かつては、インポテンツと呼ばれていました。また、勃起不全、勃起障害、勃起機能障害と呼ばれています。 最近ではED(Erectile Dysfunction)という言葉が使われるようになりました。
男性の性機能障害のひとつです。性交渉をするための十分な勃起を得られない場合や、勃起を維持できずに性交ができない状態を指します。 日本では、約500万人の患者さんがいると推測されています。
大きく分けると、器質的原因と、機能的原因の2つに大別されます。 器質的原因は、何らかの病気があって起こるものです。
尿道下裂、シリコンなどによる陰茎異物、パイロニー病・形成性陰茎硬化症(けいせいせいいんけいこうかしょう)があります。
脳卒中(のうそっちゅう)、頭部外傷、脊髄損傷など下半身麻痺が生じた場合。または、骨盤内臓器の手術後に起こることもあります。
陰茎支配血管の狭窄や閉塞のため、陰茎に行く血液量が減少します。
脳下垂体、間脳、副腎、睾丸などのホルモンを分泌する器官の障害です。
精子を作る機能は、30歳〜40歳頃から老化が始まり衰えてきます。ホルモンを作る機能も低下していきます。そのため、勃起能力や射精能力も減少していきます。
糖尿病による勃起障害があります。原因としては、糖尿病性神経障害によるという説、糖尿病にともなう陰茎支配動脈の血管障害によるとする説があります。 しかし、糖尿病になればすべての患者さんがEDになるわけではありません。糖尿病と関連付けて、心因性のEDになることもあります。 慢性透析患者さんにも、性機能が低下することがあります。
心因的にEDが起こる場合があります。新婚EDでは知識に乏しく、性行為に失敗したり、早漏だったりした場合、不安・緊張が次第に増していき、性的欲求が高いにも関わらず、挿入時に萎えて性交ができない場合があります。 情報過多のため、性に関する雑誌や書物などで必要以上に知識を豊富にさせます。とくに女性にとって性的満足ができないのは、男性の技量のなさであると思い込んでいることがあります。このような期待が男性の自信喪失の原因となっていることが多くあります。 自分自身が持って生まれた性格や素質というものもありますが、順風満帆の時には性に関してもうまくいきますが、いったん運命のバランスが崩れストレスが溜まってくる状態が続くと、副交感神経やホルモン分泌に影響してきます。そのため、性欲が起こらなくなることもあります。
麻薬、鎮痛薬、自律神経遮断剤なども長期連用すると性欲の減退、EDになります。アルコールの飲みすぎも勃起中枢を抑制します。 神経症、うつ病、統合失調症、心身症などもEDの原因となることがあります。
陰茎内には、多数の細い血管がスポンジ状に配列している海綿体が、靭帯(じんたい)に似た白い膜に覆われて存在します。 通常時は、海綿体に流入する陰茎動脈と、流出する陰茎静脈の血流量はバランスが取れています。 性的興奮によって陰茎動脈が拡張して大量の血液が海綿体に流入すると、海綿体は拡張します。陰茎静脈は陰茎の白膜と海綿体に挟まれて収縮し、海綿体内からの血液が流出するのを妨げます。この結果、さらに海綿体内に血液が充満して勃起が起こります。
血管のメカニズムが動脈硬化などで損傷を受けるか、血管を支配する脳脊髄神経や末梢神経が障害を受けると、勃起しなくなります。
はじめは時々勃起しなくなるだけですが、重症になると常時勃起しない状態になります。
過去4週間の性的行為での勃起の有無、硬度、挿入可能であったかどうか、維持可能であったかどうかについて問診します。 早朝勃起の有無や頻度、その時の高度も診断に有効です。一般的に早朝勃起が普通にあれば、精神・心因性のEDと考えられます。
新婚EDは、新婚旅行時などで見かけられます。セルフプレジャーは可能で、早朝勃起現象もあります。
セルフプレジャーは可能でも膣内で射精できない膣内射精困難症は、精神・心因性の勃起障害の亜型と考えられます。
二次性徴の出現の有無、陰茎や精巣の大きさや男性ホルモンを含めた血液検査が必要になります。糖尿病などの慢性疾患がないかどうかのチェックも行います。 さらに、飲酒歴、喫煙、うつ病などの有無、降圧薬などの内服歴を調べます。
特殊な検査としては、リジスキャンと呼ばれる睡眠中に勃起現象が起こっているかどうかを検査する方法があります。夜間に勃起しているようならば、心因性のEDが疑われます。 超音波で陰茎の血流を測定することや、陰茎に薬を注入して勃起を誘発する検査もあります。
生まれつきまったく勃起したことがない一次性の勃起障害では、二次性徴を発現させるために男性ホルモンなどの補充療法を行います。
器質性のEDでは、その原因となっている基礎疾患の治療が優先されます。また、EDを起こす可能性のある薬を中止することがすすめられます。 しかし、効果のみられないことも多く、クエン酸シルデナフィル(バイアグラ)が良く使われます。 ただし、バイアグラの投与前に、心疾患などの合併症がないこと、ニトログリセリンなどの硝酸剤を服用していないことを確認する必要があります。
バイアグラ以外の治療法としては、陰茎にプロスタグランジンや塩酸パパベリンの平滑筋弛緩薬(へいかつきんしかんやく)を自己注射する陰茎海綿体自己注射法があります。 このほかにも、降圧式勃起補助具を使う方法、陰茎内に手術的に補助具を挿入する方法があります。
精神療法や行動療法を希望する場合は、専門の泌尿器科または精神科を受診してください。
バイアグラを希望する場合は、内科、あるいは泌尿器科を受診してください。血液検査、心電図などで異常がなければ処方されます。 バイアグラが無効な場合は、泌尿器科に受診することが必要です。特殊な治療なので、事前に治療が可能かどうか問い合わせてください。