そらいろネット > 家庭の医学 > 食中毒による病気 > カドミウム中毒
亜鉛(あえん)や鉛(なまり)などを精製した際に、副産物として得られる金属です。 充電池、合金、顔料など工業製品を中心に、広く利用されている物質です。 鉱山や廃棄物による環境汚染によって、水や農作物に汚染を引き起こします。
富山県神通川で発生したイタイイタイ病は、カドミウムの長期摂取がおもな原因と考えられています。 経口摂取による急性中毒では、1977年(昭和52年)に神奈川県平塚市でバーベキューによる食中毒が発生しました。
カドミウムの粉塵や蒸気の吸入、経口摂取によって起こります。 近年でが発症は少なく、鉱山、廃棄物処理業者、金属工場などの従業員にみられます。
経口摂取によって起こる急性中毒では、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など、急性胃腸炎の症状がみられますが、すぐに回復します。 カドミウムの吸入では、鼻痛、咽喉痛、頭痛、めまい、吐き気などの症状が現れます。その後、痰、咳、呼吸困難などがみられます。呼吸器官への損傷があると、上気道炎や肺炎などを起こし、死亡することもあります。軽度であれば3日以内に回復し、1週間程度で気管や肺に線維化が見られます。 経口摂取よりも、吸入の方が危険とされています。
慢性中毒では、腎臓が侵されてしまいます。 近位尿細管上皮細胞(きんいにょうさいかんじょうひさいぼう)が障害を受け、蛋白尿、アミノ酸尿、糖尿がみられます。 カルシウムが失われるため、骨軟化症(こつなんかしょう)、骨粗鬆症が起こります。公害病として有名なイタイイタイ病になります。 長期吸入によるカドミウム中毒では、肺気腫、胃腸障害、腎障害、蛋白尿などがみられます。
尿検査を行い、通常ならば近位尿細管で再吸収されるβ2-ミクログロブリンの検出が、もっとも早期に確認できます。
世界保健機構(WHO)などによる国際化学物質安全性計画活動のひとつである「環境保健クライテリア」によれば、長期間毎日140マイクログラム〜260マイクログラムのカドミウムの摂取、もしくは総量として2000ミリグラム以上のカドミウムを摂取すると、尿中低分子蛋白の増加が確認できるとされています。 日本人の日常食からのカドミウム摂取量は、調査の結果1日あたり約21.1マイクログラムとされています。
経口摂取による急性中毒では、胃洗浄、EDTA(1日1g)などのキレート薬の投与が行われます。
慢性中毒ではキレート療法を行うことができません。 カドミウムを含む食品の摂取、水の摂取をやめ、カドミウムから離脱させます。対症療法が治療の中心になります。
食品衛生法では、玄米中のカドミウム濃度は1.0ppm未満とされています。0.4ppm〜1.0ppmの玄米は、食用として流通しないように処置されています。 国際食品規格では、精米中のカドミウム濃度が0.4ppm以下とされています。日本でも、同水準に改定される予定になっています。
水道水質基準、清涼飲料水やミネラルウォーター類を製造する原水の基準は、カドミウム濃度は0.01mg/リットル以下とされています。 製品からは、カドミウムは検出されてはならないとされています。
カドミウムに関する基準値は、食の安全性を確保するため、改定のたびに厳しくなっています。 米や水以外にも、小麦や豆類など、カドミウムを含む食品はありますが、市場に流通しているものは安全です。