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肝性脳症の改善 |
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劇症肝炎の治療法は、原則として、肝性脳症の改善を図り、破壊された肝細胞が再生されるまで血漿交換(けっしょうこうかん)などで人工肝補助を行い、腎不全、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)、感染症、脳浮腫などの合併症の発生を防ぐことです。 |
劇症肝炎の内科的治療法 |
全身管理 |
安静度 |
絶対安静 |
栄養管理 |
原則として絶飲・絶食、中心静脈栄養管理 |
呼吸管理 |
必要に応じて気管内挿管、人工呼吸器装着 |
循環管理 |
心臓・肺・腎臓の機能維持
中心静脈圧測定、スワン・ガンツカテーテル留置、アルブミン、時にドーパミン、ドブタミン持続点滴 |
特殊療法 |
人工肝補助 |
血漿交換、持続血液ろ過透析 |
肝細胞保護 |
プロスタグランジン(E1、E2、I2)、インターフェロン、シクロスポリンA、副腎皮質ステロイド薬、ウリナスタチン |
肝再生促進 |
グルカゴンインスリン、シクロスポリンA |
合併症対策 |
肝性脳症 |
ラクツロース、フルマゼニル |
脳浮腫 |
頭蓋内圧モニタリング、頭部拳上、マニトールあるいはグリセロール |
腎不全 |
血液透析、ドーパミン、ウリナスタチン |
消化管出血 |
ヒスタミンH2受容体拮抗薬 |
血液凝固線溶異常 |
アンチトロンビンV製剤ほかの蛋白分解酵素阻害薬
(メシル散ガベキサート、メシル酸ナガモスタットなど) |
低血糖 |
血糖値モニタリング、ブドウ糖注射 |
感染症 |
血液・尿・喀痰の頻回培養、抗生剤・抗菌薬・抗真菌薬の投与 |
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人工肝補助療法 |
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日本の劇症肝炎の集学的治療の中心となる治療法です。
人工肝補助は、腎不全治療のために多くの医療施設で設備されている血液浄化装置が使用されます。血液浄化療法はきわめて効果的ですが、高額医療でもあり、保険上の厳格な回数制限があります。
肝細胞の広範な壊死、肝機能の低下によって体内に貯まったアンモニアなどの肝性脳症の原因となる中毒性物質の除去、不足した凝固因子(ぎょうこいんし)などの必須物質を補充することを目的としています。 |
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血漿交換法(けっしょうこうかんほう) |
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患者さんの血液を体外に取り出し、血漿成分を血球成分から分離除去し、新たに健康な血漿(新鮮凍結血漿)を加え、体内に戻す治療法です。
血液凝固因子、体液に溶けている蛋白質のアルブミンなどを補充し、凝固異常などを補正することが可能です。血漿交換法だけで、肝性脳症に対する覚醒作用は不十分とされています。
また、血液製剤を大量に使用するため、感染の危険性も理解しておかなくはいけません。 |
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血液透析ろ過療法 |
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短時間、高流量で実施する血液透析ろ過(HDF)と、循環動態の安定化を狙って24時間かけて実施する持続血液透析ろ過(CHDF)が行われます。
意識障害の原因と推定される中分子や低分子の毒素物質も除去することが可能なため、血漿交換と併用して行われます。 |
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抗ウイルス療法 |
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原因ウイルスが特定された場合、抗ウイルス療法も行います。 |
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その他の治療法 |
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原因や症状に応じて、人工肝補助療法のほかにステロイド療法、血液凝固を阻止するアンチトロンビンV製剤と合成蛋白分解酵素阻害薬を用いた抗凝固療法、脳圧を下げるマンニトールという薬剤による脳浮腫対策、肝臓の再生促進対策など、内科的治療を厳重な全身管理下で行いつつ、肝臓の再生を待ちます。
最近では、B型肝炎による劇症肝炎に対して、ラミブジンやエンテカビルが使用できるようになり、注目されています。
肝臓の再生が期待できない場合、肝移植の選択が検討されます。亜急性型劇症肝炎では、多くの場合、再生が期待できず、肝移植でしか救命できないのが現状です。 |