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突発的に起こる腹痛 心窩部痛(しんかぶつう) 吐き気・嘔吐・吐血 症状が単独で現れることはまれで、多彩で激しいのが特徴
胃・十二指腸潰瘍 胆石症 急性膵炎 慢性膵炎 虫垂炎
激しい腹痛が見られる場合、痛みによるショック状態 吐血によるショック状態 嘔吐による誤嚥からくる嚥下性肺炎 高齢者の場合、循環不全(心疾患)、腎障害(無尿、乏尿)
さまざまな原因によって引き起こされる胃の急性炎症の総称です。 ほとんどの場合、上腹部の自覚症状を伴いますが、原因が取り除かれると回復が早いのが特徴です。
飲食物、薬剤、ストレスなどが原因となることが多いです。 このほか、アルコール、外傷、外科手術、ピロリ菌の感染、アニサキス症による急性胃炎がしばしばみられます。
急性胃炎は以下の表のように分類できます。 急性腐食性胃炎、急性感染性胃炎、急性化膿性胃炎は減少傾向にあります。 逆に、急性単純性胃炎が多くみられます。 近年では複雑な人間関係によるストレス社会であるため、ストレスによって起こる胃炎も多いです。
単純性胃炎は治療のために投与された薬、し好品や食品(アルコール、コーヒー、カレー)などが原因になることが多いです。 解熱鎮痛薬は急性の胃炎を起こす薬としても有名で、注意して服用数量にしましょう。
原因があってから短時間のうちに、食欲不振、吐き気、嘔吐、上腹部の痛み、上腹部のもたれなどの症状が現れます。 突発的に激しい腹痛や心窩部痛が見られ、単独で症状が現れることは少なく、多彩な症状で発症します。
急激に強い上腹部痛、吐血、下血などの症状が現れ場合、内視鏡を使って胃の中を検査してみると、出血、びらん、潰瘍性変化をともなっているものを急性胃粘膜病変(AGML)と呼びます。
自殺目的や誤嚥によって、強酸や強アルカリなどを服用した直後から、焼けるような痛みを起こすのが特徴です。 口腔、食道、胃も同時に腐食され、食道狭窄(しょくどうきょうさく)や胃穿孔(いせんこう)が起こることもあります。
発生頻度は極めて低いものの、急性蜂窩織胃炎(きゅうせいほうかしきいえん)とも呼ばれ、大腸菌や連鎖球菌などが胃のただれなどから侵入したり、血行性に胃内に入ったりして起こる胃炎です。 心窩部痛や胃痛のほかに、悪寒戦慄(おかんせんりつ)や高熱をともなう重篤な疾患のため注意が必要です。
牛乳、卵、魚などの摂取によって生じる胃粘膜のアレルギー反応で、胃痛や嘔吐の出現と同時、もしくはそれ以前に気管支喘息や蕁麻疹などの症状が現れます。
もっとも診断に有効な検査は、上部消化管内視鏡検査です。 内視鏡を使って胃の中を観察すると、発赤、出血、びらんの所見が見られるので容易に診断することができます。
急性胃粘膜病変では、より重症で、浅い潰瘍や出血性変化が見られることが多いです。 胃液の分泌が増加していることが多いので、胃粘膜へのバリウムの付着が悪くなり、良い写真を撮ることが困難になります。
原因がハッキリしている場合、その原因を取り除くことが治療の基本となります。 アニサキス症の場合、内視鏡鉗子(ないしきょうかんし)を使ってアニサキス虫体を胃粘膜から除去します。 なお、単純性胃炎意外の急性炎では、原則的に入院が必要になります。
胃酸を止めることで自覚症状や胃炎所見の改善が見込めます。このため、重症の場合、確実に胃酸分泌を抑制できるH2ブロッカー、PPI(プロトンポンプ阻害薬)を使用します。
急性期には痛みや嘔吐の強い時期なので、絶食が原則です。脱水防止のため、点滴が必要になることもあります。 回復期は症状が消失した時期なので、重湯から始めて、くず湯、野菜スープ、おかゆなどの少量摂取から始めてください。 治癒期は症状が完全に消失して食欲が旺盛になりますが、暴飲暴食に注意し、消化の良い食事を心掛けてください。
症状に応じて鎮痛薬、制吐薬、制酸薬、胃粘膜保護薬などを投与します。 腐食性胃炎の場合、胃洗浄によって胃内容物を十分に吐き出させることも大切です。 出血が強い場合、内視鏡で観察しながら止血を行います。 腐食性胃炎で食道狭窄や胃穿孔を起こした場合、外科手術が必要になります。
軽症の場合、注意深く様子を見る経過観察で十分です。 症状が強い、様子を見ても改善が見られない場合、内視鏡検査が可能な病院を受診するようにしましょう。
腹痛を起こす病気は数多く存在し、胃以外の臓器の障害による腹痛も多くあるため、検査による鑑別が必要です。 治療方針が異なるため、すべての腹痛の原因は胃に由来しているとは考えないようにしてください。