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石槍です。「せきそう」と読みます。いしやりではありません。ヤリの先端に付けます。
縄文時代の貝塚で、平作川河口に近い完新世低地に突出した台地上に立地します。貝層は西側に存在する谷に面した斜面を中心に分布しています。早くから宅地化が進んでいる土地で、現在は民家の庭先や畑地にわずかに貝殻や遺物の散布が見られます。
 三浦半島観光地図：横須賀市久里浜・平作川
1887年（明治20年）、丘浅次郎によって東京人類学会報告第15号で紹介され、久比里貝塚として広く知られました。1892年に鹿角製釣針が若林勝邦によって紹介され、その後も岸上鎌吉や甲野勇などによって、たびたび先史時代の釣針の良好な例として取り上げられ、考古学史上からも貴重な遺跡です。
1921年（大正10年）、榊原政治職によって貝塚の分布範囲に3ヶ所の小規模な発掘杭を設定して行われたのが、発掘調査の始まりです。この結果、縄文時代中期を中心とした土器が写真図版で紹介され、石鏃、磨製石斧、打製石斧などの石器類、動物依存体が軟体動物種13種、脊椎動物種がイノシシ・ニホンジカ・イルカなどが詳細に報告されました。大正10年代には、赤星直忠による遺物の採集が行われ、採集資料が数回に渡って紹介されました。縄文時代中期の土器にみられる赤彩が注意されるなど、大正時代の調査によって江戸坂貝塚に関する基礎的な内容が明らかにされていきました。
身近な動物図鑑：バンドウイルカ
その後、発掘調査は行われませんでしたが、1973年（昭和48年）、公共水道管埋設工事に伴って初めて本格的な発掘調査が行われました。良好に遺存している貝層が検出され、貝層の時期は加曾利EⅡ～Ⅳ式土器の時期で、貝層の上下で軟体動物構成種の変化が認められました。貝層下層はマガキを中心とし、上層ではマガキと共にスガイ、イシダタミなどの岩礁性小形巻貝が中心でした。同一地点での近接した時期の貝層に大きな軟体動物種組成の変化が認められる遺跡は他になく、貴重な調査所見です。1988年、確認調査で緩斜面に堆積した貝層の上端部を検出しましたが、貝層下に当たる土層から阿玉台Ⅰb式の深鉢形土器1個体を含む中期前半の遺物が出土しました。さらに貝層下土層からも小規模な貝殻小ブロックが検出され、貝塚の形成が中期前半に遡る可能性が指摘されました。出土土器は前期の開山式・十三菩提式、中期の御領ヶ台式～加曾利E式に渡りますが、特に中期初頭の五領ヶ台式から勝坂式（阿玉台式）の土器群が注目できます。その他、イヌの頭蓋骨・椎骨が出土しました。
身近な貝殻図鑑：イワガキ
身近な貝殻図鑑：イシダタミガイ
身近な生き物図鑑：身近な犬図鑑
過去の調査と採集資料からは、縄文時代早期後半～末葉の条痕文土器群、ないしは擦痕土器群、前期初頭花積下層式土器、前葉関山式土器、中葉黒浜式土器、後半諸磯a式土器・諸磯b式土器、前期末葉十三菩提式土器、中期初頭～前葉五領ヶ台式土器、中葉阿玉台式土器、後半加曾利EⅠ～Ⅳ式土器、後期前半の諸型式の存在が確認されています。縄文時代早期後半～後期前葉までの諸型式を出土する点は、江戸坂貝塚の北西に近接して存在する吉井貝塚と同様な現象で、両貝塚の関係が注意されます。
三浦半島観光地図：横須賀市吉井・吉井貝塚
遺跡の中心となる時期は中期中葉～後半にかけてで、この時期に属する土器片を利用した土器片錘、鹿角製釣針、骨角製尖頭器など漁労具が多量に出土しており、植物残滓である軟体動物遺骸、魚骨などの出土と合わせて、江戸坂貝塚は海産食物資源に大きく依存した生業が行われていたことを示します。
漁撈具と推定される遺物としては、他に浮子と考えられる有孔軽石製品、短軸に切り込みを持つ切目石錘などが出土していますが、時期の推定は困難です。切目石錘は伝福寺裏遺跡での類例から、前期末葉～中期前半の時期の可能性も考えられます。
三浦半島観光地図：横須賀市久里浜・伝福寺
1992年（平成4年）、貝塚部分の南東側で個人住宅建設にともなう確認調査が行われました。この場所は旧日本海軍の官舎として造成された場所だったため遺構は確認できませんでしたが、縄文時代前中期の土器片と磨製石斧、古墳時代後期を中心に平安時代までの土師器甕・坏片などが出土しました。遺物は横須賀市自然・人文博物館、神奈川県立歴史博物館、赤星直忠博士文化財資料館に保管されています。
三浦半島観光地図：横須賀市深田台・横須賀市自然・人文博物館
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江戸坂貝塚
京急久里浜駅下車 
徒歩15分
三浦半島観光地図
