があり、感情はこの物質が各神経細胞間を移動することによって大脳皮質に伝えられます。なにかのきっかけでモノアミンの放出量が減少したときは、情報伝達経路がうまく機能しなくなります。この状態が、すなわちうつ病なのではないかと考えられています。
 このような考え方を『モノアミン仮説』といいますが、モノアミンの働きにはまだ不明な部分もあります。現在うつ病治療に用いられている薬物の多くは、この仮説に依拠して作られています。


うつ病の種類は?

うつ病の種類

 

 『こころの悩み』を反映するうつ病は、出る症状も多彩なため、症状の違いや脳内でのメカニズムなども加えて、大きく3つの病型に分けられています。

 

内因性うつ病

   

 とくに大きな外的な要因やきっかけがないにもかかわらず、自然に起こるうつ病です。
 神経伝達物質がうまく機能せず、脳内の情報伝達に物理的なトラブルが生じて起こるうつ病なので、抗うつ薬がよく効きます。ただし、このタイプのうつ病でも、詳しく調べると、なにかしらの精神的な要因が発見されるケースが少なくありません。

 

心因性うつ病(反応性うつ病)

   

 精神的なショックが引き金となって起こるうつ病です。
 家族の死、仕事や受験の失敗などから激しく気分が落ち込み、その状態が長く続くものです。

 

身体因性うつ病(うつ状態)

   

 体の病気や薬が脳に影響を与えて起こるうつ病です。
 甲状腺の異常や糖尿病などによるホルモン分泌異常、脳動脈硬化など、またステロイド薬やインターフェロンなどの副作用が原因で起こります。このタイプのうつ病は原因となっている病気の改善や薬剤の服用を止めれば治るため、最近では『こころの病気』としてのうつ病とは区別されています。


うつ病に似ている病気は?

似ている症状の病気

 

 神経症(ノイローゼ、不安障害全般性不安傷害強迫神経症強迫神経症)、心身症(胃潰瘍、慢性胃炎、神経痛、円形脱毛症円形脱毛症メニエール病メニエール病、アトピー性皮膚炎、高血圧)、総合失調症(精神分裂病)統合失調症適応障害などがあります。
 うつ病とは治療法や対処法が異なることもあるため、注意が必要です。


うつ病にもさまざまな呼び名がある

仮面うつ病

 

 『こころの病気』であるうつ病で注意しておいた方がいいのは、身体症状が前面に出て、うつ症状が隠されるため本人が『うつ病』だと気づかないケースが少なくないことです。このような病態のことを『仮面うつ病仮面うつ病』と言います。
 頭痛・肩こり・睡眠障害などが多いのですが、疲れやだるさ(倦怠感)、めまい、動悸、食欲不振、性欲の減退なども伴いやすい症状です。
 このような症状が長く続くとき、内科(胃腸科、循環器科、呼吸器科)や泌尿器科などを受診される患者さんは少なくありません。しかし、うつ病の場合は詳しく調べれば必ず、うつ病特有の精神症状が存在します。体調不良で内科などを受診して、異常がないと診断されても、不快な症状が続くような場合は、一度うつ病を疑ってください。
 なお、うつ病の正確な診断は心療内科または精神科で行われます。

老人性うつ病

 

 高齢者では、体の衰えに喪失体験などのストレスが加わって、うつ病になりやすいといわれています。
 高齢者のうつ病では、身の置き場所がない、物覚えが悪くなったといった不安感や焦燥感が強く出たり、体の症状が前面に出たりすることもあります。

躁うつ病

 

 愉快で爽快な躁の気分が続く躁状態と、ゆううつな気分を繰り返します。
 躁状態のときは、気持ちが高揚していて自信に満ちており、一見、回復したようにも思えるため、なかなか病気と気付かれません。

女性のうつ病

 

イメージ画像 女性は男性の2倍、うつ病になりやすいといわれています。
 月経(女性ホルモン)と関係していて、女性特有のストレスを感じやすい月経前、妊娠、出産、子育て、更年期は症状が出やすくなります。
 詳細は『女性のうつ病女性のうつ病』を参照してください。

 

月経前うつ病

   

 月経の10日前くらいから、イライラする、落ち着かない、怒りっぽくなるといった症状があらわれます。慢性的に続くと、生活に支障が現れるようになります。

 

産後うつ病

   

 産後2〜3週間以降に、イライラするなどの精神症状があらわれます。また、だるさ、頭痛などのからだの症状だけが強くあらわれることもあります。

 

更年期うつ病

   

 閉経前後、卵巣機能の低下によって、女性ホルモンの分泌量が減少するため、自律神経失調症状があらわれます。憂鬱になったり、落ち込んだり、こころの変調もあらわれます。


うつ病の予防法は?

自分の性格を知る

 

 真面目で几帳面、完璧を目指す性格の人は、ストレスがたまり、うつ病になりやすいといわれています。これを避けるには、自分の性格を心得ておくことが大切です。

頑張りすぎない

 

 頑張りすぎないことは、とても大切です。休んだ後に、遅れを取り戻そうと考えたりせず、気持ちに余裕を持たせましょう。うつ病を患う人のほとんどは、『休むってなんだろう?』って休むという感覚がわからないものです。

自分への負担を軽くする

 

 なんでも自分でやろうとするとストレスがたまります。他の人に相談して、手伝ってもらい、なるべく負担を軽くするようにしましょう。

マイペースな生活を

 

 他人がどのように思っているかなどを気にしすぎず、マイペースな生活を心掛けましょう。

環境が変化する時は、十分に休養をとりましょう

 

 生活に変化があったときは、休養をとったり、家族や友人と話す時間を作ったりするように心掛けましょう。

マイペースな生活を

 

 アルコールは気分をリラックスさせる効果があります。
 しかし、大量に飲みつづけると、体に悪影響を与えアルコール依存傾向アルコール依存症になることもあります。コップ1〜2杯程度の適量にしておきましょう。


管理人のうつ病体験談

うつ病の存在すら知らずに生きてきた

   受診を決意した背景には2つの理由がありました。
 子供のころから気になって、いじめの原因になったり、変人扱いされていたチック症があり、いつかちゃんと診察を受けたいと思っていました。
 もう1つの理由が、職場での環境の変化でした。何に対してでも批判をしてくる先輩と共に仕事をしなくてはいけない状態となり、だんだんと気が滅入り、うつ状態になっていきました。急激に痩せ細り、口数も減っていき、同僚にどう見てもおかしいので病院に行ってみたらと言われました。同僚に指摘されて初めて、今の自分がいつもと違うことに気が付き、『うつ病』という病気があることを知りました。

家族の理解は得られず

 

 私が最初に診察に行ったのは総合病院の精神科でした。しかし、親に相談した結果、「精神科なんて行くもんじゃない」と強く反対されました。自分自身でも、精神科にある種の偏見があり、自分の行くところではないと思っていました。総合病院ならばいろいろな診療科目があるので精神科にかかるというのがバレづらいと思っての判断でした。
 親からの叱責を受けてからの診察となったので、自分の症状を正しく伝えることは罪なことなんだと思い込んでしまい、正しい診察を受けることができませんでした。
 その後しばらくして、家族には秘密にして診察を受けた結果、『うつ病』だと診断されました。チック症に関しては、治療が必要なほどひどいわけではないので、治療は行われませんでした。
 ストレスを感じていることはありますかという問いに、答えることができませんでした。自分で何がストレスなのか認識できない状態でした。仕事をやりすぎず、休むことが大切だといわれましたが、当時の私にとって、その言葉は意味を持ちませんでした。『休むってなに?』という状態で、休むには何をすればいいのかも理解することができない状態でした。
 人に迷惑をかけると思い口に出すことはできませんでしたが、このときすでに自殺願望を持つまでに、うつ病は進行していました。

職場でも家族でも孤立

 

 診察を受けながら通勤していましたが、精神科に通っていることが同僚の口から先輩に伝わってしまい、ふたたび批判の矢面に立たされてしまいました。このことがきっかけとなり、会社に通えなくなってしまいました。現在でもこのときのことを忘れることができずにいます。
 結局、職場にも自分の病気に関して理解してくれる人はおらず、家族からも孤立し、自分の身の回りのすべてがストレスの原因となってしまい、私のうつ病は悪化していきました。

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