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 慢性閉塞性肺疾患・COPD

慢性閉塞性肺疾患・COPDの概要は?
おもな症状
  呼吸困難
咳(せき)
痰(たん)
動悸(どうき)
喘鳴(ぜんめい)
似ている病気
  気管支喘息
びまん性汎細気管支炎(びまんせいはんさいきかんしえん)
気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)
起こりやすい合併症
  肺性心(はいせいしん)
気胸(ききょう)
消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)
呼吸器感染症(こきゅうきかんせんしょう)
肺塞栓症(はいそくせんしょう)
肺炎(はいえん)
副鼻腔炎(ふくびくうえん)

慢性閉塞性肺疾患・COPDとは?
進行性の肺疾患
  イメージ画像 慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん・COPD)とは、有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく、進行性の肺疾患です。
 おもに肺胞系の破壊が進行して気腫優位型(きしゅゆういがた)・肺気腫(はいきしゅ)になるタイプと、中枢気道病変が進行して気道病変優位型・慢性気管支炎(まんせいきかんしえん)になるものがあります。
肺気腫・慢性気管支炎
   慢性閉塞性肺疾患は、肺胞〜末梢気道〜中枢気道に及ぶすべての病変を包括するものです。
 以前は、肺気腫と慢性気管支炎に、分けて呼ばれていました。

   ┌───────
   │
   │
   ↓
有毒粒子・ガス
(タバコの煙、大気汚染、室内有機燃料煙)

────────┐
        │
        │
        ↓
肺胞
(肺胞壁の破壊)
←───
気腫優位型
末梢気道
(内径2mm未満の小気管支、細気管支)
─────→
気道病変優位型
中枢気道
(粘液腺の肥大)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)診断と治療のためのガイドライン
患者さんは増加傾向
   慢性閉塞性肺疾患の患者数は、世界的に増加しています。2020年までに全世界の死亡原因の第3位になると推測されています。
国内の状況
   日本国内で2000年〜2001年に行われた疫学調査によって、40歳以上の成人の8.5%、530万人が慢性閉塞性肺疾患に罹患(りかん)していることが明らかになりました。
 今回の調査で慢性閉塞性肺疾患と診断された患者さんのうち90%の人が、今までに慢性閉塞性肺疾患と診断されていませんでした。
おもな原因と症状
   慢性閉塞性肺疾患の原因の約90%は喫煙です。
 おもな症状は慢性の咳(せき)、痰(たん)、身体を動かした時に出現する労作性(ろうさせい)の息切れです。ゆっくりと進行し、典型的な身体所見も重症になって初めて現れることが多いため、早期発見が難しいのが特徴です。
重症化すると
   重症になると呼吸不全に至ります。息苦しさのために日常生活ができなくなったり、風邪などをきっかけに急に症状が悪化する増悪・急性増悪を繰り返すことになります。
早期の診断に向けて
   早期の診断には、スパイロメーターと呼ばれる肺活量計を用いた肺機能検査が不可欠です。
 喫煙によるリスクの回避と、適切な病気の管理によって、有効な予防と治療が可能です。

慢性閉塞性肺疾患・COPDの原因は?
危険因子
  イメージ画像 慢性閉塞性肺疾患の危険因子は、外因性危険因子と、患者さん側にある内因性危険因子に分類されます。
 外因性危険因子には、喫煙、大気汚染、職業上で吸入する粉塵(ふんじん)、蒸気・刺激性物質・煙による化学物質、受動喫煙などがあります。
COPDと喫煙
   喫煙は慢性閉塞性肺疾患の最大の外因性危険因子です。慢性閉塞性肺疾患の発症に関与することが立証されています。
 慢性閉塞性肺疾患の患者さんの約90%は、喫煙者になります。
喫煙者の増加と共に患者数も増加
   日本国内では、1960年以降の経済成長にともない、タバコ販売量の増加や消費量が増加しました。これに20年遅れて、慢性気管支炎・肺気腫が増加しています。
 1985年以降は、特に男性に多い傾向が顕著に現れています。
遺伝との関係
   喫煙者のすべての人が慢性閉塞性肺疾患を発症するわけではありません。一般的には、喫煙者の20%〜30%の人に発症します。
 患者さん側の内因性危険因子として、慢性閉塞性肺疾患発症に関係するさまざまな候補遺伝子が報告されています。α-アンチトリプシンの欠損を除いては、慢性閉塞性肺疾患の発症にどの程度関係しているかにつては、明らかになっていません。

慢性閉塞性肺疾患・COPDの症状は?
困難な早期発見
  イメージ画像 慢性閉塞性肺疾患の症状は、慢性の咳(せき)、痰、労作性の息切れです。
 慢性閉塞性肺疾患はゆっくりと進行し、典型的な身体所見も重症になってから初めて現れてくることが多いため、早期発見が難しいことが大きな問題です。
息切れ
   階段や坂道での息切れに始まります。重症になると歯磨き、着衣の動作でも、強い息切れが現れます。
 一方で、喘息心不全などのように、安静にしている時には息切れがないのが特徴です。
痰と頭痛
   喀痰(かくたん)は通常は粘液性です。気道感染が合併すると喀痰量が増加し、膿性になります。
 肺機能の悪化が進むと、高二酸化炭素血症をともない、朝方の頭痛などが現れます。
体重減少・食欲不振
   慢性閉塞性肺疾患は肺の病気のみにとどまらず、全身に症状が現れます。
 病気が進行すると、体重減少、食欲不振も起こり、体重と生命予後の関連も明らかにされています。
さまざまな全身症状
   身体や手足の筋力・筋肉量も減少してしまいます。
 右心不全(うしんふぜん)が出現すると呼吸困難がさらに悪化し、全身のむくみ、夜間の頻尿などが現れます。
 息切れなどによる心理的抑うつ状態、不安などの精神的な症状も多くみられます。
身体所見
   肺が過度に膨張するため、ビア樽状の胸郭(きょうかく)といわれる胸郭前後径の増大が認められます。
 空気を肺から効率良く吐き出すために、口すぼめ呼吸をするようになります。
 呼吸補助筋の使用が増加するため、胸鎖乳突筋(きょうさとつきん)が肥大します。
 このような典型的な身体所見は、重症になるまで現れません。
急な肺機能の悪化
   安定期の慢性閉塞性肺疾患の患者さんが、気道感染や大気汚染をきっかけにして急激に肺機能が悪化し、呼吸困難が増悪することがあります。
 呼吸数や脈拍数が増加し、痰の量や膿性痰が増加し、ゼーゼーする呼吸音の喘鳴(ぜんめい)などが出現します。
 増悪がみられると入院の回数も増加し、死亡率も高まり、生命予後を悪化させてしまいます。

慢性閉塞性肺疾患・COPDの診断は?
肺機能検査
  イメージ画像 咳、喀痰、労作性呼吸困難などの症状があり、喫煙歴などの危険因子を持つ中高年者では、慢性閉塞性肺疾患が疑われます。確定診断には、スパイロメトリーと呼ばれる肺機能検査が必須になります。
確定診断
   気管支拡張薬を吸入したあとの検査で、1秒率(FEV1:全体呼気量に対する1秒量の比率)が70%未満であれば、気流制限が存在すると判定されます。
 画像診断、呼吸機能の精密検査によって、他の気流制限を起こす疾患が除外されれば、慢性閉塞性肺疾患と診断されます。
区別が必要な病気
   区別が必要な病気としては、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎(びまんせいはんさいきかんしえん)、先天性副鼻腔炎症候群(せんてんせいふくびくうえんしょうこうぐん)、閉塞性細気管支炎(へいそくせいさいきかんしえん)、気管支拡張症、肺結核(はいけっかく)、塵肺症(じんぱいしょう)、肺リンパ脈管筋腫症(はいりんぱみゃくかんきんしゅしょう)、うっ血性心不全などがあります。
胸部エックス線検査
   胸部エックス線検査では、他の疾患を除外するためと、比較的進行した肺気腫病変、気道病変を診断するために用いられます。しかし、早期の検出は難しいとされています。
胸部CT検査
   気腫優位型慢性閉塞性肺疾患の早期発見では、胸部CT検査が有効です。
 最近では胸部CT検査の制度が向上し、肺気腫の最小単位と考えられている数mm径の病変内の構造もとらえられるまでに解像度が上がってきています。
重症度
   慢性閉塞性肺疾患の病期分類は、気流制限の程度を表す1秒量(FEV1)で行い、重症度を反映します。病気分類は、以下の表のようになります。
0期 リスク群
T期 軽症(FEV1が80%以上)
U期 中等度(FEV1が50%〜80%)
V期 重症(FEV1が30%〜50%)
W期 最重症(FEV1が30%未満。またはFEV1が50%未満で慢性呼吸不全か右心不全を合併)

慢性閉塞性肺疾患・COPDの治療法は?
安定期の治療法
  イメージ画像 禁煙によるリスクの回避、適切な病気の管理によって、有効な予防と治療が可能になります。
 慢性閉塞性肺疾患の治療は、病期や症状に応じて階段的に増強していきます。安定期における慢性閉塞性肺疾患の病期別治療法は、以下の通りです。
 
 
 
 
 
管理法
 
 
 
 
 
 
       
■長期酸素療法
(呼吸不全時)
■外科的治療の考慮
     
■吸入ステロイド薬の考慮
(増悪を繰り返す場合)
   
■呼吸リハビリテーション
■長時間作用型気管支拡張薬の定期的使用(単剤〜多剤)
 
■必要時に応じ短時間作用型の気管支拡張薬を使用
■禁煙
■インフルエンザワクチンの接種
病期
0期リスク群
T期軽症
U期中等症
V期重症
W期最重症
FEV1
(1秒率)
スパイロメトリーは正常
慢性症状(喀嗽・喀単)
80%以上
 
50%〜80%
 
30%〜50%
 
30%未満または、
50%未満で慢性呼吸不全か右心不全を合併
慢性閉塞性肺疾患(COPD)診断と治療のためのガイドライン
0期(リスク群)
   慢性閉塞性肺疾患の発症を予防し、進行を遅らせるためには、タバコの煙への曝露(ばくろ)を回避することがもっとも重要です。
 0期リスク群も含めてすべての慢性閉塞性肺疾患において、禁煙、インフルエンザワクチンの予防接種が大切です。
 インフルエンザワクチンは、増悪による慢性閉塞性肺疾患の死亡率を50%低下させることが報告されています。
T期(軽症)
   禁煙に加えて、症状の軽減を目的に、必要に応じて短時間作用型の気管支拡張薬を使用します。
U期(中等症)
   症状の軽減に加えて、生活の質(QOL)の改善、運動能力の改善などがおもな目標となります。長時間作用型の気管支拡張薬の定期的な投与と、呼吸リハビリテーションが勧められます。
U期〜W期(中等症〜最重症)
   薬物療法では、長時間作用型の気管支拡張薬の定期使用が中心になります。効果に応じて複数の長時間作用型気管支拡張薬が併用されます。
 喀痰調整薬の有効性に関しては、今後さらに検証が必要とされています。
V期〜W期(重症〜最重症)
   増悪の予防が大きな課題となります。
 過去3年間で3回の増悪を繰り返すなど増悪を繰り返す患者さんでは、吸入ステロイド薬を追加することによって増悪の頻度を減少させ、生活の質(QOL)の悪化を抑えることが報告されています。
非薬物療法
   呼吸リハビリテーションや栄養管理などの非薬物療法は、薬物療法と同じくらい重要になります。
 呼吸不全を合併する場合、在宅による長期酸素療法が行われ、生命予後を改善することが示されています。
外科的治療
   最大限の内科的治療を行ったにもかかわらず、疾患の進行がみられる場合には、外科的治療が考慮されます。
 肺容量減少手術、肺移植術などがあります。
増悪期の薬物療法
   増悪期では、気管支拡張薬吸入の用量、回数を可能な範囲で増やします。
 ステロイドの経口、または経静脈投与による全身投与は、増悪から回復するまでの時間を短縮させ、肺機能をより早く回復させます。
 喀痰量や喀痰の膿性度が増えていれば、抗菌薬が投与されます。
肺機能の高度な低下
   肺機能の低下が高度な場合、非侵襲的陽圧換気療法(ひしんしゅうてきようあつかんきりょうほう・NIPPV)が行われます。
 誤嚥(ごえん)がある場合、喀痰などの分泌物の吐き出しが困難なため気道確保が必要である場合などは、侵襲的陽圧換気療法(IPPV)が行われます。

慢性閉塞性肺疾患・COPDかなと思ったら?
肺機能検査
   成人になってからスパイロメーターを使った肺機能検査を受けた人は少ないようです。健康診断でも、心電図検査は必ず含まれますが、肺機能検査はほとんど含まれません。
 咳、痰が長く続く場合、階段や坂道の息切れに気付いたら、医療機関を受診するようにしましょう。スパイロメーターによる肺機能検査を受けることが勧められます。
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