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筋力低下 筋萎縮 うまく喋れない
運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症) 椎間板ヘルニア 脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう) さまざまな末梢神経障害 多発性筋炎(たはつせいきんえん) 脳卒中・多発性脳梗塞による仮性球麻痺 延髄の脳梗塞 重症筋無力症
呼吸困難 低酸素血症
脊髄前角(せきずいぜんかく)の運動神経細胞が変性し、全身の筋力低下と筋萎縮が徐々に進行する病気です。
運動神経系の障害は、錘体路(すいたいろ)の上位運動ニューロン障害と、脊髄前角細胞以下の運動神経による下位運動ニューロン障害からなります。 上位運動ニューロンだけが障害されるのが、脊髄性進行性筋萎縮症になります。
錘体路は、随意運動に関与するもので、前頭葉(ぜんとうよう)の運動野から延髄の錐体交差で反対側に交差し、脊髄の前角に至るまでをいいます。 この経路は、運動のオン・オフの働きをし、錐体路の障害で運動麻痺がみられます。
また、錐体外路は、大脳深部の基底核を中心とする複雑な経路です。運動、筋緊張を調節する働きがあります。錐体外路の障害では、筋緊張の異常など、さまざまな不随意運動(ふずいいうんどう)がみられます。
脊髄性進行性筋萎縮症は、同じ原因による、単一の疾患名ではありません。 遺伝性によるものと、非遺伝性によるものとが含まれています。
脊髄性筋萎縮症は、乳児期から、壮年にわたるまで存在します。 乳幼児期〜小児に発症するものは、「ウェルドニッヒ・ホフマン病」、「クーゲルベルグ・ヴェランダー病」と呼ばれ、常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)の形式をとります。
先人に発症する、「球脊髄性筋萎縮症」(きゅうせきずいせいきんいしゅくしょう)は、X染色体劣性遺伝の形式をとります。 その他の成人が発症する進行性筋萎縮症は、非遺伝性と考えられています。
脊髄性筋萎縮症のI型と分類されています。 常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)の形式をとり、両親には症状はありません。
急性乳児型とも呼ばれ、胎生期から生後6ヶ月までに発症します。 発症後は、いわゆるぐにゃぐにゃ乳児(フロッピーインファント)の状態で、寝返りができなかったり、支えなしに座ることができなかったりします。 哺乳困難、嚥下困難があり、ミルクを誤嚥したり、呼吸困難を発症するため、早期に重篤な状態になってしまいます。
急性ではないII型、中間型も存在します。 1歳6ヶ月までに発症し、生涯にわたって起立歩行が不可能ですが、2歳以上生存できます。 症状としては、舌の萎縮、手指の震え、側弯がみられます。
脊髄性筋萎縮症のIII型に分類されます。 軽症型、慢性型で、1歳6ヶ月以降で発症します。
自立歩行は獲得できますが、次第に転びやすくなり、歩行障害があらわれて立てなくなってしまいます。 下肢から症状が明らかになってきて、次第に上肢にも筋力低下の症状がわらわれます。進行は遅く、通常は生命の予後は良好で、成人して生涯を送ることが可能なこともあります。
ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルグ・ヴェランダー病など、遺伝性脊髄性筋萎縮症の診断には、体幹に近い筋肉が対照性に、上肢よりも下肢に強く筋力低下などの障害が現われます。また、脱神経所見と呼ばれる舌のれん縮、手指の震え、筋電図検査、筋肉生検での脱神経所見が重要です。さらに、遺伝子検査で確定診断が可能です。 I型、II型、III型いずれも、SMA遺伝子の変異が認められます。
成人の脊髄性進行性筋萎縮症では、まず下肢に筋力低下があらわれます。続いて、上肢の上腕、肩に痩せや筋力低下があらわれます。筋肉のピクつきを自覚することもあります。 感覚障害はありません。 症状はゆっくりと進行していきます。 30歳〜50歳の中年男性に多い病気です。
脊髄性進行性筋萎縮症の症状や治療法は、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)と一部重なります。ですが、症状の進行が緩やかで、経過は比較的良好です。 対応として、筋力低下に合わせたリハビリテーション、社会資源の活用などが必要となります。