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 急性膵炎
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急性膵炎の概要は?
おもな症状
  上腹部の激しい痛み
背中の痛み
腹膜炎
腸閉塞
消化管出血
ショック
呼吸困難
症状が似ている病気
  胆石症
胆嚢炎
急性胃炎
穿孔性腹膜炎
腸閉塞
腸間膜動脈血栓症
腹部大動脈の解離性動脈瘤
尿管結石
心筋梗塞
肺炎
胸膜炎
起こりやすい合併症
  ショック
呼吸不全
肺炎
腎不全
消化管からの出血
感染
膵嚢胞

急性膵炎ってどんな病気?
膵臓などの臓器の炎症
  イメージ画像 膵臓は胃の後ろにあり、タンパク質分解酵素を始めとして、食べ物を消化・分解するさまざまな酵素を作って、十二指腸に分泌し、食べ物の消化を助けています。
 急性膵炎は、さまざまな原因によって活性化された膵酵素(すいこうそ)によって、自分自身の膵臓が消化されてしまい、膵臓や、そのほかの主要な臓器に炎症と障害を引き起こす病気です。
軽症から重症まで
   一時的な腹痛、吐き気、嘔吐のみの症状で軽快する軽症から、多臓器不全(たぞうきふぜん)で死亡する重症急性膵炎まで、多くのケースがあります。
 年間の発症患者数は約3万5000人です。このうち、重症膵炎の患者さんは約5000人と推定されています。
 発症頻度は男性が女性の約2倍で、男性に多い傾向があります。男性では50歳代、女性では70歳代にピークがみられます。
別名、おなかのやけど
   急性膵炎は別名、「おなかのやけど」とも呼びます。
 やけどは水ぶくれができ、破れると浸出液が出てきていつまでも止まらず、感染や脱水なども起こし、最悪の場合、死に至る危険性もあります。
 これと似たことが、膵臓と、その周辺に起きていると想像するとわかりやすいと思います。
改善傾向にある治療成績
   2003年、急性膵炎の診療ガイドラインが普及して以降、重症急性膵炎の死亡率は低下傾向にあります。
 しかしいまだに、約9%に及ぶ死亡率から、早期の適切な診断と治療が必要な病気です。

急性膵炎の原因は?
アルコール
  イメージ画像 急性膵炎の原因としてもっとも多いのはアルコールで、37%を占めます。次に胆石(たんせき)で24%、原因不明の特発性膵炎が23%と続きます。男性では飲酒が約50%、女性では胆石が約40%を占めます。
 発病のきっかけとしては、ストレス、疲労など、体調がすぐれない状態でのアルコールの飲み過ぎ、脂肪の多い食品の食べ過ぎが関係しているとされています。
 1回の深酒で膵炎が起こるわけではなく、毎日大量の飲酒を10年以上も続けている人に起こります。このような人では、長年の飲酒で膵臓が痛めつけられており、その状態でいつもより多くの飲酒することで発症します。アルコールに脂肪の多い食事が重なると、さらに起こりやすくなります。
 アルコールが原因の急性巣炎では、早い時期にお酒を控えるか、禁酒をしないと、慢性化して治りにくくなります。
胆石症
   胆石性膵炎では、胆石症の発作時に合併して、膵炎が起こります。
 小さな胆石が胆嚢から胆管に出て、十二指腸壁内で胆管と膵管が合流してできた共通の出口に詰まり、膵液の流れが止まってしまいます。こうなると膵液は、膵臓の中にあふれて、膵臓は水ぶくれのような状態になります。
 この時、何かの拍子に膵酵素の中のトリプシンが働き出して、膵臓を消化し始めると、急激に膵炎が起こって広がります。
 胆石症の膵炎は、胆石発作時に起こりやすく、多くの場合は軽症で済みますが、油断していると危険です。発作を繰り返す人は、早めに胆石の手術をした方が良いでしょう。
その他の原因
   ERCPと呼ばれる内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ないしきょうてきぎゃっこうせいすいたんかんぞうえいけんさ)や手術後、特殊な薬剤、血液中の中性脂肪が高い脂質異常症が原因になることもあります。
 その他の原因は、きわめてまれです。
 昔は回虫によるものが多くみられましたが、最近では衛生環境も良くなり、食生活も豊かになったため、ほとんどみられなくなりました。

急性膵炎の症状は?
腹痛
  イメージ画像 病気の重症度によって異なりますが、急性膵炎でもっとも多い症状は、上腹部痛です。
 痛みの場所は、みぞおちから左上腹部です。しばしば、背部にも広がります。
 上腹部の激しい痛みで始まり、しだいに痛みが強くなり、数時間後にピークとなります。
 痛みの程度は、軽い鈍痛から、じっとしていられないほどの激痛まで、さまざまです。激しい時は、痛み止めの注射も、効きにくいことがあります。
突然起こることも
   食事後、特に油分の多い食事をしたあと、アルコールを多く飲んだあとに起こることがあります。
 何の前触れもなく、突然、痛みが起こることもあります。
 胃の調子が悪い感じがして、2日〜3日後に、痛みが激しくなることもあります。
 痛みは、膝を曲げて腹這いになる胸膝位(きょうしつい)をとると、和らぐことがあります。
その他の症状
   腹痛と同時に、吐き気、嘔吐、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)などの症状がみられます。
 この他にも、食欲不振、発熱、軟便、下痢もみられることがあります。便通は便秘傾向になります。まったく症状のない場合もあります。
 微熱が多いですが、38.5℃以上の高熱は、10%〜20%以下です。ときに、軽い黄疸もみられます。
症状の現れ方
   症状は、何日かかけて少しずつ表れることもあれば、突然現れることもあります。
 軽症では、2日〜3日で、痛みがなくなってしまう場合もあります。全体の約60%では、5日以内に痛みが消えます。
 重症化例では、次第に症状が悪化します。ショック症状として意識の低下・意識障害、血圧の低下、脈が速くなる頻脈(ひんみゃく)、チアノーゼ・蒼白、乏尿などがみられます。
痛みのある部位を押すと
   腹部所見としては、疼痛のみられる場所を中心として、押されると痛みが強くなる圧痛、押されるとお腹が硬くなる筋性防御(きんせいぼうぎょ)がみられます。

急性膵炎の診断は?
臨床診断基準
  イメージ画像 急性膵炎で現れる症状は、胃・十二指腸潰瘍胆石症など、他の腹部疾患でも同様の症状がみられることが多くあります。そのため、急性膵炎を見分けることが必要になります。
 現在、急性膵炎の臨床診断基準が作成され、診断に活用されています。
 急性膵炎の診断で重要なのは、腹部症状・所見に加え、血液や尿中の膵酵素の上昇、画像診断での急性膵炎の異常所見がみられることを確認することです。他の病気でないことを確認することも重要です。
 急性膵炎の臨床診断基準 
@ 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
A 血中、または尿中に、膵酵素の上昇がある
B 画像で膵臓に急性膵炎を示す異常所見がある
 上記3項目中、2項目を満たしていること。他の膵臓疾患、および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する
 慢性膵炎の急性発症は、急性膵炎に含める
 膵酵素は、膵特異性の高いp型アミラーゼや血中リパーゼなどを測定することが望ましい
膵酵素の検査
   膵酵素としては、一般的にはアミラーゼ(炭水化物を消化)が有名です。ほとんどの場合、血清アミラーゼが検査されています。
 アミラーゼは膵炎で上昇しても、血液中で高値が続く期間が短いため、症状が出てから数日後に診察を受けると、正常化していることもあるので注意が必要です。
 脂肪を消化するリパーゼ、蛋白質を消化するトリプシンなどが、血液中や尿中に漏れ出てきていないか検査します。
 アミラーゼは、膵炎意外の原因でも上昇することがあるので、膵炎での特異性が高いp型アミラーゼ、血中リパーゼの測定が有効とされています。
画像診断
   画像診断では、一般的に腹部超音波検査(US)が行われます。膵臓の腫れ、膵周囲の液体貯留などの炎症性変化が、特徴的な所見として認められます。
 腹部超音波検査(US)は、消化管にガスが多いと画像が不鮮明になってしまいます。その場合、エックス線検査、CT検査、MRI検査を行います。
 原因となっている胆石、膵炎の重症度を検査するため、腹部エックス線検査、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査などを行います。
重症度判定
   急性膵炎では、重症度によって予後が異なります。
 重症度に基づいて、治療法を選択する必要があるため、診断時に重症度判定を確実に行うことが重要になります。
 重症度の判定は、臨床所見、血液・尿生化学検査、造影CT検査による画像診断により、総合的に行い、軽症か重症かを診断します。

重症急性膵炎の判定基準は?
予後因子
   原則として、発症後48時間以内に判定することとします。以下の各項目を各1点として、合計したものが予後因子の点数となります。
@ BE≦-3mEq、またはショック
A PaO2≦60mmHg(room air) または呼吸不全
B BUN≧40mg/dl(またはCr≧2.0mg/dl) または乏尿
C LDH≧基準値上限の2倍
D 血小板数≦10万/mm3
E 総Ca値≦7.5mg/dl
F CRP≧15mg/dl
G SIRS診断基準における陽性項目数≧3
H 年齢≧70歳
臨床徴候は以下の基準が適応されます。
  ショック:収縮期血圧が80mmHg以下
  呼吸不全:人工呼吸を必要とするもの
  乏尿:輸液後も1日尿量が400ml以下であるもの
SIRS診断基準項目
  体温>38℃、または、体温<36℃
  脈拍>90回/分
  呼吸数>20回/分、または、PaCo2<32mmHg
  白血球数>12000/mm3、または白血球数<4000mm3、または10%超の幼若球出現
造影CT Grade
   原則として、発症後48時間以内に判定することとします。炎症の膵臓外進展度と、膵臓の造影不領域のスコアが、合計1点以下をGrede1、2点ならGrade2、3点以上ならGrade3とします。
 炎症の膵臓外進展度 
前腎傍腔 0点
結腸間膜根部 1点
腎下極以遠 2点
 膵臓の造影不領域 
(便宜的に膵頭部、膵体部、膵尾部の3つの区域に分類)
各区域に限局している場合、または膵の周辺のみの場合 0点
2つの区域にかかる場合 1点
2つの区域全体を占める、またはそれ以上の場合 2点

炎症の膵外進展度 前腎傍腔 結腸間膜根部 腎下極以遠
膵造影不良域
<1/3 CT Grade1 CT Grade1 CT Grade2
1/3〜1/2 CT Grade1 CT Grade2 CT Grade3
1/2< CT Grade2 CT Grade3 CT Grade3
重症度判定
   予後因子が3点以上、または造影CT Grade2以上のものを重症、いずれにも属さないものを軽症とします。

急性膵炎の治療法は?
絶飲絶食と輸液投与
  イメージ画像 治療の基本は、絶飲絶食による膵臓の安静、初期の十分な輸液の投与です。
 食事や飲水は、間接的に膵臓を刺激して、膵酵素の分泌を促し、膵炎を悪化させてしまいます。急性期には、厳密な絶飲絶食が必要です。
 膵炎では炎症のため、大量の水分が失われています。そのため、多量の輸液が必要になります。
薬物療法
   腹痛などの痛みに対しては、鎮痛薬を便宜使用します。
 膵酵素の活性を抑える働きのある、蛋白分解酵素阻害薬も使用されます。
 軽症と中等症の多くは、こうした基本的な治療で軽快します。
重症膵炎の治療法
   重症膵炎では、多くの合併症に対する治療を行わなければなりません。集中治療室(ICU)での全身管理が必要になることも、少なくありません。
 抗生物質の使用や、外科的治療なども行われます。
 血液浄化療法、蛋白分解酵素阻害薬の動脈注射療法など、特殊な治療も検討されます。
胆石性膵炎の治療法
   胆石性膵炎(たんせきせいすいえん)では、内視鏡を用いた胆管結石の除去、管を挿入して溜まった液を吸引する胆管ドレナージが必要になることがあります。
 専門的な施設での診断と治療が必要になります。
仮性嚢胞の治療法
   液体貯留の多い場合、重症膵炎の場合、急性期を過ぎた時期に、仮性嚢胞(かせいのうほう)が形成されます。仮性嚢胞とは、浸出液(しんしゅつえき)などの液体が入った袋状の貯留物が、膵周囲、あるいは腹腔内に認められるものです。
 仮性嚢胞は、そのまま自然に消えることもありますが、大きな物、感染をともなう場合、出血の危険性がある場合は、治療が必要になります。
 治療には、仮性嚢胞内に管を挿入して、内容物を吸引するドレナージがおもに行われます。

急性膵炎かなと思ったら?
初期や軽症では診断が難しい
  イメージ画像 急性膵炎は、日常的にみられる一般的な病気です。
 初期や軽症例では、診断が困難なことが少なくありません。
 胃などの消化管の病気と間違えられたり、他の疾患を急性膵炎と誤診してしまうこともあります。
消化器科へ
   診断が遅れると、重症膵炎では、生命に関わることがあります。上腹部から左側にかけて強い腹痛や背部痛が突然に起こった場合、消化器科を受診するようにしてください。
 重症の場合、高度な専門的な治療が必要になるため、集中治療室のある総合病院への転院も考慮されます。

急性膵炎の日常生活は?
アルコールは控えてください
  イメージ画像 治癒すれば、通常の生活に戻っても問題ありません。しかし、再発を予防するため、アルコールの飲み過ぎ、脂肪分の多い食品の食べ過ぎを避けること、ストレスや疲労を貯めない生活を送ることが重要です。
 普段から飲酒量の多い人は、すぐに元の飲酒量に戻りがちなので、そうならないように注意が必要です。
 飲酒の再開によって、膵炎が再発したり、慢性膵炎へと進展する危険性もあります。
 日本酒なら1日1合以下、ビールなら大瓶1本以下、焼酎は200mlのグラス半分以下にし、適正な飲酒量を守りましょう。バランスの良い食事、腹八分目にとどめることが大切です。
胆石症が原因の場合は再発防止の手術も
   胆石が原因の場合、再発防止のために胆嚢摘出術などの治療を考慮する必要があります。主治医と良く相談するようにしてください。
膵腫瘍・膵ガン
   急性膵炎の原因には、膵臓の腫瘍、膵ガンによって起こる場合もあります。
 アルコール、胆石など、はっきりした原因がなく、突然に発症した場合。特に中年以降の患者さんに対しては、腫瘍の存在を念頭に置き、急性膵炎が治った後に腫瘍の検査を行う必要があります。
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