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 熱中症・熱射病・日射病

熱中症・熱射病・日射病ってどんな病気?
熱中症は総称
  イメージ画像 熱中症(ねっちゅうしょう)とは、長時間、高温多湿な環境にさらされることによって発生する、全身性の温熱障害の総称です。
 熱射病(ねっしゃびょう)、日射病(にっしゃびょう)と呼ばれているものは、重症の熱中症のことを指します。
生命の危険も
   医学的には、熱射病は、視床下部(ししょうかぶ)の体温を正常に保とうとする機能が低下して、汗が止まってしまいます。体温が40℃を超えて、そのまま死に至る、きわめて緊急性の高い状態を指します。
 このうち、太陽光がその一因となっているものを日射病といいます。

熱中症・熱射病・日射病の原因は?
体温調節ができない環境
  イメージ画像 人間の体は、皮膚からの放熱や発汗によって体温を下げます。しかし、外気温が皮膚温以上になる時や、湿度が非常に高い時は、放熱や発汗ができにくくなり、熱中症を引き起こします。
発症しやすい人
   基礎疾患のある人、乳幼児、高齢者、高血圧、心疾患、貧血、甲状腺疾患、肥満糖尿病アルコール依存症慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)がある人は、熱射病になりやすいとされています。
 異常な熱波に見舞われた国で多くの高齢者に発生したという報告や、泥酔してサウナで昏睡状態に陥ってしまった人、車内に閉じ込められた幼児の報告例が多くあります。
 通常は、灼熱環境下での運動や作業を、続けた時に発生します。
遺伝的要素も
   一方で、死に至ることもある最重症の熱射病には、素因(もともとの体質)が関係しているとする考え方があります。
 その根拠となっているのは、スポーツ医学の発達で指導管理を徹底していても、熱射病が発症すること。また、熱射病は麻酔によって異常な高体温となる悪性高熱症と、その病態が非常に良く似ていることにあります。
 悪性高熱症は、骨格筋の筋小胞体(きんしょうほうたい)におけるカルシウム代謝の異常が原因で、家系的な素因のあることが照明されています。

熱中症・熱射病・日射病の症状は?
3つに分類される
  イメージ画像 熱中症は、軽症の熱痙攣(ねつけいれん)、中等症の熱疲労(ねつひろう)、重症の熱射病の3つに分類されます。
  熱虚脱
     もっとも多く見られる熱中症です。
 頭重感、頭痛、吐き気、倦怠感、脱力感などで発症します。進行すると、脳血流の減少によるめまいや耳鳴り、血圧の低下による顔面蒼白や冷や汗などがあらわれます。一般的に「暑気あたり」といわれる状態です。さらに、意識障害がみられることもあります。
 体温の上昇は見られません。
  熱痙攣
     塩分を補給せずに、水分だけを補給した場合に、低ナトリウム血症が増強されて水中毒の状態になり発症します。
 口渇、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、身体各部の有痛性の筋れん縮、痙攣などがあらわれます。れん縮は手足の筋にみられることが多く、胃にもあらわれることがあります。
 普通は体温の上昇は見られません。
  熱射病・日射病
     熱の放熱が障害され、体内の蓄熱量が増加するため、体温が上昇します。この状態を熱疲労といいます。放置しておくと、体温はさらに上昇し、ついには体温調節中枢の破綻を起こして熱射病に移行します。
 熱射病では、体温調節中枢が破綻しているため、体温が40℃以上になります。
 初期には、著名な発汗、口渇、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、倦怠感などがあらわれます。進行すると皮膚は乾燥して熱く紅潮し、痙攣、意識障害、乏尿、無尿などがみられます。

熱中症・熱射病・日射病の診断は?
熱射病・日射病のみ検査が必要
   検査が必要なのは、熱中症の中でも熱射病・日射病だけです。
さまざまな検査
  イメージ画像 肺水腫の検査のため胸部X線検査、脳浮腫の検査のため頭部CT検査、肝障害時の検査では血清AST・ALT・LDHの測定、腎障害時の検査では血清尿素窒素・クレアチニン濃度の測定、筋融解時の検査では血清CPKの測定、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)の検査のため血小板数・プロトロンビン値・活性化部分トロンボプラスチン時間・FDPの測定、アシドーシスの検査として動脈血ガス分析、電解質異常と程度の検査として血清ナトリウム・カリウム・クロール濃度の測定、脱水の検査として白血球数・ヘモグロビン濃度の測定などが行われます。
診断
   長時間、高温多湿の環境にいたかどうかが重要になります。各病型は、臨床症状の現れ方が診断の決め手になります。
 多くの場合は、いくつかの病型が混在して発症します。意識障害を起こす疾患、痙攣を起こす疾患、発熱をともなう疾患との区別が必要になります。

熱中症・熱射病・日射病の治療法は?
熱痙攣
  イメージ画像 大量の発汗に対して、水分のみを補給した際に起こりやすく、相対的な塩分の不足が原因とされています。
 生理的食塩水や、乳酸加リンゲル液の点滴静注を行います。
熱疲労
   脱水症の一種です。体温調節機能が残されているため、発汗は持続し、体温もそれほど上昇しません。
 生理的食塩水や、乳酸加リンゲル液の点滴静注と、鎮痛薬の投与が効果的です。脱水症の補正には時間がかかるため、入院の上で治療を行います。
熱射病
   視床下部の体温中枢や、汗腺の機能が衰退して、深部体温が40℃以上になり、緊急性の高い状態です。
 血液学的には、凝固因子が消費され、出血傾向が出現する消費性凝固障害を認めるため、生存例でも高率で急性腎不全に陥ってしまいます。意識障害、昏睡が4時間以上続いても回復しない場合や、播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を合併した場合、予後は不良です。
 集中治療室に収容し、以下の集中的な治療が行われます。
身体冷却
体液・電解質の補正
抗痙攣薬、筋弛緩薬(きんしかんやく)の投与
消費性凝固障害に対する治療
その他の対処療法

熱中症・熱射病・日射病の応急処置は?
基本は3つ
  イメージ画像 熱中症に対する応急処置の基本は3つです。日常生活では、長時間の高温多湿環境にさらされないようにし、水分と塩分の補給を忘れないようにしましょう。
  休息
     体を冷却しやすいように、衣服をゆるめ、安静にします。
  冷却
     涼しい場所で休ませます。風通しの良い日陰、エアコンの効いた部屋が効果的です。
 また、氷嚢、氷塊などで、脇の下、首の周り、足の付け根などを冷やし、血液を早く冷やします。
  水分補給
     意識がはっきりとしていれば、スポーツドリンクや食塩水(水500mlに対して食塩茶さじ1杯約5g)などで水分補給を行います。
  救急搬送
     意識障害、吐き気がある場合は、医療機関での輸液が必要です。救急車を呼び、至急、医療施設へ搬送します。
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