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塩酸ドネペジル |
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アルツハイマー病の治療薬として認可され、市販されている薬は、塩酸ドネペジル(アリセプト)だけです。
アルツハイマー病の患者さんの脳では、アセチルコリンを作り出す酵素の働きが弱くなっており、アセチルコリンが減少してしまいます。
塩酸ドネペジルはアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの働きを止めるように作用し、減少したアセチルコリンを増加させます。
これは進行を遅くする効果を期待して使用されます。 |
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日本で開発された薬 |
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塩酸ドネペジルは日本で開発された薬ですが、最初はアメリカでアルツハイマー病に対する効果が証明されました。
3年後、日本国内でも認知機能、日常動作、生活の質の改善が認められたことから、1999年に認可されました。 |
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服用量 |
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最初に認められたのは、軽度〜中等度のアルツハイマー病の患者さんへ3mg錠と5mg錠でした。
2007年以降、高度のアルツハイマー病の患者さんへ10mg錠の処方が認可されました。
投与にあたっては、塩酸ドネペジルを1日3mg、1週間〜2週間後に5mgに増量します。
高度のアルツハイマー病には10mgを投与することもあります。 |
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塩酸ドネペジルの効果 |
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塩酸ドネペジルは認知障害のみならず、家族や介護者の印象評価の面、一部の精神症状や行動障害にも効果がみられると報告されています。 |
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薬の副作用 |
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塩酸ドネペジルはすぐに脳に入り込みますが、消化器に副作用が現れることがあります。
吐き気、嘔吐、唾液が出る、脈が遅くなる、汗が出るなどを訴える人もいます。
消化器の副作用に対しては、胃薬を服用します。
脈が遅くなるため、長時間の入浴は避けるようにしてください。 |
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外国と日本の治療格差 |
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外国では、塩酸ドネペジル以外のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬として、ガランタミン、リバスチグミンがアルツハイマー病に使用されています。日本国内での試験は終わりましたが、認可には至りませんでした。
外国では、アセチルコリンの働きを促進し、グルタミン酸の働きを抑えるメマンチンという薬も使用されています。日本での試験は終わりましたが、まだ認可されていません。 |
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新薬の研究 |
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世界各国で、β-アミロイド蛋白の抗体によって、アルツハイマー病を根本的に治療しようという計画が始まっています。βアルミロイドを取り除くワクチンの開発が進められています。
β-アミロイド蛋白というのは、神経細胞を破壊する働きがあるため、それを除去しようとする計画です。
新薬の開発に成功すれば、アルツハイマー病治療に画期的な治療法になると期待されています。 |
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その他の治療薬の使用 |
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塩酸ドネペジル以外には、アルツハイマー病の患者さんに使用できる薬がないため、ほかの病気に使用される薬を使うこともあります。
それらの薬には副作用が多いため、できるだけ短期間、少量を慎重に投与します。
アメリカ食品医薬局(FDA)の報告によると、死亡率の増加が指摘されています。そのため、約3ヶ月をめどに薬を中止するのが大切と考えられています。
長く薬を使用し続けると、高齢者では神経系や循環器系などに副作用が現れ、最悪の場合には死に至ることもあるためです。 |
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妄想・徘徊 |
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妄想、徘徊などの行動・心理症状がある場合、非定型抗精神病薬と呼ばれるクエチアピン(セロクエル)、漢方薬の抑肝散(よくかんさん)が使用されます。
しばらくすると、異常な言動がなくなる患者さんもいます。 |
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抑うつ・睡眠障害 |
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抑うつ、睡眠障害のあるアルツハイマー病の患者さんには、塩酸トラゾドン(レスリン、デジレル)などのセロトニンの取り込みを抑える抗うつ薬が効果があります。
睡眠障害のある認知症の患者さんには、通常の睡眠薬はあまり効果がありません。 |
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末期 |
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末期には寝たきり状態にともなう床ずれ、栄養障害、嚥下性肺炎などの合併症に注意をします。 |
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認知症治療の概略 |
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鑑別診断 |
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第1段階 |
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第2段階 |
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行動・心理症状(+) |
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第3段階 |
非定型抗精神病薬(クエチアピン、セロクエルなど)や抑肝散を短期間、慎重に投与 |
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抑うつ・不眠(+) |
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第4段階 |
セロトニン取り込み阻害薬(トラゾドン、レスリン、デジレルなど)の投与 |
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パーキンソン病様症状(+) |
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第5段階 |
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