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呼吸麻痺を起こす植物毒


植物による食中毒ってどんな病気?

有毒植物

 

イメージ画像 有毒植物は、世界各地に分布しています。
 それぞれの植物によって、症状を起こす毒物が異なるため、症状も異なります。

呼吸麻痺を起こす植物

 

 有毒植物の種類によって、さまざまな症状が現れますが、最終的に呼吸麻痺を起して死亡してしまう植物があります。
 キンポウゲ科の植物には、猛毒性のものが多く存在し、その中でもトリカブトとキンポウゲは一般的に馴染みのある植物です。

年齢的な特徴

 

 植物性自然毒による食中毒は、ほとんどが毒キノコ中毒です。
 有毒植物による食中毒では、被害者の年齢によって、原因植物の種類が異なる特徴があります。
 乳幼児では、家庭内にある観葉植物の葉を食べてしまい、食中毒を起こすことがあります。学童期の子供では庭の植物、成人では野草や山菜の誤食が多くみられます。


トリカブトによる食中毒は?

山菜と間違えやすいトリカブト

 

イメージ画像 トリカブトは毒草として有名です。同じキンポウゲ科の植物のニリンソウ、キク科のモミジガサなどに良く似ているため、山菜狩りで間違えて食べてしまうことが多くあります。
 食中毒の他にも、使い方によっては毒にも薬にもなるため、過去には殺人事件に使用されたこともあります。
身近な植物図鑑:ツクバトリカブト
身近な植物図鑑:ニリンソウ

漢方や民間療法でも使われる植物

 

 トリカブトの根は、昔から附子(ぶし)、あるいは烏頭(うず)として、漢方薬の処方の重要な生薬です。新陳代謝の衰えた人に投与すると、強心作用の効果があります。
 ヨーロッパの民間療法としては、ホメオパシーと呼ばれる類似療法があります。ホメオパシーでは、風邪薬として使用されます。
 しかし、使用量を誤ると、中毒を引き起こし、呼吸中枢麻痺、心伝導障害、循環系、知覚、運動神経の麻痺などを起こします。

中毒症状

 

 個人差はありますが、一定量の中毒量を使用してしまった場合、食後15分〜30分で症状が現れます。唇、腹部、皮膚などに、灼熱感(しゃくねつかん)や、アリが這い回るような感覚が現れます。さらに、発汗、よだれ、嘔吐、めまい、脱力感、言葉のもつれ、頭痛、下痢が起こります。
 知覚、中枢麻痺を起こし、色覚異常(周囲が黄色く見える)、歩行や呼吸が困難になり、不整脈が頻発し、昏睡状態(こんすいじょうたい)になります。
 普通、死亡までに1時間〜数時間かかります。
 致死量は、トリカブトの根では2g〜4gになります。成分はアコニチンで、致死量は約5mgです。

有毒物質

 

 トリカブトの有毒成分では、ジテルペン系のアルカロイドであるアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン、エサコニチンなどが含まれています。毒性は、アコニチンで代表されます。
 高温・高圧で加熱することによって、エステルが加水分解され、毒性は1/100以下に減少します。
 漢方薬では、加熱減毒処理をした、加工附子が使用されます。


ウマノアシガタ・キンポウゲによる食中毒は?

山野草

 

イメージ画像 日当たりの良い山野に生える、キンポウゲ科の多年草です。
 有毒成分としては、アネモニンが含まれています。
 人による食中毒は少なく、家畜であるウシやウマに多くみられます。
身近な植物図鑑:キンポウゲ科の植物

心臓の機能停止

 

 大量に摂取すると、心臓毒として作用し、心臓の運動機能を停止させてしまいます。
 マウスによる実験では、嘔吐、下痢、血尿、血便、瞳孔散大(どうこうさんだい)などの中毒症状が現れます。大量に与えた場合、知覚麻痺、呼吸困難、痙攣(けいれん)を起こして死亡します。


バイケイソウによる食中毒は?

山菜と誤って食べてしまう

 

イメージ画像 山地や林内の湿った草地に生える、ユリ科の多年草です。
 かつては、血圧降下薬として使用されていました。
 芽生えの姿が、山菜のオオバギボウシ(ウルイ)、ギョウジャニンニクと似ているため、毎年のように食中毒が発生しています。
身近な植物図鑑:ユリ科の植物

呼吸停止

 

 毒性の強いステロイド系のアルカロイドが含まれています。大量に摂取すると、中枢性の呼吸抑制が起こし、呼吸停止によって死亡してしまいます。
 有毒成分であるジェルビンの毒性は、アコニチンに匹敵すると言われています。現在では、農薬としてわずかに使用される程度です。

ジャガイモも要注意

 

 ジャガイモの芽生えの部分に含まれる、ステロイド系のアルカロイドであるソラニンも、有毒成分です。
 誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢を引き起こし、呼吸困難になってしまいます。
身近な植物図鑑:ジャガイモ


ドクゼリによる食中毒は?

セリに良く似ている

 

イメージ画像 水辺や湿地に生えるセリ科の多年草です。
 猛毒性を持つ植物のひとつで、ドクゼリ、ドクウツギ、トリカブトの3種で日本の三大有毒植物とされています。
 山菜のセリと良く似ており、生えている場所も共通していることから、セリと誤ってドクゼリを食べてしまい中毒を起こす人が多くいます。
身近な植物図鑑:セリ科の植物

数分後には症状が現れる

 

 毒性の強いシクロキシンは、おもに根の部分に含まれています。
 とても吸収されやすい成分のため、誤って食べると、数分後には中毒症状が現れます。
 口から泡を吹き、中枢神経が侵され、痙攣、めまい、嘔吐、皮膚の発赤が現れます。最終的には、呼吸麻痺を起して死に至ります。
 食べた量が多いと、代謝性アシドーシス、腎不全など生命に関わることもあります。家庭での治療は不可能なので、すぐに病院を受診するようにしてください。


ドクニンジンによる食中毒は?

ニンジンの葉に似ている

 

イメージ画像 湿り気のある山野に生える、ヨーロッパ原産のセリ科の二年草です。
 あまり多くはないものの、山菜のシャク(山人参)と間違えて、誤食してしまい食中毒を起こす人がいます。
 歴史上有名な、ソクラテスの毒殺に使われたのが、ドクニンジンだと言われています。

ソクラテスで有名

 

 全草に、猛毒性のアルカロイド、コニインを含んでいます。
 中枢神経を興奮させ、のちに麻痺を起こし、運動神経末梢を麻痺させます。その結果、よだれ、呼吸麻痺を起こして死に至ります。


ハシリドコロによる食中毒は?

ハシリドコロの食中毒

 

イメージ画像 山間の日陰などに群生する、ナス科の多年草です。
 新芽がフキノトウに似ていることから、山菜として誤食されてしまいます。誤って食べると、錯乱して走り回ることから、「ハシリドコロ」という名前が付けられました。
 ナス科の植物は、毒性を持つものが多く存在します。日本に自生するハシリドコロは、ヒヨスシアミン、アトロピン(dl-ヒヨスシアミン)、スコポラミンなど、トロパン系アルカロイドを含んでいます。
 根はロート根と呼ばれ、薬用として使用されます。
 ハシリドコロとトリカブトには、拮抗作用があるといわれています。
身近な植物図鑑:ナス科の植物

数分後には症状が現れる

 

 ヨーロッパでは、ナス科のベラドンナ(オオカミナスビ)、ダツラ(チョウセンアサガオ)、ヒヨスなどの植物は、鎮痛薬・鎮痙薬(ちんけいやく)として使用されていました。
 これらの植物のアルカロイドには、抗コリン作用があるため、瞳孔散大、制酸、鎮痛に使用されています。
 チョウセンアサガオは、ゴボウと間違えた食中毒が起こります。ベラドンナアルカロイドが含まれ、食後30分〜2時間後に、体のふらつき、だるさ、眠気が現れます。不安、せん妄、失見当識(しっけんとうしき)、幻覚、活動亢進などが現れ、統合失調症の急性期や、急性アルコール中毒と間違えられ、病院に収容されることもあります。
 ヒヨスシアミンは、量が多いと狂騒状態(きょうそうじょうたい)を引き起こし、呼吸麻痺によって死亡してしまいます。
 江戸時代の外科医、華岡青洲の麻酔薬には、通仙散と命名したマンダラ葉(ダツラ)が処方されたと言われています。


フジモドキによる食中毒は?

園芸種でもあるフジモドキ

 

イメージ画像 中国原産の、ジンチョウゲ科の落葉低木です。日本ではおもに、園芸植物として栽培されます。
 ゲンカニン、ヒドロキシゲンカニンなどを含み、毒性はトウダイグサ科の甘遂(かんすい、ナツトウダイのこと)や大戟(だいげき、タカトウダイのこと)よりも強いと言われています。
 ラットによる実験では、死亡前に痙攣が起こり、多くの場合、呼吸衰弱によって死亡しました。
身近な植物図鑑:ジンチョウゲ科の植物
身近な植物図鑑:トウダイグサ科の植物


ドクウツギによる食中毒は?

果実の誤食

 

 山地、河川敷、海岸の荒地などに自生するドクウツギ科の落葉低木です。
 紅紫色の綺麗な果実を付けるため、子供などが誤って食べてしまうことがあります。誤食による食中毒を防ぐため、優先的に刈り取られたりもしています。

わずかな量で死に至る

 

 猛毒性のコリアミルチン、ツチンが含まれ、ピクロトキシン様の作用が現れます。
 脊髄(せきずい)よりも下位の中枢を刺激し、強烈な痙攣を起こし、のちに麻痺が起こり、呼吸停止によって死亡します。
 おもな中毒症状は、悪心(おしん)、吐き気、嘔吐、全身硬直、口唇紫変、瞳孔縮小などです。致死量は、葉で約24gです。


青酸配糖体を含む植物の食中毒は?

バラ科の植物

 

イメージ画像 青酸配糖体(せいさんはいとうたい)そのものは、毒性を持っているわけではありません。
 青酸を遊離するためのチトクロームオキシダーゼを阻害し、体内呼吸を止めてしまい、死亡します。
 アンズ、ウメ、アーモンド、サクラなど、バラ科の植物の果実や種子に含まれるアミグダリンは、鎮咳薬(ちんがいやく)・去痰薬(きょたんやく)として使用されていますが、大量に用いたり、古い物を用いたりすると、青酸中毒を引き起こします。種子の核(仁)を食べ過ぎると、青酸中毒を起こすことがあります。
身近な植物図鑑:バラ科の植物

わずかな量で死に至る

 

 その他にも、キク科のロタウストラリン、マメ科やトウダイグサ科のキャッサバに含まれるリナマリン、バラ科のバクチノキに含まれるプルナシンなどがあります。
 腸内細菌のβ-グルコシダーゼの働きによって、ヒドロキシニトリルが生産され、さらにヒドロキシニトリル分解酵素の作用を受けて、青酸を遊離します。
身近な植物図鑑:キク科の植物
身近な植物図鑑:マメ科の植物


植物による食中毒の治療法は?

応急処置

 

イメージ画像 症状が現れたら、まずは、吐き出します。たとえ症状が表れなくても、同じ物を食べた人は、全員、吐き出すようにしてください。
 指で喉の奥を刺激して、胃の中の物を吐き出します。ぬるま湯に食塩を溶かし、薄い食塩水を多量に飲むことで、吐きやすくなります。
 その後、医療機関を受診するようにしてください。

対症療法

 

 中毒に対する対処法としては、胃洗浄、保温、強心剤、マグネシウムやカルシウムの投与などが行われます。
 徐脈(じょみゃく)に対してはアトロピン、不整脈に対してはリドカインが有効です。

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